ミドルフェイズ/Middle phase section 3

Scene 9
Side:Tumugi
 ミドルフェイズ3週目、次は紡君です。
 (ころころ)――6、侵蝕率は68、と。
 うーん、と……どのシーンを造ろうかな。
GM  プレイヤーと相談して“このシーンが必要だ!”というシーンを話しあって造っても良いのですよ?
夕姫  最低でも紡君と翔の2人とは、一回合流しないといけないのですよね。
 でも、どうしようかなあ……。
 悪ぃ、ほんっと〜は月見の病室に行こうと思ってたんが入るタイミングのがした。
 わいわい、がやがや。
 ああしようこうしようと、PC陣営の相談タイム。
 あ、じゃあこれで行こう。
 ではもう一回、ぼくは支部長に会いに行って進展はしていないということを聞きました。
 その後出身の孤児院に戻って、ぼくが昔迷子になって見つけられた場所を院長に聞いて、思い出してもらいます。
 そして、その場所にふらふらと歩いていきます。

Scene is start...


 H市、某所。
 ここは四十九院紡が拾われ、見つけられた場所。
 紡の混濁した記憶がはっきりとしだす、その始まりの場所。

 紡は何かを辿るよう、また誘われるようここに来た。

 ぱちり、ぱちり。
 記憶が欠片となり、紡がれていく。
 まるでフラッシュバックするかのよう、自分の中から記憶の欠片が紡がれ思い起こされていく――

――フラッシュバック。

 大きな試験管、浮かんでいるのは小さな子供。
 だが、身体はぽつぽつと欠けて足りてない。
 これが“ぼく”の始まり。
夕姫  な、何か言いだしたっ……これ以上状況がややこしくなるのですかっ……?!
 ごめんね。
 これは“ぼくたち”の回想シーンなんだ。
――パチリ。

  5人の子供が自分の前で、遊んでいる。

――パチリ。

 7人の子供が自分の前で、遊んでいる。
 だけどさっきの“記憶”に映った5人のうち、誰かが1人だけこの記憶の中に居ない。
 それはいったい誰だろう?
 疑問に思ういとまもなく、思考に差すのは別の意思。
 
 これは、別の視点、別の人の別の記憶。
 だけど子供たちの人数は、後の記憶の欠片の方が増えている。
 
 どうやらこれは、さっきの記憶の欠片よりも前の時間軸の記憶だろう。

 別の人間が、別の時間軸で、遊ぶ光景を見ている記憶。
 ひとりではない、またきちんとした時の流れではない。
 別々の人間の別の時間の、でも何かが共通している記憶の欠片。

――ぱちり。

 白衣の男。
 冷たい目で彼は、“わたし”を見下ろしている。
 でも、“ぼく”は彼を知らない――知らないはずだ、見たこともない。

 白衣の男が“あの子”を冷たい目で見下ろしている姿、それを“私”は恐れながら、そっと見ている。

パチ、パチ、パチパチパチパチ――……

 一つ一つでは意味もなしきれない記憶の断片、それがぼくに集まっていく。
 実験に関ってはあるいは死に、あるいは狂って、あるいは理不尽に壊され喪われた子供たち。
 願いと想い、そして記憶の断片を、ぼくは集めて存在している。
 存在として目覚めるのには、ぼくひとりでは足りなかった。
 だから、存在する為に足りなかったパーツを、失敗作として棄てられてしまったみんなからもらった。

 ぼくの身体を核にして、想いを欠片を記憶を束ねて紡ぎ、欠けた場所に埋めていく。
 そしてぼくは、 “紡”という存在になった。
夕姫  だから“紡”という名前なのですね。
 ぼくは拾われた場所で、状況を思い出す。
「ぼくはぼくの筈だ、紡の筈だ。
 そうだ、あのしおりはどこにいったんだろう?」
 GM、ここで桜の押し花を留めたしおりを探したいのですけれど……
GM  自由にして構いません、好きにしてください。
 ――しおりが、見つかりません。
GM  君はどんなにどんなに探しても、しおりは出てきません。
 ですが『しおりは確かにもらった、必ずどこかにあるはずだ』という記憶は、間違いなく紡君の中にあります。
「そうだ。ジークはしおりを持っているだろうか。
 うん、ジークはあんな性格だし、きっとたいせつにしている筈だ」
 こんな形で、ジークに会いに行きます。
GM  ではここで、シーンを閉じましょうか。

...Scene is end.

GM  シーンこそ閉じましたがいちどシーンを切り替えて、シーンプレイヤーをジークに変えて再スタートします。
ジーク  了解した。
Scene 10
Side:Sigrid
ジーク  侵蝕率は53まで漲ったな。
 さて四十九院、会う場所はどのへんが良い?
 ジークのいそうな場所で大丈夫だよ。
ジーク  そうか。
 ならば会う場面は、私の家からUGNへと行くその道中にしようか。
 日曜日のお昼ぐらいで構わないかな?
 うん。

Scene is start...

