ミドルフェイズ/Middle phase section 4

Interlude
 〜幕間〜
 ガンバレPC1、相棒いなくなったぞ。
ジーク  な、なんか相棒多いよね私のキャラクター。
 でもほんっと、この状況はどうしよう……。
 ほっとくと手伝いもしないし俺はさっくりこの場を去るぞ。
ジーク  それはOK、私も止めることはない。
 ないのだ、けど、ね……やることは決まってるといえば決まっているのだが、うーん……。
夕姫  流石にこのままジャームになって帰ってくる、なんてことはないですよ。
 ないですけれど普通に演技したらこうなりますよ、エグイエグイエグイ……。
またもや幕間の雑談です。
GM  ところでジークにも限りませんが、どんどん好きな過去や思い出をねつ造して構いませんよ。
 どんどん演出してくださいね。
 その余裕があればガンバります。
 ところでちっと聞きてェンだが、俺はジークにとって敵なのか?
ジーク  翔は敵になりえない。
 それこそ惨殺するような現場でも見なければ、私の敵にはなりえないよ。
 だろうな。
 こっちはこっちでジャームを殺そうとすると敵対の可能性がある、なんだよな。
ジーク  余談ながらパブリックエネミーを見て思ったのだが、私はUGNのどれよりもストレンジャーズに考え方は近いのだな。
 全くだよ、なんでクソUGNなんざやってんだか。
ジーク  だから私には、護りたい日常というものがあるから。
 それはFHの俺にはそれがないって言ってるぽく聞こえるんだが……?
ジーク  他意はないよ。
 わいわい、がやがや。
 頭を抱えてため息をつく夕姫のプレイヤーの手には、ビールの大ジョッキとあの資料
夕姫  はあ……ところでとうとう過去を思い出してしまいました。
 PCが過去を思い出したということであの資料をとうとう見させてもらいましたが、何ですかあれ。
 見た瞬間吹きましたよ? 【ヴァイスリッター】ってどういうことなのですか、GM?
 ヴァイスリッターはドイツ語で“白騎士”って言う意味だね。
 ちょうど同じような2つ名を持つ錬金術師が、夕姫の身近にも居たよね。
夕姫  ああ、なるほど。
 その次のナンバーの【コンチェルト】は英語で直訳すっと“協奏曲”だな。
 確かどっかに直訳すっと“不協和音”つー2つ名の奴がいた気がしたな、なあ紡?
 そうだね、どっかにいたね。
夕姫  【ロストエデン】は“喪われた楽園”、【ニライカナイ】は神界にて異界の名ですよね。
 【カーディナル】は確か“枢機卿”という意味ですが、あれ、ではこれは一体……?
GM  【カーディナル】は直訳すると、そういう意味もあります。
 他にも“深紅色”という意味もあり、またキールの赤ワインVer、赤ワインとカシスリキュールで造ったカクテルの名前でもあります。
 枢機卿の赤いケープに見立てたのが名の由来の、キール・カーディナルっつーのがあるな。
ジーク  ワインをシャンパンに変えたら今度はキール・ロワイヤルになったりするのだったかな、翔。
夕姫  ああ、なるほど……。
 あの資料の意味は、そういうことですか。
Scene 13
さて。
GM  イベントで翔&紡君を飛ばしてしまいましたので、2人に一度戻りましょう。
 どちらから先に、シーンを演じますか?
 あー、俺はさっきのシーン出てっからな。紡から先イってこい。
 あ、じゃあシーン貰うね。
 GM、ぼくは時也に会いたいと思っているのだけど可能ですか?
GM  可能です。
 (ころころ)――8上がって侵蝕率は84。
 そっちもイイ感じにガンガン上がってンな。
夕姫  83です。
ジーク  77。
 ……。
 俺、57。っかしいな、けっこう出てんだがなシーン。
GM  (翔の侵蝕率の低さは、先程のミドル戦闘に参戦せずに傍観していたのが原因でしょうね)

Scene is start...

