Scene is start...
H市郊外。
ひとけもまばらな、河川敷――
|
紡 |
ひとり歩いている翔を見つけると、後ろから声をかける。
「あ、やっと会えた」 |
翔 |
振り向かず、黙って右手を上げる。 |
紡 |
翔が反応したのを見ると駆けだして、前に回りこんでくる。
「で、どうするの?」 |
翔 |
「どうするって?」 |
紡 |
「ひとを探してる――って言ってた、よね」 |
翔 |
黙ったまま、軽く周りを見渡す。
周囲に人がいないことを確認してから、胸ポケットからファタ・モルガーナの写真を取り出して紡に見せる。
「コイツを探してる」 |
紡 |
写真を見た後「――UGNも、同じ人物を探しているよ」 |
翔 |
「へぇ〜……アイツらが、アイツらが」
その言葉と音調には強い軽蔑が、自重なく表に現れる。
「まあアイツらならそうだろうなあ……。
なあ紡、お前アイツらの方にも顔出せたよな?
アイツらがどんな情報を握ってるか、知ることはできるか?」 |
紡 |
「うーん……?
知れることは知れるけれど、翔の方が詳しく知れるんじゃないの?」 |
翔 |
「びみょー。
今探してるとこだ、正直」 |
紡 |
「えっ? だって、この子はファルスハーツが放ったんでしょ?」 |
翔 |
「何言ってやがる、あっちの施設から逃げたんだよ」 |
紡 |
「UGNの支部長は、FH側が放ったジャームだって言っていたよ?」 |
翔 |
「俺はぁ、この学校に転校させられてきたのはぁ、UGNの実験施設から逃げてきたジャームだから、連れて来てくれって頼まれて来た」
|
紡 |
あ、あれ〜? |
翔 |
「まあアイツららしいんじゃねェの?
なんもかんも俺らにドロひっかけて、ツブそうとするところなんざなァ?
――まあそんなこたどうでもイイんだけどよ」 |
紡 |
とってもどうでも良くは聞こえない……
それは苦笑いを浮かべてごまかそうとする――のだけれど、ここでようやく記憶が繋がってくる。
「(……あれ?)」 |
GM |
あ、念のためにも再度言いますが、紡君はもう自由に演じて貰って大丈夫ですからね。
昔のことも何もかも、自由に表現して貰って構いません。 |
紡 |
はーい、では面影があるということで話を繋げてみよう。
「翔、この写真の少女と会ったこと無かったっけ?」 |
翔 |
「ない、全くない。
いや、この間……月見、っつったっけ? あの女の時にゃ会ったけど、それだけだ」 |
紡 |
「いや、もっと前の話」 |
翔 |
「ない。
……あったら苦労してねえよ」 |
GM |
――と思った翔の脳がズキリ、痛む。 |
――フラッシュバック。
笑い声。
たくさんの子供たちが遊んでいる。
|
GM |
一瞬だけフラッシュバックしては過るその記憶。
それは、やはりよく判らない記憶として翔の中でとけていく。 |
翔 |
頭を押さえて「――やっぱり、無い」 |
紡 |
「――本当に?」 |
翔 |
「本当に、無い」 |
紡 |
「(うーん……?)」
少し考えた振りをしてから「判った。じゃあUGN側の情報が入ったら、また会いに来るよ」 |
翔 |
「あ、待った。
行く前に携帯の番号くれ」 |
紡 |
「え?」
……と、一瞬何のことか判らなかったのだけれど、そっか、翔転校してきたばかりだものね。
「ああ、携帯携帯……」
ごそごそ、携帯電話を取り出すと、そのまま翔に手渡す。 |
翔 |
テメぇ、手渡すのかよ……。
「俺に登録しろってか?」 |
紡 |
「電話を、とることはできる」 |
翔 |
「あーあーあー……」
ったく。
んじゃ紡の携帯を操作して番号を確認した後、俺の携帯取り出しては番号入力。
ワン切りした後に紡に携帯を返す。 |
紡 |
「わかった、これに掛ける」 |
翔 |
「ああ」
じゃあこっちも登録――と。
ひとくぎりついたンならここで別れて、俺はファタ・モルガーナの行方をまた追うぞ。 |
紡 |
じゃあぼくは翔と別れてから、UGN支部の方に顔を出そう。 |
GM |
ではここでシーンを閉じましょう。 |
...Scene is end.
