三坂仁義の出入りするという部屋。
そこは裏通りにあるさびれた工場跡の中に、ひっそりと扉を閉ざしている場所だった。
ギィ――
工場跡にある廃倉庫。
その扉を開けると飛び込んでくる全き白、次に感じ襲いくるのは既視感。
そこにあるのはかつての白い家、格子窓の内側の光景。
自分たちが受けさせられていたあの実験室が研究所が、再現されたような光景。
それが、眼前に広がっていた。
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GM |
そこでひとり、三坂仁義が君たちを待っています。
椅子に座る彼は君たちの姿を認めると「結局君たちも、ここに来たのか」と、悠然と口を開きます。 |
三坂 |
「君たちを招待した覚えはないんだがなぁ。一体この場所に、何の用だね?」 |
翔 |
かったるそうな声、耳をほじりながら出迎えてきた相手を見下ろす。
「ああご丁寧に手厚い歓迎をありがとうございます、三坂さん」 |
三坂 |
「“先生”と呼んでくれたまえ、昔からそう呼んでくれただろう?」 |
翔 |
「えーっと、どう呼ぼうが関係ないと思いませんか、“三坂さん”。
別に俺は、あなたを尊敬してないわけじゃないですよ」
顔に浮かぶのは軽い笑み、おちょくった口調と声で返答する。 |
三坂 |
「仕方ない、時の流れというものは全く残酷だ。
あれだけ『先生』『先生』と、慕ってくれたものをなぁ……」 |
翔 |
「そんなこたァ忘れましたよ。まあ――」
おちょくるような笑みが消え、ひと呼吸の間。
「――ユキを連れに来ました」 |
三坂 |
「夕姫君を? 君が、夕姫君を何故?
彼女は自分で望んでここに来たんだ、君が連れ帰るというのは何か違うような気がするね」 |
翔 |
「そいつァユキに言って来るだけッスよ、俺もイロイロ忘れてましたんでね」
そういうと歩を進める。三坂を無視して行こうとする。 |
三坂 |
すれ違い間際「――思い出したのかね、翔君」 |
翔 |
軽く口の端を上げて笑うだけ、変には返さない。 |
GM |
で、残りの2人はどうするのですかね。 |
ジーク |
「悪いが彼と同意見だ、私は夕姫を連れ戻しに来た。
――というわけで、夕姫はどこにいる?」 |
紡 |
「これ以上計画の犠牲者を増やすつもりはない、ぼくたちは夕姫を取り戻す。
そして、朝海も助けるんだ」 |
三坂 |
「君たちは何か勘違いをしているような気がするなあ?
夕姫君の取っている行動は至極まっとうな行動だ、君たちの力ではファタ・モルガーナを撃破することはできない。だがそれを、彼女は可能にするためにここに居る。
何故、君たちは彼女の邪魔するんだい?」 |
翔 |
「俺はそもそもファタ・モルガーナを撃破する為には来ていない」 |
三坂 |
「なるほど、それは面白い」 |
翔 |
「なんでわざわざ殺さなきゃいけないんスか、会ってアイツとも話しますよ。
そりゃ、俺がやられそうになるンだったら、殺すことも考えやしますけどね」 |
三坂 |
「なるほど、君の話は筋が通っているね。
――そこの2人はどうなんだい?」 |
ジーク |
「私は元々ファタ・モルガーナを殺す気はないから、だから――そんな力は、要らない」 |
三坂 |
「なるほど」 |
紡 |
「“ファタ・モルガーナ”? あなたは何を言っている?