 H市、某所。
 紡はあの邂逅のあと、自分のしおりを探してH市をさまよい歩いている。
 ひとけもまばらなある場所で、ひとりの青年の肩にぶつかった。
 ぶつかってから、その人物にぼくは誰かやっと気付く。
「あれ? 時也も来ていたんだ」
GM  当たった後、通り過ぎようとしていた時也。
 ですが声を聞いて「――紡か」と、足を止める。
時也 「生きていたのか」
「生きていた? どういうことだい?」
時也 「【コンチェルト】は情報が欠けていて、覚醒しなかった筈だ」
「何の事を言っているんだい?」
 その瞬間――ぱちん。頭の中で何かのピースがはまって、何かが思い起こされていく。
――ぱちん。

 暗い部屋、電子機器、せわしなく動くのは白衣の大人。
 仄かに浮かび上がるのは試験管、鳴り響くのは聞きなれない電子音。
 たくさんのチューブ、いくつものモニター、計器に書類、薬に実験器具に――子供たち。
 ここはいずこか――研究室。

 試験管の中で浮かぶぼく。
 だがその身体はぽつぽつと、大小さまざまに欠けてしまっている。

「情報が足りない、欠けたところが多すぎたんだ」
「これでは【コンチェルト】は起動しないな」
「良いサンプルだったのですけれどね」

 試験管のその向こうで、白衣に身を包んだ研究者達が口々に言っている。
 自分勝手なことを言っている。

「仕方がないから破棄だ」


――ぱちん。

 廃棄所。
 失敗作と断じられた実験体の子どもたち。
 あるいは死に、あるいは発狂して打ち捨てられ、あるいは意識はあるものの生きたまま廃棄された、たくさんのたくさんの仲間たち。
 そんな仲間たちの上に重なるようにうち捨てられ、放置されているぼく。

 放置され続けてどのくらいだっただろう?
 ふと実験体の魂が、想いが、声がぼくに聞こえる――

『助かりたい』
『ここを出たいよ』
『まだわたしたちはここにいる。忘れないで、お願い』

『生きたいよ』

 さまざまな想いが、願いが、レネゲイドを介してぼくに集まってくる――

――ぱちん。

 気がつくと、ぼくはひとりぽつんとH市の郊外の森に立っていた。
 孤児院・四十九院の傍の森に、ぼくは立っていた――
「――そうだ。
 ぼくは生きていたんだ。みんなの想いを、糧にして……」
GM  時也は一瞬ぽかんとした表情を浮かべます。
 しばらくあっけにとられているのですが、少しの間をおくとほっとしたような顔を浮かべます。
時也 「そっか。
 まあ、よくわからないけれど、お前が生きていて俺はうれしいよ」
「時也は朝海と一緒に連れていかれてから、どうしていたんだい?」
ジーク  おや?
 それはさっきと前シーンの描写を鑑みると……。
 うん。
 ぼくが知るはずのないことを口にしてるね。
時也  ほんの少し自嘲めかした笑みを浮かべる。
「俺は、さ。けっこうさ。早めに見切りをつけられたんだ。だから、まだマシだった」
 打ち解けた仲間に話すような明るい様相だったのが、だんだんと暗く、ゆっくりと、口ごもっていく。
「俺は、まだマシだった。だけど、あいつは――」
GM  と、言葉はフェードアウトしていき最後には口を閉ざしてしまいます。
 ですが時也が考えていることが、想いが、紡君へと流れ込んできます。
 流れ込んでくるのは数々の場面、そして歯がみする悔しい想い。 
 ひとの口からは言えないような、倫理的に人の道に反するあまたの実験。
 それが朝海には、何年もずっと行われ続けていた。