H市某所、とある道。
ジークはそこで足を止め、ふとお守りを、桜の押し花を留めたしおりを手に取り、ぼうっと眺めている。
GM  ジークがお守りを眺めていると、一瞬だけ影がよぎるようにコマ切れとなり何かが頭の中を過ぎ去っていく。
 それはオープニング・シーン1のあの場面。
 だが相手の顔が口元しか見えなかったり、何を言っているのかが判らなかったりと、思い出せるのだが思い出せないような形で過ぎていく。
ジーク 「何か、あったような気がする……何を忘れてきたんだろうな」
 そう呟くと、またお守りを胸ポケットにしまってUGNの支部へと歩いていく。
 ではそこで登場するね(ころころ)――71、と。
 テメエ帰ってこれるのかよそれ……。
GM  ウロボロスですからしょうがない。
 普段とは打って変わった慌てた・焦燥にかられた状態でジークの前に現れます。
ジーク  四十九院のその様子を見ても、普段とは全く変わらない口調で応対する。
「ああ、君か。用事の件が厄介なことになっているのか?」
 それには頷いたような頷いていないような様子で首を振って、ジークの両の二の腕を掴む。
「ジーク! ジークはしおりを持っているかい? あの時のしおりだ!」
ジーク 「しおり?」
「さくらの花びらを使ったしおりだよ、ジークも覚えているだろう?」
ジーク  それには首を横に振る。
「四十九院、君が言っていr――」
GM  フラッシュバックが入ります。
「みんなの分もあるんだよ。
 かける君の分も、ゆきちゃんの分も、つむぎ君の分も――」
ジーク  四十九院へと返すさなかのフラッシュバック、それが私の言葉を途切れさせる。
 痛みと記憶に中てられてしばらく押し黙った後、再度、口を開く。
「四十九院、君はもっていないのか?」
「そうなんだ、ぼくのしおりはどこに行ったんだろう?
 持っていたはずなのに、あんなに大事に持っていたはずなのに」
ジーク  絶対にそうだ。
 その確信をもって、胸ポケットの中からさくらの花びらを留めたしおりを取りだす。
GM  ジーク、君がそのしおりを改めてみると『その記憶は絶対に忘れてはいけなかったんだ!』という“何か”が、いきなり頭に強く湧き起こります。
 本当にこのしおりは大切なもののはず、はずなのに……。
ジーク 「……。
 どうしたんだろうな。絶対に忘れてはいけないはずなのに、もやのようなものが掛かっていて……。
 四十九院、君は何か覚えていないのか?」
 みんなが持っている筈のそのしおり、それを脳裏に浮かべます。
「翔も、夕姫も、もちろんジークだって、朝海に、時也だって持っているはずだ。
 それなのにぼくのはどこにいったんだろう?」
ジーク  それを聞くとふと怪訝そうな顔をする。
「そうだ、夕姫なら知っているかもしれない」
ジーク 「トキヤ? アサミ?
 君は誰のことを言っているんだ?」
 ジークのその言葉を聞くと声を荒げる。
「覚えてないのかい?! しおりを持っている仲間じゃないか!!」
ジーク  GM、きっとここでまた私の頭の中に何かしか出てくるよね、黒髪の少女とか。
GM  出てきますね。
ジーク  出てくるのだけれど、やはりもやが強くてそれが誰かとかなんて思いだしきれない。
 痛む頭を押さえ、呼吸を落ち着かせながらしおりを胸ポケットの中にしまう。
「……夕姫に、会いに、行こう……」
 結局、ジークはしおりを持っていたのだけれど、ぼくは持っていない。
 そのことを強く認識し、自分のアイディンティティがガラガラと音を立てて崩壊していく。
「そうだ、夕姫なら知っている筈、だ……」
 そう呟きながら、ふらふらと夕姫を探しにジークのもとを離れます。
GM  そこでシーンを閉じましょう。

...Scene is end.

夕姫  紡君、私とアイディンティティ崩壊軍団を造りましょうか。
 あ、ごめんね♪
 ぼく崩壊したけど復帰する気があるから造れないなっ。
夕姫  そんな事言わないで、チーム・アイディンティティ崩壊を造りましょうよ。
ジーク  おや? またどこかでトリオ結成か?
GM  そんなところでじゃれていないでください、次のシーンに行きますよ。
Scene 11
Side:Yuki
 シーンプレイヤーは夕姫。
 希望はどうやら、翔との1:1での場面の様子。
 てことは俺、登場侵蝕上昇ダイスは振っといた方がイイか?
夕姫  そうしてください。
 こちらから条件を指定して悪いのですが、貴方がファタ・モルガーナを探していたらそれっぽい人がいた、そこに夕姫が居たということにしてください。
 了解。
夕姫  超・メタなんですがね。
 (ころころ)――1。流石、空気を読んでくれましたね……。
ジーク  この場面、私も一緒にいた方が良いのかな?
夕姫  最初は1人で対峙させてください、来るなら途中からでお願いします。

Scene is start...