夕姫 |
(頭を抱えて)エグイ、エグイ……。 |
PC-γ |
何を言ってるの?
そのGMのシナリオがエグくないわけがないじゃないか。 |
夕姫 |
そうなのですけれど、それにしてもこのシナリオ……いったい何しでかしたの本当に私……。
も、もう追い詰まり過ぎて……何したらいいかわからない……っ。 |
翔 |
酒飲むのがまずいンじゃねえの? |
夕姫 |
いや、お酒飲まないとこれはロールが無理……。 |
ただいま幕間。
みんなして飲み物を取りにいったり休憩中です。
|
ジーク |
しかし、こちらは四十九院たちとも絡みに行かないといけないんだけれどな。 |
紡 |
ほんと、どうしようね。
初めの段階で完全に別れちゃったから、どう絡もうかな――って。 |
夕姫 |
ま、まあ、でもまだ自由行動1週目ですから。きっとどこかで合流できますよ。
……でもその前に、やらなくてはいけないシーンが多すぎる……。 |
紡 |
結局、翔の持ってる情報をもらわないと動きようなかったから、ぼくはもらいに行ったのだしね。 |
夕姫 |
とりあえず私ここからGM脳になります、夕姫がNPCって思ってないとやってられないっ……!
ほんっと、もう……何しでかしたの……? |
ジーク |
……何だか、ここまでオープニングから悶絶している夕姫のプレイヤーも珍しい、ね。 |
夕姫 |
自分にそれが演じ切れるか判らないだけですよっ。 |
いやぁ。
そんな難しいことを演技しろ、てわけではないですよ?
|
夕姫 |
えーっと、これから私はリートに恋愛ロールを仕掛けなくてはいけない感じですかねえ……? |
翔 |
あ、恋愛? |
夕姫 |
恋愛、とはちょっと違う――かな?
ちょっと、フラグを立てておかなくてはいけないのですよね。 |
現在の記憶復帰状態。
ジーク&翔&夕姫:思い出していない、紡君:思い出している。
まだ昔のことをきちんと思いだしているのは、紡君だけですね。
|
GM |
ちなみに記憶は、『思い出したい!』と言ってきっかけを演出したら思い出しても良いですよ。
その瞬間イベントが挟まり、思い出すことが出来ます。 |
ジーク |
え? 何を言っているんだGM。
私はクライマックスまで思い出す気はないのだが。 |
夕姫 |
それは、無理だと思います……。
私も正直、思い出したくはありませんがね。 |
Scene is start...
UGNが所有する病院、個室。
窓は開き、白いレースカーテンがさらりと風に揺れている。
月見夕菜はベッドの上で、静かに横たわっている。
|
ジーク |
こんこん。
個室の入り口から、控えめのノックの音が鳴る。 |
GM |
部屋の主からの返事は帰ってきません。 |
夕姫 |
夕菜さん、起きてはいるのでしょうか……? |
ジーク |
それはまだ判らない。
もう一度、控えめなノックをする。 |
GM |
よわよわしい声で「どうぞ」 |
――からり。
|
ジーク |
お見舞いの花と果物を持って、ドアをくぐり病室へと入る。 |
GM |
夕菜はジークの顔を見ると、顔をぱっと輝かせる。
「ジーク君……えっと、ジークさん……」 |
ジーク |
「どちらでも、呼びやすい方で良いよ。
とりあえず、入院したって聞いたから、お見舞いに」 |
月見 |
「うん、ごめんね?
私もちょっと、何があったのかよくわからないのだけれど……」 |
ジーク |
誰に聞いても、UGNの人にも良く判っていないのだったな。 |
GM |
表向きには『事故があった』ということになっていますね。 |
ジーク |
「ともあれ、生きていて良かった」
夕菜のベッドの隣に置かれた小さな机にある花瓶、それに花を生け、お見舞いの果物を置く。
備えつけの椅子をベッドの隣へと持って来ては座り「――少しは、落ち着いたか?」 |
GM |
ジークが問い掛けると、夕菜はおずおずと遠慮がちに話し始めます。 |
月見 |
「ねえ、ジーク。
私さ、いろんなことに詳しいからさ、今まで……いろんなこと、知ったつもりでいたんだけどさ。
もしかして――あれって、そういうことなの?」 |
ジーク |
「そういうこと?」 |
月見 |
「だ、だってさ?
日常の裏側で超能力者が戦ってるだなんて、そんな事……ふつう、信じないじゃない」 |
ジーク |
「信じないね」 |
月見 |
「私、嘘だと思ってたの。誰かの作り話だって思ってたの。
――ほんとうなの?