 自分はずっとそばにいたのに、目の前にいたのに何一つ彼女にしてやれることが出来なかった。
 その事実が場面が、悔しさとともに流れ込んで来る――。
「――……。
 これで、朝海は壊れてしまったのかい?」
 時也が口にしていない、けれどぼくへと伝わってきた想いと考え。
 それを受け、確信をした目で、時也にそう問いかける。
時也 「お前は何を言っているんだ?」
「朝海はひとりで、どれだけ耐えてきたんだい?」
時也 「そうか……紡……お前、判るんだな。
 俺の、俺たちの考えていることが……」
 こくり、首を縦に振ります。
時也 「朝海は……朝海は、きっとさみしかったんだ。
 さみしかったから、いつかあいつと会う日を夢見て、笑ってた。
 早く実験が終われば、あいつに会えると信じて……それで……あんなことに――……」
 歯切れの悪い言葉。自然、視線は地へと向かい、力無くうなだれていく。
ジーク  なんだか心にずしりと来るのは気のせいだろうか。
夕姫  私もです。
 おかしい、紡君のシーンなのに、なぜか心がものすごく痛い……。
「どうやったら朝海を救える?」
GM  その言葉を聞くと、時也はうなだれていた視線を起す。
「救う方法なんて、あると思っているのか?」
時也 「あるとすれば、彼女を眠らせてやること位だけだ。
 たったそれだけのことも俺には出来ない、俺には力が無さすぎる。
 なんで、なんで俺じゃないんだ。
 俺が朝海の居場所になってやれたのならば、こんなことにはならなかったのにっ……」
 う……。
 これは、なんにも掛ける言葉がない……。
時也 「――ジャームって、なんなんだろうな。
 ジャームってさ、何か悪いことをしたからジャームになるのか?
 朝海が何か、わるいことをしたっていうのか? なあ、いったい何が間違っているんだ?」
「間違っているのだとしたら、あの実験が間違ってたんだよ」
GM 「そんなことは判ってる!」
 時也はものすごい感情的になり、紡君に喰ってかかります。
時也 「わかってる、わかってるんだよ。
 ……わかっているのに、俺にはどうすることも出来ない……くそっ!」
 がん!
 悲痛な思いをぶつけるよう、思いきり木を殴りつける。
「じゃあ、ぼくたちでとめよう。
 ジークも、夕姫も、翔も――それだけじゃない。
 潤一だって、蒼だって、裕介だって、みんなみんなここにいる!」
 ぐっと自分の胸を指差します。
「この気持ちで、この想いで、朝海をとめるんだ。時也も力になってくれ。何かできるはずだ」
時也 「ありがとう紡。
 ――悪ぃな。俺はもう一回、あいつと話してみるよ。心が、弱くなっていたみたいだ。
 ジャームだからって、話が通じないなんてワケ、ないモンな」
 そういうと紡に軽く手を振り、歩いていきます。
「ぼくはウェイスェンフェルト計画について調べてみるよ、何かあるはずだ」
GM  時也はその言葉にこくりと頷き、この場を去っていきます。
 シーンを閉じましょうか。

...Scene is end.

GM  シーンは閉じましたが情報は出ます、情報判定をしてみてください。
 ただしどういう手段で・何から情報を収集するかの宣言はお願いします。
 うーんと、何かいい情報項目……いやいいや、[情報:UGN]で行きます。
 マイナーアクション:≪オリジン:レジェンド≫
 メジャーアクション:≪無形の影≫、更に[要人への貸し]を併用します。
 ……。
 いったい、ダイス幾つに固定値いくつなんだ……それ。
 ≪無形の影≫は判定を[精神]で行えるようになるエフェクト。
 ぼくの精神は7、侵蝕率補正は2、[要人への貸し]で3。
 固定値は≪オリジン:レジェンド≫による10と、そもそも持ってる技能である[情報:UGN:1]で――全部で12D+11、かな?
GM  ダイスを振りたければ振ってください。
夕姫  あ、投げた。
GM  せっかくのリソースだからダイスを振っても良いとは思います。
 思いますがそこまでやられて情報が、出ないわけがない!
 ごめんなさーい。
 (ころころ)――20、かな?
◆ウェイスェンフェルト計画(ByUGN)
 過去にH市にて行われていた大規模な実験プロジェクトの1つ。
 ドイツの研究者・ウェイスェンフェルト博士の学説に基に設計されたUGNとFHの共同プロジェクト。
 十数年前、まだレネゲイドの研究がほとんど進んでなかったころに計画されたものですが、計画の最終段階において行われたとある実験において致命的な欠陥が見つかったため、プロジェクト自体は凍結・破棄されました。