 H市、市街地。
 翔はファタ・モルガーナを探しにH市をあちらこちらと探している。
 そんな中、目の前にファタ・モルガーナではないかと思しき女性を見かける。
夕姫  ――って私、なんですけどね実はそれ。
 恐らく容姿が似てるのではないかな、って気がしているのですよね。
GM  似てるねえ。
 あ? でもファタ・モルガーナって“少女”じゃなかったか?
GM  少女ですよ。
 でも少女って言うよりもですね……
夕姫  (遮って)どうせあの子でしょう? 何度も“似ている”って言われてるのですからもうっ……!
 まあそこらは置いとくか。
 ファタ・モルガーナらしき女を見かけては近づいていく。
 肩を掴み、此方を向かせようと手に力を込めたところで気づいて「――あ、悪ぃ」
夕姫  振り向かせてきた相手を怪訝そうな顔で見ます。
「……貴方は?」
 人違いだったんでちょっとばつが悪そうな様子、で横を向く。
「アンタん所の転校生。人を探してるンだよ」
夕姫  その瞬間≪ワーディング≫を張ります。
 さらに≪不可視の領域≫を展開して、この近辺は私が望む以外のものには誰にも認識できない“領域”へと変えます。
「確か……あの時も居ましたよね、夕菜さんの時も……」
「……ああ、居たな、確かに……」
夕姫 「それにこの“領域”の中で、どうして私を認識できるんですか?」
 いままで言葉を選んでた様相だったのが、瞬間毒を含んだ物言いに変わっては居直る。
「あああ、そういうことか。わざわざ罠を張ってくれてありがとうよ?」
 そう言い捨てると、やおらどっかに行こうとする。
夕姫  すっと翔の前に現出し、立ちはだかります。
「貴方がオーヴァードというのならば、放っておくわけにはいきません」
「ならばどうするっていうんだ? このまま一戦ヤりあうか?
 俺はアンタらとは慣れ合いたかァねえぞ」
夕姫 「貴方、何者ですか?」
「ただのオーヴァードだよ。
 っと、ああそうだ、聞きたいことがあった。あの女、どうなった?」
夕姫 「あの女……夕菜さんのこと……?
 ただのオーヴァードの貴方がどうしてそれを気にするのですか?」
「目の前でボロボロになった奴を気にしちゃあいけないか?」
夕姫 「本来ならばそれがありえないはずです。
 あそこは私の“領域”だったのです、目の前でボロボロになるだなんて認識できるわけがない。
 それに――それに貴方、UGNではありませんよね?」
 それには答えない、沈黙で返す。
夕姫 「貴方がUGNではないとすれば、イリーガルですか?」
 それも答えない。
「そんな事を聞いてどうするんだ?
 アンタらの仕事は、逐一詮索するのが仕事なのか?」
夕姫 「オーヴァードの力は日常にとって危険なもの、放置するわけにはいきません」
 “領域”の中に自分の身体を溶け込ませるよう掻き消えて、翔の背後から急襲を仕掛けます。
「……っ」
 目の前でばっ――っと溶けて消えた女が次の瞬間襲いくる、それに気づいては身をかわす。
 かわしながらもそいつの首根っこをひっつかんでは、地面へと思いきり叩きつける!
ジーク  介入で登場させてもらう。
 翔が夕姫の首を掴んだその右腕は、叩きつけようとする前にいつの間にか私の手が抑えている。
 自分の腕を掴んでいる相手を見やる。
「――何をする」
ジーク 「親友が叩きつけられそうになっているのに止めるのに、理由がいるか?」
「要らねえな。だったらコイツをしっかり見張っていろよ」
 言い放つと女の首を掴んでいた手を離す。
ジーク  ならばこちらも翔の腕を解放する。
 そしてさりげなく翔と夕姫の間へと身を呈するように歩み進める。
 俺は逆に少し下がる、軽くアンタらとは距離を取る。
夕姫 「リート、彼はファルスハーツです」
ジーク 「ファルスハーツ……?
 そういえば、ファルスハーツが潜入していると、支部長が言っていたっけ」
夕姫 「ただでさえファタ・モルガーナの件でこの街は揺れています、いま彼を野放しにするわけにはいきません」
 その言葉にゃ侮蔑の表情を浮かべとくよ。
ジーク 「……?
 彼が、何かしたのか?」
夕姫  え?
ジーク  そこは夕姫と意見が違うんだ。
 私は実行犯ではない限り、ファルスハーツだって叩こうともしない。
GM  でもそれでは進まないシーンというものもあるのですよ。
 ともあれ先程から紡君がこの場面に介入したそうでしたので、紡君も登場してください。
 はーい、侵蝕率は73――と。
 では≪不可視の領域≫で隠された3人の居どころを、ぼくは何となく感じ取る。
 ≪消去の号令≫を用いては、近隣に展開している≪不可視の領域≫を解除します。
夕姫  うそ?!
 ≪不可視の領域≫を解除してしまうのですか?!
 解除します、喰らいます、≪ワーディング≫張ってくれてるのならばだいじょうぶっ!
 一応≪消去の号令≫は対決判定が要るんだけれど――やる?
夕姫  消して、良いです。
 ≪不可視の領域≫のレネゲイドを、ぼくは身体に吸収しながら息急き切って登場します。  
「あ、夕姫、居たね!」
夕姫 「つ、紡君?!」
 焦燥に駆られ過ぎて、周りにジークも翔も居ることに気づかず気にもせず夕姫へと向かっていく。
「夕姫、夕姫!
 夕姫はしおりを持っているかい、ぼくのしおりを持っているかい?」
夕姫 「貴方は何を言っているの?!」
 紡が介入して女達とヤりあい出したならば、踵を返してこの場を立ち去る。
 こんな連中となんざ付き合ってられっか。
夕姫 「今、そういう場面じゃないの。
 貴方、この2人の敵なんですか、味方なんですか?!」
「そんなことより重要なことなんだ、君も覚えているだろう?
 さくらの花びらを留めたしおりだよ!!」
夕姫 「今、この状況d――」
GM  フラッシュバックが発生します。
 さくらの花びらを留めた、しおり。
 確かにそのしおりを持っていた、その記憶が心のどこかで引っかかっている。

 なぜ?
 自分達は絶対にそれを持っていたはず。なのに何故自分達はいま、持ってはいないのだろう?
 そして、何故?
 紡はいま、それを言うのだろうか――
GM  『あれ? さくらの花びらのしおり、そういえば持っていたな』
 そんな想いが、夕姫も、翔も、ジークもフラッシュバックします。
夕姫  何故無いか、自分で決めてしまって良いのですかね?
GM  いいですよ。
 翔は立ち去ろうと数歩歩いたところで紡君の叫びを聞き、その記憶がフラッシュバックします。
「……」
 フラッシュバックした瞬間、歩みが止まる。
 その瞬間、ようやく翔が居たことに気づく。
「あ、翔、いいところにいた!
 翔もしおりを持っているはずだよね?!」
「知らん!
 ――いったいなんなんなんだよ」
「覚えてないのかい?
 翔と夕姫とジークと朝海と時也と……」
夕姫 「それなら……確か、燃やした……」
「えっ?」
夕姫 「燃やし……あれ?
 なんで、なんで私、“燃やした”って、いま、言ったの、だろう……?」
 その言葉を聞くと過剰反応なまでに反応するよ。
「なんてことを!!
 みんなで分け合ったしおりじゃないか!!!」
夕姫 「え?
 ……だって、持ってたら、辛かったんだもの……」
 その言葉を聞いた瞬間、夕姫から視線を外してまるで興味を喪ったかのように呟く。
「夕姫は話にならない。ぼくのしおりを、探さなきゃ……」
 そういいながら、幽鬼のようにふらふらと市街地の喧騒の中消えていく。
 俺も紡とは別の方向へと歩み立ち去っていく、そのままファタ・モルガーナを探す。
夕姫  その後ろ背に向かい叫びます。
「桐生翔!」
「……」
夕姫 「貴方は、私が、止めます」
「やれるものならやってみやがれ」

...Scene is end.