ぼくたちは、朝海を助けるために来たんだ。その為に夕姫の力が必要なんだ。
ぼくたちが、夕姫と一緒に朝海と話すのを邪魔しないでくれるかい?」 |
三坂 |
「邪魔はしないさ。
僕が君たちの邪魔をしたことを、1回でもあったかね?」 |
翔 |
「十分してるけどな」と少し嫌味混じりに小さくポツリ。
俺は前に、コントローラーで電流流されて蹲らされているからな。 |
GM |
掴みかかろうとなんてされれば三坂仁義も自衛はしますよ。
それだけですよ、それは――ね。 |
三坂 |
「私は君たちの望みをかなえてあげてるつもりなんだがなあ?」 |
紡 |
「誰もそんな事は望んでないよ」 |
三坂 |
「そうかね? まあ良いさ、行きたいなら行くと良い。
彼女は納得しないと思うがねぇ」 |
GM |
そういうと彼は座ったまま不敵に笑うのみ。君たちの行く手を止めることもありません。 |
3人 |
夕姫のところに向かいます。 |
翔 |
ああ、でも向かう最中にひとことだけ三坂に対してに言い放つ。
「納得しないかどうかなんて、やってみなきゃ分からねえだろ」 |
GM |
OK。
ではシーンは続いたままで、場面は変えます。 |
夕姫 |
(頭を抱えている)……この3人を説得できる気がしない……。 |
GM |
夕姫がいる場所に場面を移すのです、が……描写はどうしますか? 夕姫がやりますか? |
夕姫 |
……GM側に任せて宜しいでしょうか……。 |
GM |
了解しました。 |
ラボの一角、とある扉を開けた先。
その部屋にあるのは大仰な幾つもの精密機械、響き渡るのは電子音。
仄暗い闇が支配する部屋の中、浮かび上がるはひときわ大きなシリンダー。
色とりどりのたくさんの長いコードが繋げられた、その中心に夕姫の姿。
ガラスの柩のその先で、まるで静かに眠るように佇む彼女。
しかしその中では、次第に、そして確実に一歩一歩、その身を化け物へと変えられていく……
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ジーク |
部屋に入って開口一番「夕姫、帰るよ」 |
夕姫 |
声を掛けられれば目を開き、部屋に入ってきた3人を認識します。
「リート、何しに来たのですか?」 |
翔 |
部屋に入った瞬間つかつかと、2人が会話しているその横で機材をいじって解除をする。
――って出来ますかね? |
GM |
出来ます、というかこの場面好きにしていいですよ。
ドンッ――……。
空気を震わす大きな音が部屋に響いて電源が落ち、機材が動きを停止する。 |
夕姫 |
「……っ?!?!」 |
ジーク |
「何をしてる」 |
夕姫 |
「貴方、どういうつもりですか?!」 |
翔 |
まったく答えず一切止まらず、今度はシリンダーを開けて夕姫を引っ張り出す。
「どういうつもりって? 見りゃ判んだろうが」 |
夕姫 |
「私とあなたは敵だった筈です」 |
翔 |
「俺は敵を認識してないなぁ」 |
GM |
なんてわざとらしい言い方だろうか。 |
翔 |
むしろ軽く笑ってますよ。
そういいながらもブチブチと、夕姫に繋がっていたコードを引き抜いていく。 |
夕姫 |
「どうしてそう強引なんですか?!」 |
翔 |
「あぁ? 俺は俺だからじゃないかなあ?」 |
夕姫 |
……~っ。
「あなたは、ファルスハーツ、なんですよ?」 |
翔 |
「ああ。俺はファルスハーツだからこういうことをしてンだよ」 |
夕姫 |
「私はUGNだからファタ・モルガーナを止めないといけないんですぅ」 |
ジーク |
あ……夕姫がだだっ子に。 |
翔 |
「聞いてる聞いてる、そこの白いのにアンタらのこたぁ聞いてンだよ。
――ファタ・モルガーナを止めるんだろ、そこまでは俺も一緒だ」 |
夕姫 |
「どうしてそう邪魔ばっかりするんですか?!」 |
翔 |
その瞬間真顔になり、声のトーンがすっと落ちる。
「アンタの認識が間違ってるだけだろうが」 |
夕姫 |
「私の認識?
……ってなんですか」 |
翔 |
小さく息つく程度の沈黙の後、ジークに向かう。
「おい白いの、コイツにどれだけ話してるんだ?」 |
ジーク |
「ん……?」 |
翔 |
「お前らUGNから見て、ファタ・モルガーナはどういう風に聞いてるンだ?」 |
ジーク |
「ファタ・モルガーナか?
私と夕姫は支部長から、FHが放った危険なジャームであると聞いている」 |
翔 |
「こっちぁFHからは、アンタらUGNの施設から逃げてきたジャームって聞いてんだよ。
でもって紡が割った情報によりゃ、ファタ・モルガーナも俺らもUGNとFHの共同研究から生まれた実験体だとよ。
俺も、アンタも、紡もジークも時也も、朝海――ファタ・モルガーナもいわゆる仲間だ、全員な。
ってことで――」
そこまで言うと夕姫を人浚いのように抱えあげる。 |
ジーク |
タイム、抱えあげようとした翔の腕をつかむ。
「悪いが私のパートナーだ」
暗にその行動が示すのは『私が夕姫の事を連れて行く』 |
翔 |
それなら頼んだ、軽く離れる。 |
夕姫 |
お、おかしい……何この私の人気っぷり。
そもそも最初の噛み合わなさっぷりツンっぷり、皆どこに行ったのですか?! |
翔 |
あ? 俺ぁ利害競合せず共闘できるんだったら共闘するぞ?