 プロジェクトの総責任者は、当時よりUGN支部長を務めていた“庭園の主”阿東頼子。
 副責任者は当時阿東の夫であった、H市にセルを持つFHセルリーダー“首つりジャック”塩見徹朗。
 研究の主だった指揮を取っていたのは、研究主任・三坂仁義。
 ……。
 夫だったのか、アイツ。
夕姫  やっぱり、そこにまず反応しますよね……。
ジーク  え、て、あ、ちょっと待てちょっと待って?
 今、私の苗字が出てこなかったか?
夕姫  いまさら何を驚いているのですか、この程度で驚かないでください。
 この位で驚いてたら心なんて持ちませんよ?
GM  ふふふ。
 まあこれは調べなくても進む情報ですよ、これは――ね。
Scene 14
GM  さあ、さっきの情報が開示された後にシーンをやりたい人?
PC’s  (しーん)
 ……あれ、だれも居ない。
 あるっちゃあるンだけどな。
 あるンだけど白いのと絡むか紡と絡むかで悩んでる。
夕姫  私もあるにはあるのですが、今の状態だと先生と話すシーンにしかなりえません。
 しかし失敗しました、もう本当にやりたいシーンをやるのは手遅れです。
 どう考えても、朝海とのシーンをもっと作っておくべきでした。
 ……まあ、アンタはそうだわな……。
GM  ちなみにファタ・モルガーナに会いに行くか朝海に会いに行くかで展開は変わりました。
 は、ははは……。
 ところで翔の方は、どんなシーンを想定してるの?
 紡と絡む場合は未想定。
 白いのと絡む場合はそこの女が去った後の場面の続きだな。
ジーク  つまり“白いの”ていうのは私のことか。
 ならばさっきの場面の続きをやろうか?
 あー、ンじゃヤるか。
 幕間じゃ去るとか言ってたが、実際にゃ捕まえてちっと話したいことがある。
 よっとっ――侵蝕値:10、流石にイったな。

Scene is start...

 ファタ・モルガーナが暴れ、白に侵蝕されたUGNの支部の建物。
 現れた研究者と共に去った夕姫。
 後に残されているのは“白騎士”ジークリート・ウェイスェンフェルト。
 その場に佇んでいるジークに話しかける。
「おいそこの。白い奴」
ジーク 「……。
 なんだ?」
「お前、これからどうするんだ?
 あの女――ファタ・モルガーナを殺しに行くつもりか?」
ジーク 「……だとしたら?」
「俺はしょーじきアイツを殺す気はねえ、だがとっ捕まえなきゃいけねえ。
 ぶっちゃけた話……そうだな、さっき女も連れて行かれたよな、お前これからどうするんだ?
 もし手を組めそうならば俺は組みたい。ひとりでヤれるた思ってないからな」
ジーク 「そうだね……。
 私としては、ファタ・モルガーナを止めにいく。後は、夕姫も助けに行かないと」
「全部ひとりでデキるのか?」
ジーク 「順番にやっていけば、ね。
 まずは夕姫を助けにいく。それからファタ・モルガーナを止めに行く」
「助ける、ねえ……」
 眉をひそめてから少し考え、言葉を選んでから再度口を開く。
「あのクソジジィの言っていることがマジだとしたら、俺もアンタも実験体だ。
 俺がさっき、掴みかかって止められたのは見てたよな?」
ジーク 「実験体だから?」
「『止め切れるのか』って聞いてンだよ」
ジーク 「『止め切れるのかどうか』……ってああ……。
 仮にダメだと言われたのならば、君は何もしないのか?」
「まさか。
 だから協力しようと言っている。俺は『1人で動く気か?』ってアンタに聞いている、それだけだ。
 ――っかー、俺も支離滅裂だ」
 最後の方では頭を抱え、苦々しそうに言い捨てる。
夕姫  一応、混乱はしてるの、ですね。
 “首つりジャック”の様子とデータカードの情報からうすうす何となく気づいちゃいたものの、眼前に突きつけられてあまつさえ無力化させられりゃーな。
ジーク 「ああ……そうか。
 『夕姫を助けるところから協力してくれ』とは言いにくいが、ファタ・モルガーナを止めることには私も協力して欲しい」