 うーん。
 しかしどうしようかな、これは予定が狂ってきた……どうやってみんなを繋げよう……
夕姫  このセッションでのPC4の立ち位置、辛いですよね。
 でも、ここで1回合流はしているのですから、これ以上は無理には繋げなくてもいいのではないでしょうか?
 う〜ん、だいぶ強引にフラグを踏みに行った気はするから、ね。
ジーク  いまのシーンのお陰で、翔と夕姫&私が繋がったよ。 
夕姫  でも代わりに、紡君と私が断ち切れた気がします。
 は、ははははは……。
ジーク  大丈夫。
 それでも翔から夕姫と私を回って、四十九院とはつながっている。
 しかし『しおりを燃やしました』は流石に……。
夕姫  シナリオにないことを呟いてしまいました。
 でも多分、こういう展開になるんじゃないかな―……って思ってるのですよね……。
 まあ、夕姫の立場だと燃やしててもおかしくないよね。
 で、今のぼくの精神状況だとさっきみたいな反応せざるを得なかったんだ。
 もうちょっと後で聞けばよかったかなー?
夕姫  『誰が悪い』って聞かれたら、後でGMをみんなで指差しましょう。
GM  そんなことはありませんよ。
Scene 12
Side:Kakeru
夕姫の次は翔の順番です。
 ファタ・モルガーナを探しに行く。
GM  はぁい。
 ところでどんなシーンが良いのですかね?
 そいつァお任せします、どこで会っても構いやしない。
 まず1回会って口説きたいだけだしな。
GM  ファタ・モルガーナと会話をしたいのですか?
 普通に会話したいっすね。
 その時に襲われても死にかけてもそれは構わねェ。
 ファタ・モルガーナと会話、ねえ……でも倒されても構わない、と。
  じゃあ、このイベントを起こそうかな〜?
GM  ではシーン12はイベントシーンとします。
 ファタ・モルガーナに会いに行くというよりは、ファタ・モルガーナが登場するシーンとなります。
 シーンプレイヤーは変則的ですが、翔ではなくジークとなります。
ジーク  了解。
GM  翔がファタ・モルガーナの行方を追っていると、彼女はどうやらUGNの施設へと向かっているであろうという推測が立ちます。
 UGNの施設……?
GM  場所が場所だから朝海も出るのではない、かな?
 紡君と翔は登場は推奨だけれど、無理には出なくても良いシーンです。
夕姫  私は?
GM  あ。
 ああ、ごめんごめん、朝海じゃなくて夕姫だ。夕姫もこのシーンは出てくるのではないの、かな?
 なんだかGM側から呼ぶ名前が、どんどん変になっていくな。
ジーク  ちょっと、混合しちゃったんだね。
夕姫  ちょっと、似てる名前ですよね?
GM  何だか作為的なものを感じるけれど似てる感じですよね。
夕姫  ……。
<Scene 12 is Event...>
  Side:Sigrid
  Place:The UGN

Scene is start...

あの邂逅の、あと。
各々が別れ、思い思いに行動しているそんなとき。

――ズン。
身体に響く低い衝撃が、空気をを伝わり轟かせる。
突如わき起こった衝撃が空気を震わせたかと思えば、次の瞬間UGN支部のある場所が爆発を起こす。
ジーク  それは驚いて、全速力で向かう。
GM  ジークがUGNの支部へと向かうと、建物の中で戦闘が発生しています。
 爆発を起こしたUGN支部の建物。
 その中ではエージェント達が、ひとりの少女を相手取っては必死で応戦を繰り返している。
 白い服、白い髪、赤いリボン。
 ひとりの少女――ファタ・モルガーナ。

 彼女が腕をすっと上げる。
 すると周囲の壁に、建物に、網目状のヘクスがさあ――と奔り抜ける。
 次の瞬間それらは分解され、槍のようなモノ、触手のようなモノ、果てはおもちゃの兵隊のようなモノへと変わりUGNエージェント達を襲い、屠る。