UGN自体は嫌いだがそれとこれとは話が違ぇ。 |
ジーク |
私と翔とは敵になりえない、日常を壊す実行者は敵だがFH自体が敵な訳ではないのだから。
そもそも3つ前のシーンで私たち、“共闘します”といったじゃないか。 |
GM |
2人に至っては、奇妙な連帯感まで芽生えちゃったしねえ。 |
ジーク |
あのね夕姫。
よ~く私と彼の設定を見ると判るのだけど、2人とも似た者同士なんだ。 |
翔 |
表面的にゃ正反対もイイトコだがな、根っこは一緒っても違わねえ。 |
夕姫 |
……そ、そうなのですか……ぅぁ……。 |
GM |
ところで紡君もこの場にはいるのですから、遠慮せず会話に入っていても大丈夫ですよ? |
紡 |
あ……いやそうなのですが、ちょっと3人の様子を見ています。 |
夕姫 |
ちょっと勝手にフラッシュバックの映像を造ります、3人ともフラッシュバックが起きてください。 |
――フラッシュバック。
研究施設内、青空教室。
抜けるような青空の中、子供たちは笑い、また真面目に机に向かう。
壇上には夕姫が立ち、算数の公式等を描き、皆へと丁寧に指導をしている。
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夕姫 |
教壇に登り算数を教える、その時と全く同じ口調で話します。
「良いですか? 朝海はもう、帰ってこないのですよ?
あの子の意識は残っていないのです、ジャームになっちゃったのです。判りますか?」 |
翔 |
他人に諭されてはいそうですかって聞くようなら、俺ぁ不良だなんて言われてねえんだよ。
「ハッ、じゃなんでファルスハーツにゃジャームがいっぱい居ると思ってんだ?
ジャームにゃ意識がねえなんてUGNのタワゴトを、アンタはマジで信じてンのかよ」 |
夕姫 |
「ですが昔の朝海ではありません。
朝海はリートと一緒にいる為ならば、どんなことでもするでしょう」 |
翔 |
「じゃあジークと一緒にいればイイじゃねえかよ、それだけの話だ」 |
夕姫 |
「月見夕菜さんの事は覚えてますか?」 |
翔 |
「覚えてる」 |
夕姫 |
「何故、彼女が襲われたと思っていますか?」 |
翔 |
「……?」
目を細めて訝しげ、“判らない”という表情を浮かべる。
四つ辻で襲われたあの時点じゃ月見は俺と紡といただけで、ジークとは繋がりはしないんだよな。 |
夕姫 |
「リートの友達だからですよ」 |
翔 |
「あーあーあー……そういうことか」 |
夕姫 |
いや……これはメタ発言なのですけど、ね。 |
メタ的な話をしてしまいますと、オープニング5で夕菜はジークとぶつかりましたよね。
ジークと夕菜の周囲は第三者から見ても一種異様な空気となり、朝海はその場面をじっと見ていた。
これが原因。
いわゆるヤキモチ、嫉妬です。
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夕姫 |
「朝海が生きている限り同じ事は何度も起こりえます。私は姉として彼女を止める義務があります。
姉としてと、いうか……私はあの子に贖う義務があるんです……っ」 |
ジーク |
「止めるのだったらそんな大仰な力はいらないだろ? それは殺す為のものだ」 |
夕姫 |
「他に止める方法があるのですか?
今までだってこうやって、力を以てジャームを殺して止めて来たではないですか」 |
紡 |
「語りかけよう」 |
夕姫 |
「えっ?」 |
紡 |
「朝海と話をしようよ。あれから話をしていないのでしょ?」 |
夕姫 |
「話をしたって通じなければ、辛く苦しむだけになりますよ」 |
翔 |
「そんなんやってみなきゃ分からねえだろ?
アンタは1人で壁を造ってその中でぼけっとしてるけどさ、単にそこから動こうとしなかっただけじゃねえか」 |
夕姫 |
「かける君はいつも考えがないんです!!」 |
翔 |
「あ、何かいったか?」 |
夕姫 |
こっ……!
「やってみたってダメだったならばしょうがないじゃないですか!!」 |
翔 |
「じゃあやってみりゃあイイだろうが。俺は考えナシだって? 結・構・だ。
そんなトコロで動けなくなる位ならなぁ、俺ぁ考えナシで結構だよ」 |
夕姫 |
「~っ!
むかしっから思ってたんですけど、私、この人、苦手です!!!」 |
翔 |
ケケケケケ。
叫ぶ夕姫の様子をケラケラ笑っておこうか。 |
夕姫 |
苦手と言いつつかける君をSロイス。
さらに感情をネガティブの“嫌悪”からポシティブの“好奇心”へと切り替えます。 |
紡 |
あ、ずっと翔への感情がネガティブだったのがついにポシティブに……。 |
夕姫 |
……なんで私、かける君へのロイスをポシティブ感情を“好奇心”で取ったんだろう。
なんで“純愛”じゃないんだろう……。 |
ジーク |
今までずっとネガティブの“嫌悪”だったんだ、ポシティブの感情は彼にはなかった。
だからポシティブは決めてなかったことにすれば良いのじゃないか?