「俺はファタ・モルガーナを出来れば連れて帰りたい、殺そうた始めっから思っちゃいない。
 だからアンタらが止めるっつーのが殺そうとするって方法でなければ、あの女を助けることにも協力をする」
ジーク 「その考えはファルスハーツだから?」
「俺だからだ」
ジーク 「そっか」
 短い返答、その後に再度続けていく。
「君が彼女を連れて帰るのは構わない。だが、私はこの世界が好きなんだ。
 それをもし壊そうとするのならば、その時また敵対することになるのだろうね」 
「まあそれはそれだ。それは関係ねぇ」
ジーク 「そうだな、まずは前のことだ。
 ――分かった」
「あのジジィの居場所ならもう割れてる」
 かくかくしかじか、シーン8で割った三坂仁義の居場所を簡単に説明する。
ジーク 「そうか、感謝する」
 つーことで軽く説明もしたことだし、俺はそこへと先導するよう歩を進めるか。
ジーク  え?
 ……なんだよ。
ジーク  私は君との約束は、ファタ・モルガーナを止めるところだけだと考えている。
 言い換えれば夕姫を助けるところまでは契約外だと認識している、こちらから頼めたことではないと思っているからね。
 なので君のその行動は、目を丸くして驚きをみせる。
 てめェ、俺のセリフいったいどんだけマトモに聞いてたんだよ……。
 驚いてそこでぼさっと突っ立ってると「順番にヤんだろ、さっさと行くぞ!」、叫ぶ。
ジーク 「そ、そうだな。
 ファルスハーツと共闘することは殆どなかったが、こういうのも悪くない。
 君が、私の日常を壊さないならばね」
 と、ここで翔にロイスを取る、【連帯感】/隔意。
「あーじゃあついでだ」
 そういうとおもむろに携帯を取り出してはSDカードを入れ画面に廃棄資料‐.246の情報を表示。
「見とけ」と言っては後ろのジークに向かってその携帯を投げ渡す。
ジーク  ……?
 携帯は受け取るものの、廃棄資料……?
GM  廃棄資料-No.246はこの資料ですよ、ジーク。
ジーク  ああ、なるほど。
 それは特に感慨もなく目を通していく。
「多分、【カーディナル】というのは君のことなんだろうね」
「多分、な。
 でもってあの女が【ロストエデン】なんだろうよ」
夕姫  いやまだ判りませんよ? 【ニライカナイ】かもしれません。
 ファタ・モルガーナとうり二つで仲の良い双子って時点で【ロストエデン】っきゃねェと思うがな?
 ついでに俺もジークに対し、【連帯感】/隔意でロイスを取る。一時共闘だしな。
ジーク  では翔と一緒に三坂仁義の研究所へと向かうのだが、その道中。
「ジャームって、なんだと思う?」とポツリ、話しかける。
「また唐突だな。
 酒に酔って暴れている人間と、どれだけ変わるっていうンだ?」
ジーク 「……ああ、そういう考え方なのか……」
 そう呟くとゆっくりと、ぽつりぽつりと独白風に言葉を口に出していく。
「……」
 黙って話を聞きながら、ラボへの道を先導していく。
ジーク 「昔……多分、この実験の後のことだと、思うのだけれど……。
 友達がね、ジャームって認定されたことがあったんだ。彼女は――」
 彼女の下りになると目を伏せ、静かに紡ぐように続けていく。
「――その時、私は何もできなかったんだ。だから、今度は止めてあげたい」
「止めたいって思うンだったら止めてみりゃイイじゃねえか、俺も俺で勝手に動く。
 確かにジャームに殺されそうになるんだったら、自分を護るためにも殺しに行かなきゃいけねえ。
 だがな、【ジャームだから】って理由だけで、殺す必要性なんてねえだろ」
ジーク 「私はね、オーヴァードだからとかジャームだからとか、UGNだからとかファルスハーツだからとか、そんなものは比較的どうでもいいんだ。
 私が護りたい日常を壊すもの――それが私の敵だから」
「ま、そこに関してだきゃあ同意見だな」