 多勢に無勢のはずなのに、毛ほどの傷すら負わぬ白い少女。
 力の差は圧倒的。

 ひとりの少女の力の前に、UGNエージェント達がなぶり殺しにされていく。
ジーク  戦場の中に駆け込んでいく。
「ファタ・モルガーナ」
GM  君がその言葉を呟くと、彼女は振り返ります。
「ジーク!」
 声の主を、ジークの姿を認めると彼女はあどけなく笑います。
「待っててジーク、今片づけるから♪
 こんなところ要らないよね?
 こんなところがあるから、ジークは今、変な仕事させられてるんでしょ?」
ジーク 「変な仕事?」
夕姫  登場します。 “領域”を張りつつジークの後方から現れます。
「彼女の言葉に耳を貸さないで。
 あの女はジャームです、まずは排除することを優先しましょう」
GM  あどけない笑みを浮かべていたファタ・モルガーナ。
 だが夕姫の言い放った言葉を聞くとすっと表情を変え、無表情に夕姫へ対する。
「あら、あなたもここにいたの。どうしたの?
 そんなできそこないの力で、私に勝てると思っているの?」
夕姫 「……」
ファタ 「ダメだよゆきちゃん、だって全然足りないもの。
 ゆきちゃんがいなくなってから、私、つらかったんだよ?
 ゆきちゃんの分も、私、がんばったんだもの」
夕姫  こ、ことば攻めやめて……っ。
ファタ  トーンは低く、とげのある、ゆっくりとした口調で夕姫へと対する。
「しあわせにしていたゆきちゃんが、私の力に敵うわけがないじゃない――」
 そう言うや否や、“領域“が一気に広がりだす。
夕姫  こちらも“領域”を展開し返しましょう。
「力があるかないかなんて関係ありません、私はここを護るしかないから……。
 リート、お願いします」
ファタ 「だいじょうぶ、ジーク。
 すぐにここにあるものを片づけてあげるから」
 あ、GM。
 現状の状況だと口挟む気はねェンだが、どっかに登場させておいてくれませんかね。
GM  はい、登場しておいてください。
 UGNをぶっ壊してることに関しちゃ止める気なんざさらさらないっすがね――っと。
夕姫  も、もう翔に関わってる余裕なんてもう、無いっ……!
 ぼくはこのシーンはどうしようかな。
 でも今の精神状態だと、登場するとギャグになってしまう、かな。
ジーク 「今すぐ、やめてくれないか?」
ファタ 「何を?」
ジーク 「私の友達を、これ以上傷つけないで欲しい」
ファタ 「ともだち? この人たち?」
GM  そういうと彼女は、倒れているUGNエージェント達を見ますね。
ファタ 「この人たち、ともだちなの?」
ジーク 「そうだ。友達であり仲間だ」
ファタ 「ふーん……。
 じゃあ、要らないよね?」
GM  にこり。
 ファタ・モルガーナが無邪気な笑みを浮かべた瞬間、倒れているUGNエージェント達が幾本もの槍に貫かれ、そして瞬く間に白い影に飲み込まるよう消えていく。
ファタ 「だって、ジークは私がいればいいもの」
ジーク  ファタ・モルガーナにロイスを取る!
 懐旧/【敵愾心】、ネガティブの敵愾心が表感情。
ファタ 「そっか、ジーク。私がいない間に“ともだち”なんか造らないといけなかったんだね。
 そうだよね、ジークもさみしかったんだよね、ごめんね。
 でも、だいじょうぶだよジーク。これからは私がいてあげるから――」
GM  そう話している間も、周囲では白い領域がどんどんと展開していく。
 それはヘクスを奔らせ変質させては、次々とUGNエージェントをなぎ倒していきます。
ジーク 「……っ!」
 仲間を、UGNエージェントを護ろうという行動を取り、ファタ・モルガーナに攻撃を仕掛ける!
GM  このままですと戦闘に発展しますが、傍観している翔や出ていない紡君はどうしますか?
「(なんか派手にやってんな〜……)」
 この状況なら俺は止めないし手も出さない、口説くにしてもドンパチがひと段落してから。
 もう1・2シーン挟まないとぼくは出られそうにない、です。
GM  ではファタ・モルガーナ、ジーク、夕姫の3人で ミドル戦闘行きましょうか。
 戦闘配置は――
ジーク
ファタ・モルガーナ
夕姫