きっとあのGMなら相応のロールをするならば、感情変化を認めてくれるよ。 |
夕姫 |
いえ今の時点では“好奇心”で良いです。
そもそも好奇心を持てる対象なんてかける君しかいません、他は好意といった類ですよ。
ああもううっとうしいうっとうしい……うっとうしいのだけれど、何だろうこのうっとうしさ。
なんて温かいうっとうしさ。 |
一同 |
……。 |
夕姫 |
……。
言わせないでくださいよこんな恥ずかしいこと。 |
ジーク |
言っているの夕姫自身だから、特に私たち言わせてないから。 |
夕姫 |
くぅ~……ッ。 |
紡 |
はははっ。
今夕姫のロイス感情が切り替わった様子を見て、ぼくも翔に対するロイスをネガティブの“疎外感”からポシティブの“幸福感”へと切り替えるね。
良かった、みんな仲良くしてる。昔みたいな仲の良さが戻った……っ。 |
夕姫 |
どっと疲れたような、お手上げの様子。
「わ、わかりました……もう皆さんの好きにしてください……」
うなだれてしまいます。 |
翔 |
「じゃあ好きなようにさせてもらう。
おい、連れてけるよな」 |
ジーク |
「ああ、連れて行くよ。
『好きなように』、夕姫、それはいつものことだろう?」 |
夕姫 |
「……~っ」 |
紡 |
「じゃあ、朝海のところに行こうか」
そういうと周りを見渡します |
GM |
周りを見渡した瞬間、入り口に三坂仁義が立っているのが見えますね。 |
三坂 |
「彼女に語りかけても、何も帰ってきはしないよ」 |
夕姫 |
「先生」
弱弱しい声ながら顔を上げ、三坂さんの方に向かい目を合わせます。
「短い間でしたけれど、ありがとうございました。
――あの装置に繋がれて、判ったことがあります」 |
三坂 |
「何かね?」 |
夕姫 |
「きっと、先生の驚くものが見せられると思います」 |
三坂 |
見下ろし悠然とした様子のまま、にやりと笑みに口元が歪む。
「それは面白い話だね。
では、楽しみにさせてもらうよ」 |
夕姫 |
「失敗作の私たちのやりかた、見ていて下さい。
いままで、ありがとうございました」
そういうとぺこり、頭を下げます。 |
GM |
三坂仁義は不敵に笑うだけ、4人の様子を見ていますよ。 |
夕姫 |
そして3人には「ごめんなさい」と、力なく微笑みます。
私の所為で迷惑をかけてしまいましたので、謝罪の言葉を。
“これから死ぬ”というフラグではないですから、安心してください。 |
ジーク |
「いつも言っているけれど、自分で自分を追い詰めるのは良くないと思うよ」 |
翔 |
全くだな……ってあ、そうだ忘れてたな。
携帯にSDカードを挿入して画面に廃棄資料‐№.246の情報を表示。
その状態で夕姫に携帯を投げ渡す。 |
夕姫 |
「え? あ、ありがとう」
投げ渡された携帯を受け取ると、いそいそとしまいだします。 |
翔 |
「おいおいおいおい?! ちょっと待てしまうな、見ろ、画面を見ろ!
割れてる情報画面に出して渡したってのに、それも見ずにしまうなよ?! 」 |
夕姫 |
「あ……そういうことですか」
ちょっと残念そうに呟いてから、改めて画面を見ます。 |
紡 |
何だか微笑ましいなあ……。 |
廃棄資料‐No.246は、幾度か出てきた この資料。
ミドルフェイズ・シーン2で、青年(時也)が落していったデータカード。
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紡 |
さて、夕姫が端末の情報を見終わって落ち着いたころに改めて。
「別に、謝られるようなことしてないでしょ?」とにこっと彼女に笑い掛けます。 |
夕姫 |
「それでも……そういう気持ちだったから」 |
翔 |
その瞬間ユキの頭をバン、と平手で叩く。
「だったら“ごめんなさい”じゃなくて“ありがとう”でイイんじゃねえの?」 |
紡 |
ウンウン。 |
夕姫 |
「……」
頭抱えて蹲ります……。 |
ジーク |
夕姫、身体は私が支えているよ。だから蹲らないで。 |
夕姫 |
「……」
ではリートに身体を支えられた状態で、両手で頭を抱えています。
そしてシーンの切り際に「……ありがとう」と。 |