...Scene is end.

GM  さて、この辺りでシーンは終了です、が……
 ここで関係を結んだジーク・翔の両名は、何故か奇妙な安心感と連帯感を感じるようになります。
 お?
ジーク  お互いロイスが【連帯感】/隔意、ポシティブ感情が表だから連帯感は判るのだけれど、安心感もか?
GM  安心感もです。
 そして、その理由につきましては判っているか判っていないかについては任せます。
Interlude
 〜幕間〜
 んーっと。
 何を夕姫は、埋まっている自分のロイス欄をじーっと見てるんだろう?
夕姫  いや、何となく……。
 しかしどうしましょうね、ここから演出と行動……。
 夕姫とジークはここまでできちんとロイス欄が7つ全て埋まってるけれど、ぼくはロイス欄が埋まってないんだよね。
 セッション始まってから誰とも結んでいないから後2つ欄が開いている、どうしようかな本当に。
 ここからの行動もそうだけど、何と・誰とロイスを結ぶべきだろうか。
 俺もまだあと1個ロイス欄は開いてっぞ。
 っても俺の場合はラス1は、意図的に開けっぱにしてあるんだがな。
ジーク  ロイスか。
 まあ私は確かにロイス欄は7つ全て埋まってはいるのだが、今回気のせいか同一人物に3個くらいロイスを取っている気がするのだよな。
 え?
ジーク  <寺崎朝海><ファタ・モルガーナ><夢の中の少女>
 その気は全くなかったのだが、もしかしたらこの3名は同一人物のような気がしてならなくてな。
夕姫  そ、それはまずいですよジーク。
 あの資料に書いてあることを実行しようとすると、ロイスを3個切らなくてはいけなくなりますよ?
 あ。
 なんだか気づかれた気がします。
GM  ちなみに今回のセッションではロイス・ギミックがありますが、その対象のロイスを切る場合はそのロイスを切るという行動と演出がかみ合っていないと許しませんのでそのつもりでお願いします。
 そっちァ心配しなくていいと思うンすがね。
夕姫  とりあえず私は、また生ビールを一杯注文します。
GM  あ、僕の分も一緒によろしく。 
ジーク  ……。
 2人とも、ひとことだけいわせてくれ。 まだ日が高いんだぞ。
夕姫  う、うふふふ……もう笑いが出てきました。
 GMと酒飲みながら笑いながらロールします、もうお酒飲まないとやってられませんっ!
GM  ああ。
 まあ相手が君なので良いやとぼんぼんぼんぼん大惨事な背景を入れましたからね。
夕姫  は、はは、ははははは……。
GM  君なら、やれますから。
夕姫  ――はぁ。
 ほんっと、どうしましょう。あれですか、あのシーンをするべきですか、うーん……。
Scene 15
Side:Yiki
さて、次のシーンです。
GM  あれをやるとか言いましたね、どんなシーンが良いですか?
夕姫  あのですね、こんな情報出ていないのですから言って実現しては申し訳ないのですがね。
 三坂仁義の研究室で、寺崎朝海と会話するシーンを造らねばいけないかな? と思うのですよ。
GM  はい。
 そんなシーンは用意なんてしてないのですが、造っても良いですよ。
夕姫  ですがほんと〜に寺崎朝海がファタ・モルガーナであるかどうかなんて保証はないのですよね。
 ですので、研究室で謎の少女Xとのシーンを造らねばならないと思うのですよ。
 黒髪で、赤いリボンで、私とよく似た女の子。そんな少女との共演シーン。
GM  (にこにこ)
 では、そんなシーンを造ると良いと思いますよ。
夕姫  うわ、全部ブン投げですか?!
 まさか一人で全部演出して演じろとか?! ムリムリ、無茶ぶりにも程がありますよ?!
GM  いえいえ。
 NPCの方はチャンと僕が演技しますよ。

Scene is start...