――大まかにこんな感じ、全員が別エンゲージです。
戦闘についてはこちらに説明をゆだねます。

GM  配置してエンゲージも組みましたけれど、あんまり今回意味はありませんがね。
 行動値を申告してください。
夕姫  行動値は11。
ジーク  9。
GM  ファタ・モルガーナの行動値は0となります。
 ではセットアップ、夕姫からどうぞ。
夕姫  セットアップフェイズ。
 ≪原初の白:サポートボディ≫、 “領域”を展開し自分の身体をリートに預けます。
ジーク  効果は何だったか……?
夕姫  対象――この場合はリート――のこのラウンド中のあらゆる判定のダイスを+Lv個します、今は5個ですね。
 代わりに私の判定が−5個します。
ジーク  了解。
GM  ファタ・モルガーナはセットアップはありません。
 ので、イニシアテブで続けて夕姫、どうぞ。
夕姫  【待機】します。
ジーク  では私の番だ。
 マイナーアクション:≪インフィニティウェポン≫≪ダブルクリエイト≫≪イオノクラフト≫
 空を飛び、ファタ・モルガーナとエンゲージする。
「君が言ったことは記憶にもやが掛かっていてよく判らない、だから判断はできない。
 けれど、今は君を止めさせてもらう」
 近づいた時には私の腕に形成される巨大な楯、その楯には双の騎士槍がついた歪な代物。
 メジャーアクション:≪コンセントレイト:ノイマン≫≪マルチウェポン≫
 12D+5、クリティカル値は7――29。
GM  当たりますよ。
ジーク  攻撃力は63点。
 騎士の突撃の如く、ランスチャージの形でファタ・モルガーナへと突貫・渾身の力で叩きつける。
GM  思いきり叩きつけるよう突進してくるジーク。その姿を見、その槍へ目を向けるファタ・モルガーナ。
 その瞬間、さあ――っ。
 槍に楯にヘクスが奔り、そして音もなく崩れ落ちていく。
ジーク  そのまま拳になるのだろうな。
 それを見た瞬間、驚いた表情を浮かべる。
ファタ 「ジーク。そんな力じゃ、何もできないんだよ?
 私たち、力の差があるのは当然じゃない。
 私がぜんぶ、あなた達がいない間も、ずっとずっと、あの実験を続けていたの――続けさせられていたの。
 だから、あなた達が私に敵わないのは、当然なんだよ?」
GM  『それが当り前なのだ』
 ただ事実を告げるよう、静かに淡々と言葉を紡ぐファタ・モルガーナ。
 嫌味も含みもその言葉には何もない。
 ほんのすこしの間が置かれると、彼女は朗らかな笑みをジークへと向ける。
ファタ 「でもねジーク、心配しないで?
 あなたは私が護ってあげるから。
 あんな邪魔な人間なんて――私がすぐにやっつけてあげるから」
 そういうと、すっと夕姫の方に視線を向ける。
GM  夕姫に対しオリジナルEエフェクト:≪絶対者の指先≫を使用します。
 これはオートアクション、任意の対象を戦闘不能へと陥いらせます。
夕姫  え、あ……≪リザレクト≫やロイス昇華による復帰は……?
GM  もちろん効きません、Hpこそ減りませんが問答無用で戦闘不能へと陥ります。
GM  ファタ・モルガーナが夕姫に視線を向けると、夕姫の周囲の“領域”が蠢きはじめる。
 おもちゃの兵隊のような奇妙なもの達がたくさん現れて、一斉に夕姫へと群がってくる。
夕姫  振り払おうとするのですが振り払いきれません。
 苦しみもがき、抗うのですが抵抗なんてしきれず、そのうちにひざまづかされてしまいます。
GM  その様子を実に彼女はたのしそうに見ています。演出は重ねないのですか?
夕姫  演出?
GM  判っていると思いますがこれ、イベント戦闘ですからね。
 どんどんしゃべったり演出を重ねた方がオトクですよ。
ジーク 「夕姫!」
 思わず後ろを振り返る。
夕姫 「リート。
 私のことは良いから目の前の敵に集中してください」
ジーク 「でも」
夕姫 「元からそういう分担だったでしょう?」
ジーク  う、それを言われてしまうと……
 確かに普段、私と夕姫は一緒には戦っていない、いないのだが……っ。
 夕姫とジークはUGN活動における相棒ですが、普段は同じ場では戦っていません。
 夕姫が“領域”を展開し敵を補足、ジークの有利な状況を造り出した後に相棒であるジークに後を任せ、“領域”の維持や周囲に他のものが入ってこないよう見回っています。
 後を任されたジークは敵と1Vs1で対峙、これを撃破するのが通例です。
GM  ジークがそうやって悩んでいると、ファタ・モルガーナが口を開きます。
ファタ 「ねぇ、ジーク。
 なんでそんな子のことを心配するの?」
ジーク 「仲間を心配することが、そんなにおかしいことなのか?」
ファタ 「おかしいよ、だってジークはそんなことしない筈じゃない。
 だって私のジークはそんなことしない、私のことしか見ないはずだよ?」
ジーク 「……?
 君は、誰の話をしているんだ?」
夕姫 「リート! いちいちジャームの言葉に耳を傾けないで!!」
ファタ 「うらぎりものは黙ってて」
夕姫  振り絞るよう叫びましょう。
「そいつの言葉を聞かないで!!」
ジーク  再度武器を形成、先程と同じようにファタ・モルガーナに攻撃を試みる。
GM  当然のように効きません。
「なんで、なんで? なんで昔のジークみたいに笑ってくれないの?」
 攻撃を弾きながら彼女から漏れる言葉。目を丸くし、驚きを隠せず、困惑したかのような様子。
 程なくすると何かに気づいたのか、目を輝かせてはにこり、爛漫な笑みを浮かべる。
ファタ 「そっか、ここじゃないんだ、ここじゃないんだね。
 そっか。ごめんジーク、すぐに見つけてあげる。あなたを縛っているもの、すぐに壊してあげるから♪」
ジーク 「何を、言っている……?」
ファタ 「全部、私に任せて♪」
 そういうと、ふわり――身体は宙に浮かび上がる。
ジーク  ≪イオノクラフト≫で飛行状態、宙に浮くファタ・モルガーナを追いかける。
 そして三度目、攻撃を放つ!
GM  ひときわ強く輝いたかと思えば、蜃気楼の如く揺らめいて――消える。
ジーク 「……っ!」
 攻撃はファタ・モルガーナを捉えることも出来ず、突貫を掛けるものの武器は空を切った。
 ……えーっと。
 いや、今のミドル戦闘としてはあってますが、え―っと……。
GM  何も無ければシーンを閉めますが……大丈夫ですかね?
 ンじゃお言葉に甘えてちっと続けさせてもらいます。
「あーあ、先にいっちまいやがったか」
 3人が戦闘展開していたその場所の、はるか先から声がする。
「ったく、まった酷いモンだな……」
 凄惨なその状況を見渡しながらぶちぶち言いつつ、ゆっくりとその場に歩いてくる。
ジーク 「……。
 先を、越された気分か?」
「ま〜あ、それに近いかな。
 ――アンタらにな」
ジーク 「私たちに……?」
 首は縦に振る。
ジーク 「そうか。君はUGNの支部を攻撃しに来たわけじゃなかったのか」
 舌打ちを1つ。
「そんなことして何になるんだ?」
ジーク 「いや。組織としては反目しているからな」
「間違っちゃいねェな。
 事実そこの女みたいに掛かってきたってンならぶち壊すが、それとこれとは関係ねェ」
ジーク  うーん……?
「ファタ・モルガーナに会いに来たのか?」
 首を縦に振る。
ジーク  うーん……黙し軽く考える。
「よく判らないが、話が通じる相手には見えないが?」
「それはアンタらがヤったからだろ? まあイイけどな」
GM  せっかくですので、もう一個イベントを組み合わせましょうか。
 コツ、コツ、コツ――
 倒壊した建物の中に靴音が響き、白衣の男が現れる。
「やあ、派手にやったなあ。これはなかなか……イイ成果じゃないか」
夕姫 「三坂仁義!」
「研究者っぽい物言いだな。それにしてもズイブン嬉しそうだな、アンタ」
三坂 「ああ、嬉しいとも。何せ私が造った完成作の、初めての成果だからねえ」
「完成作?」
三坂 「ああ、そうさ。君達のような失敗作ではなく、より素晴らしい完成体の力さ」
「俺達が失敗作で、アレが完成作……?」
 誰ともなく、ぽつりと呟く。
三坂 「ああ、そうか。君達は覚えていないのだったね? では、気にしなくて結構」
「流石にそうはいかないんだよ――な?」
 研究者風体のその男へと距離を詰め、掴みかかる。
GM 「おっと」
 と三坂仁義が呟くと、ポケットに突っ込んだ手がピクリと動く。
 その瞬間、掴みかかった翔の身体に電流が奔り抜ける。
 ――どさり。
 倒れ込んでその場でうずくまる。
夕姫 「どうして、あなたが……?」
 俺も知らん、まあこっちも電撃喰らってて返すにも返せないけどな。
「……何、をしやがっ……た……」
ジーク  そんなやりとりをしている間に、中空に浮いていた私は地面に降り立ち白衣の男と対峙する。
「あなたが、あのジャームを造ったのか?」
三坂 「半分、合っているねぇ。
 たしかにあれを造ったのは私だが、あれがジャームになったのは私の責任ではないよ」
夕姫  ごめんなさい。
 その責任が誰にあるかなんとなく想像つくのでこれ以上聞きたくないです。
 多分そいつァ無理な注文だと思うぞ。
 ところで電流喰った俺はてきと〜に復活して混ざってもイイんすかね?
GM  それは平気です。
 ンじゃ呻いていましたが、悪態つきながらゆっくり起きあがっときますよ。
三坂 「どうかね、ジーク君。
 久しぶりの彼女との再会は、楽しんでくれたかな?」
ジーク 「……? わけが判らない」
三坂 「ああ、悪い悪い。
 君達が“忘れている”ということを、つい忘れてしまう。これは悪い癖だな」
「ほんっとーだよ話が見えねえんだよ、話せるなら話してくれよ。
 めんどくせェンだよさっきからよ」
三坂 「私が話すことではないような気がするなあ、これに関しては。
 君達の長に聞いてみたらいいだろう?」
ジーク 「私たちの長?」
三坂 「きっと話してくれるはずさ。
 彼女も彼も、この件についてはよ〜く知っているからねぇ」
夕姫  ……。
ジーク  うーん……。
 訳が判らないといった顔をしたまま。
「まぁ、そうだろうな……」とポツリ、呟く。
ジーク 「とはいっても、あのジャームについて色々聞きたい。
 あなたをここで大人しく返すわけにはいかない」
三坂 「おやおや怖いねえ。
 ジャーム、ジャームというが、彼女は君にとってたいせつな子だった筈だったはずだがなあ。
 ジャーム、ジャームというのは少々可哀そうではないのかなあ、ジーク君?」
ジーク 「では言いなおそう。
 ファタ・モルガーナのことをあなたが造ったと言う以上、あなたを大人しく返すわけにはいかない」
三坂 「ふーむ、それで? 何をするんだい?」
ジーク 「彼女について聞かせてくれないか?」
夕姫 「リート、聞いちゃだめ!」
 このタイミングで過去を思い出します、任意で思い出して良かったのでしたよね?
GM  もちろんいいですよ。
夕姫  お、思い出したくない、思い出したくは本当はありませんっ。
 でも、でもここで思い出さないともう私にはロール出来ないっ……。
 な、なんで3人のうちに最初に過去を思い出す宣言しちゃうことにっ……!
GM  きっかけ、演出してくださいね。
ジーク  私はこれから、ファタ・モルガーナのことをこの男から問いただそうとする。
 俺もそれに関しては協力をする。
三坂 「覚えていないのか、君達はあんなに仲が良かったというのに」
GM  己の前に鋭い視線で対峙する2人を見ては、少しあきれたような物言いをする三坂。
 すっと夕姫の方に視線を向け、そして言葉を続けていく。
「特にそう。君達は、うり二つだったね。
 うり二つのような、実に仲の良い――仲の良い双子だったよ」

 その言葉を聞いた瞬間――パキン。
 夕姫の頭の中で、何かが弾けた。


 白い部屋、白い壁、白い天井、子供のころ過ごした家の名、その家の情景……
 まるで堰を切ったかのように、頭の中へとたくさんの情景が場面が流れ込んで暴れて――


――幼い声が聞こえてきた。
「ねえ、あさみちゃん。今日だけだから。リボン、とりかえっこしようよ」

 これは、私自身の声。
 私――そう、夕姫の声。

「それでね? あさみちゃんがわたしになって、わたしがあさみちゃんになるの。
 きっと誰も気づかないよ。
 ね? きっと面白いと思うの。一日だけ―― 」

 そう、私は知っていた。
 この日、先生が私と時也を連れていくって。

 連れて行かれたら、きっともう逃げだせない……
 連れて行かれなかったら、きっとあの鉄格子の窓、その向こう側へと私はいける。

 だから、私は、うそをついた。
 私とうり二つの双子の妹、朝海をだまして――入れ替わった。
夕姫  回想シーン、入れさせてもらいます。
 陽の光が差しこむように、重なってくるある記憶――……。
 中庭に面する廊下。
 ガラスの向こう――中庭からは、子供たちの笑い声。
 そこでは実験体の子供達が、たのしそうに遊んでいる。

 でも私はその中には居ない。
 私は中庭に面するその廊下で、ガラス越しにその様子を羨ましそうにみている。
 コツ、コツ、コツ。
 ぼうっとみんなが遊んでいる光景を見ていると、廊下を響いてくる靴の音。
 先生が、私の方へと近付いてきた。

「どうしたんだ? 君は実験の筈だろう?」
「あ……」
「君は実験体の中でとくべつなのだから、他の実験体と遊んでいる時間はないのだよ」
「……はい、先生……」
 想いは言葉という形になる前に溶けて消え、私はうなだれては押し黙る。
 先生の言葉におとなしく従い、先生の後ろをついていって私は廊下を去っていく。