 H市の裏通りにある、三坂仁義の研究室。
 ここは過去のあの白い家、それを再現したかのような実験場と研究室。
 中庭と、ガラス越しに隔てられたあの廊下、あの光景。
 それが既視感として頭をよぎる、そんな建物の一角。
夕姫 「……」
 何かを話さなくては、とは思うのですがとりたてて何かを話すことってないのですよね。
 GMはきっとこんなシーンを想定していたのですから、ここはGM主導で任せて良いですよね?
GM  (にこにこ、にこにこ)
夕姫  任せて、良いですよね?
 さっき、『そんなシーンは用意してない』って言いましたよ、僕。
夕姫  さすがGM、こういうこともあろうかとノートパソコン持参で来てらっしゃいます♪
 何せパソコンには何ギガもデータが入りますものね♪
ジーク  あのね、夕姫。
 テキストで1メガっていうと、長編ゲーム1本分のシナリオ分量なんだよ。
 メガの単位でそれなのだから、ギガとなったら相当なものだよ。
GM  そうですね、用意してありましたよ。
 廊下を隔てるのは、硬く冷たい透明なガラス。
 その仕切りの向こう側から、寺崎朝海が夕姫をじっと見つめている。
朝海 「思い出したんだね、ゆきちゃん」
夕姫 「はい、思い出しました……全部」
朝海 「そっか、思い出したんだ」
GM  静かに短くそう返すと、朝海は穏やかに問いかけてきます。
「ねぇゆきちゃん。なんであのときあんなことをしたの?」
夕姫 「私は、ずっとうらやましかったの。そちら側にいるみんなが、ずっとうらやましかったの。
 リートと約束した、あなたがうらやましかったの。私はあの子と、ともだちになりたかったから」
朝海 「ともだちに、なればよかったじゃない」
夕姫 「でも私は、そちら側に行けなかったから。
 ――だってここには、壁があるじゃない」
朝海 「その壁は、あなたが造った壁でしょう?」
夕姫  A・T・フィールドを張ります。
 おいこら、ギャグにする場面じゃねえぞ。
ジーク  A・T・フィールドって『心の壁』という意味だから、ギャグというわけではないとは思うよ。
夕姫  朝海が言っているのは的を得ているのですよ、的を得ているんですけれどねっ……!
「そ、そんなことないっ。
 みんなはずっとたのしそうに中庭で遊んでいたけれど、私はこちら側にしかいられなかった。
 私が造った壁じゃないっ、仕方がなかったのっ!」
朝海 「だからうそをついたの? あのうそはしょうがなかったの?
 そんな理由で私は――」
GM  すぅ――
 そういうと、朝海の黒髪が無に侵されていくよう、白く変わっていく。
ファタ 「――そんな理由で私は、こんなにされてしまったの?」
夕姫 「……」
ファタ  にこり。いびつな笑みが顔に浮かぶ。
「ねぇ、ゆきちゃん。なんで私たち、双子に生まれたんだろうね?
 私たち、最初から1人なら良かったのに。そうすれば、こんな苦しみなんて、きっとなかったんだよ」
夕姫  は、話す事なんてないっ……!
 ないというよりは、どう考えても私が悪い。謝罪の言葉も出てきませんよっ……!
 何ひとつたりともいいわけなんてできないっ……。
 絶句したまま、ガラス越しで変貌してしまった朝海のことを見つめています。
GM  白くなっていく朝海。
 彼女はガラス越しにそっと手をつき、夕姫と向き合う。
ファタ 「ねぇ、ゆきちゃん。
 ほんとうは私、ゆきちゃんのこと――だいきらい」
夕姫  ……。
 視線が、下に落ちます。
ファタ 「だけどね?
 もう私、あんまりゆきちゃんのこと、怒ってないんだよ?」
夕姫  ……。
 頭はうなだれ、身体がカタカタと小さく震えます。
ファタ 「ねえ、ゆきちゃん。私、ゆきちゃんにお願いがあるの」
夕姫  も、もう、そのまま話していて下さい……。
 顔を上げて視線を合わせることすらできません。返す言葉が何1つもありません……。
ファタ 「ねえ、ゆきちゃん。ジークのことは、私にちょうだい。
 いらないよね、ゆきちゃん。だってゆきちゃん、今までしあわせだったじゃない。
 今までのゆきちゃんのしあわせは、ぜんぶ私のためにあったしあわせでしょう?
 だから――これから、とりかえっこしよう?
 私があなたになって、あなたが私になるの。 ううん、違う。私たち、もとに戻るの。
 だって、そうでしょう?
 あなたがうらぎらなければ、私たちは――逆の立場にいたはずだもの」
夕姫 「……」
 で、そこでテメェはうつむいてンのな。
夕姫  彼女に返す言葉が、無さ過ぎて……。
 本当にうつむいているだけで、シーン終わってくれないか心の底から願ってますよ……。
GM  本当に終わらせたいなら終わらせられますよ?
 先生がここに現れて、夕姫を連れていってシーンが終了します。
夕姫  もう、それで、良い気が、します……。
 逃げんなこっから。せめてシーンは収束に向かわせろ。
夕姫 「でも……ううん、わかった。じゃあ、私はこれから、あさみちゃんのために生きるね。
 でも、あさみちゃんは、私が『そうなるのは当然』――て、ずっと、思っていたんだね」
ファタ 「うん、ずっと思ってた」  
夕姫 「……。
 私は、みんなのことはうらやましかったけれど、この場所のことはずっときらいだった。
 じゃあ――またね。
 今度こそあなたと同じようにしてもらえるよう、先生に頼んでみるから……」
GM  そこで先生こと、三坂仁義から声を掛けられます。
三坂 「さあ、行こうか。
 何、データならいままで十二分にとってきた。それほど時間は掛からないよ」
夕姫 「先生、ひとつだけ教えてもらえませんか?
 最初はどうして、私が選ばれていたのですか?」
三坂 「そうだなぁ。どうしてそうだったのかなんて、もう覚えてはいないよ。
 ただ、同じような人間が2人いたら、どちらでも良かったんじゃないかな?
 君たちは、双子だから」
夕姫 「そうです、か」
 そういうと辛そうに、目を伏せゆっくりとかぶりを振ります。
「――先生、早く行きましょう。私はもう、ここに居たくないです」

...Scene is end