 私はいつも、みんながガラス越しに遊ぶ姿を見ているだけ。
 たまに話す相手は、双子の妹――朝海だけ。
 朝海だけは、私の様子に気づいて、私に話しかけてきてくれた。


 ある日。
 その日のことを朝海は“誕生日だよ”と言ってはいたのだけれども、ほんとうは私たちには誕生日なんてものはない。
 だから、なんでもない――そんなある日。


「こうしていれば私たち、見分けがつくよね」
 そう言って朝海は、赤と青のリボンを持って来てくれた。
「ねえゆきちゃん、どっちがいい?」
 屈託のない、桜の花が咲くようなそんな笑みを浮かべる朝海の手には、青いリボンと赤いリボン。
 その笑顔に、明るさに押されておずおずとリボンを見ては、選ぶ。
 自分のイメージとは合わない、よね……。
 そうは思いながらも赤いリボンの方を手に取って、長くなった黒髪にそっと結わえてみる。
「こうすれば、わたしもあさみちゃんみたいに、明るくなれる……かな?」
「ゆきちゃんは、そのままでいいとおもうよ」
 青いリボンを髪に結わえながら、ほんのり照れた顔をした朝海。
 そして彼女は微笑むと、手を振りまた実験体の仲間の元へと駆けて行った――。
 サアァ――……
夕姫  ……。
 思い出しました、思い出しましたよ、なんで私自分を追い詰めたんだろう……。
 う、嘘っ……でも私が犯したまぎれもない事実で……それで、あの子はっ……!
 思い出した罪と記憶と目の前の事実にさいなまれ、頭を抱えて崩れ落ちます。
GM  思い出しましたね。
 では夕姫はこれ以後、素晴らしいロールをすればファタ・モルガーナのオリジナルEエフェクト≪絶対者の指先≫を無効化できるようになります。
夕姫  ちょっと!
 その“素晴らしいロールをすれば”っていう条件なんですかGM、酷すぎませんか?!
 そんなルール的条件ありますかーっ!!
ジーク  まあ、前にもあったからなこのGM。
GM  そんなことはどうでも良いのです、シーンを続けてください。
夕姫  震える声。記憶と罪に苛まれて折れた己から、無理やりながらも何とか言葉を形にする。
「せ、先生……私が行きます、彼らには手を出さないで……」
三坂 「何のことを言っているんだい?」
夕姫 「……。
 いったい、何をしに来たのですか、先生……?」
三坂 「私かい? 私は成果を眺めに来たのだよ」
夕姫 「だったらもう、関わらないでください……」
三坂 「まあ、君がそう言うならそうしてあげてもいいのだけれどねえ――」
夕姫 「”いいの、だ、けれど”?」
三坂 「……。
 まあ良いさ、私の力では彼女をとめることも出来ないからね?」
GM  三坂仁義はにやにやとした笑みを浮かべたまま、君たちを眺めてはしばしの間沈黙を保ちます。
三坂 「――それで、君達は彼女と対してどうするつもりなんだい?
 断言させてもらうが、君達の力では彼女には敵わない」
夕姫 「なら、先生。彼女に勝つ力を先生がくれませんか?」
三坂 「何故? バカなことを言わないでくれ。何故彼女を倒さねばいけない、私の完成作なn――」
夕姫 「あの時できなかった実験を、私で」
三坂 「――ああ、面白い。それは実に面白い取引だ。なるほど、そういうのは面白い。
 よかろう夕姫。君を私のラボへ招待しよう」
ジーク 「夕姫、何を言っている」
夕姫 「リートは黙ってて。何も……思い出さないで」
三坂 「では君たち、そういうことになったみたいだから」
 そういうと、三坂は倒れている夕姫へ手を差し伸べます。
夕姫 「先生、お願いします」
 そう言って、彼の手を掴みましょう。
三坂 「では、私はこれで失礼するよ」
ジーク  こ、これ、どうしよう……。
 僕としてもどうしよう。
ジーク  このままだと夕姫が連れてかれてジャームにされてしまう……どう考えても夕姫を止めなくてはいけない場面だ……。
 だろうな。
 いっとっけど俺は手助けしねえぞ。
ジーク  うん、判ってる。翔に頼れないのは判ってるのだけれ、ど、うーん……。
GM  悩んでいるだけで何もないと、今度こそシーンを閉じますよ?
 まあ、ちっとだきゃ時間稼ぐか。
「“勝てない”と言ってるその根拠は? 俺らが失敗作で、あいつが完成作だからか?
 アンタが俺をとめたみたいに、アンタはあいつをとめられねえのか?」
三坂 「何を言っているんだ。そんなこと、彼女に通じるわけがないだろう。
 彼女は言わば“小さな世界”そのものなのだよ、私が干渉する手立ては何一つない。
 もちろんそれは君たちも同じだ」
GM  ひと呼吸の間を置いて、悠然とした口調で彼はさらに続けます。
三坂 「たとえ話をしようか。
 アリが100匹いたとして、それが象に敵うことはあるかね?
 つまりはそういうことさ。彼女に勝てない根拠というのは――そういうことなんだよ」
夕姫  いま、私、なぜPC3を演じているのか自問自答していますよ。
 自分で選んだんだろがよ。
 三坂の言葉には小さくため息をついて「そもそもこっちは勝つつもりはさっぱりないんだけどな」とひとりごちる。
GM  ジーク、そろそろシーンを閉じて良いですか?
ジーク  (ぶつぶつ、ぶつぶつ)これではダメだ、いったいなんて言えば私は良い?
 うーん、うーん……。
GM  ……。
 シーンを切ります。
「かける、リート、ごめんなさい私のせいで。紡君にも謝っておいてください」

 白に侵蝕され蹂躙されたUGN支部の建物。
 そこから立ち去り遠くなる靴音、消えていく2人の男女。
 白衣の男に連れられ立ち去る夕姫の声、それが侵された建物の中で寂しく響いた。  

...Scene is end.