ってごめん、こんな話ジークに言ったって、わからないよね」 |
ジーク |
少しだけ間を置き、それからゆっくりと口を開く。
「私は良く判らないけれど、またそういう世界を信じるならば、それもいいんじゃないか?」 |
月見 |
「私、よくわからないや。バカだから」
軽く、困惑したのを無理に覆うような、そんな笑みを浮かべる。 |
ジーク |
「とりあえずはゆっくり体を治して。でないと――」
困ったように笑う。
「けっこう君に引っ張られてばかりだったから、また私はぼうっとしすぎるかもしれない」
実際、私は結構ぼうっとしているから、普段から彼女の力に引っ張られてるところが多いんだ。 |
月見 |
「あーあ、しばらく学校いけないのかぁ……。
ジーク、ほんと気をつけなきゃだめだよ?」 |
ジーク |
「何を?」 |
月見 |
「ジーク狙ってるコ、ほんと多いんだからねー?」 |
夕姫 |
……。
”狙ってる、コ”? リートは女性なのですよ?
女子高ですか、ここは。 |
翔 |
いちお〜、共学だった、よな……。 |
ジーク |
「私はそういう趣味はないんだけれどな」
こんな雑談をしながら、こっそり支部長に『ファタ・モルガーナの情報をどれだけ掴んでいるか』をメールで聞いてみる。 |
――ぴろりん。
メールが1通、入っています。
|
ジーク |
「ちょっとごめんね」
夕菜に断りを入れて、携帯のメールを開かせてもらいます。[情報:UGN]で情報判定。
――クリティカル、19。 |
GM |
今度はUGNで調べましたね。 |
◆ファタ・モルガーナについて(ByUGN)
支部長から聞いた情報がそのまま、進展は無し。
(裏社会とは違い『ファタ・モルガーナはファルスハーツが放ったジャームである』ということのみ)
ファタ・モルガーナによる被害は、この街では夕菜が襲われた件だけ。
この街以外ではまだ調査中。
|
ジーク |
こちらでは変わり映えがしない、し、被害もまだ彼女だけ……。 |
GM |
もう一回言うけれども、 このシナリオは情報項目には何のゲーム的関連はないですからね? |
ジーク |
うーん……。 |
夕姫 |
動きに迷っているようでしたら、登場しても宜しいでしょうか? |
ジーク |
あ、うん、構わない。 |
夕姫 |
(ころころ)……ああ、もう侵蝕率が70近い……なんで10……。 |
翔 |
おいおい、まだミドル2週目だぞ。
テメェら一体現在侵蝕率、いくつなんだよ? |
ジーク |
私は47。 |
翔 |
俺は39。紡はさっき62つってたよな。
なんでこんなに差があるんだ? |
GM |
高い2人はウロボロス・シンドローム、ですからねえ。
それはもう、仕方がない。 |
ウロボロス・シンドロームは初期侵蝕率・侵蝕値共に高くなりやすい傾向があります。
実際4人の初期侵蝕率はジーク:33、翔:34、夕姫:46、紡:49。
ウロボロスか否かで大きく差がでてます。
|
GM |
もっとも夕姫の場合は登場侵蝕ダイスで高い目を振り過ぎが原因ですが。 |
夕姫 |
追い詰まり具合に比例して上がっているようですよ、本当に、もう……。 |
GM |
ともかく。
さあ、どんどん好きなシーンを演出していってください。 |
夕姫 |
すみませんがジーク、夕菜さんの病室から出てもらえませんでしょうか?
|
ジーク |
ではひとしきり雑談した後「じゃあ、近いうち来るからお大事にね」と病室を後にしよう。 |
からり――。
|
夕姫 |
病室を出ると、うつむいた夕姫がリートの前に立っています。
「リート、少し良いですか?」 |
ジーク |
「どうした夕姫、顔色が優れないようだが」 |
夕姫 |
「ちょっと、話したいことがあるだけです」
そういってしばらく沈黙し思い悩みながらも、少しずつ言葉を紡ぎます。
「私たち、コンビを組んだのはいつでしたでしょうか?」 |
ジーク |
「私たちが?
私が日本に来てからだったな。だから確か……4年か5年か、そのくらい」 |
夕姫 |
「それまでのこと、全部覚えていますか?」 |
ジーク |
「全部は覚えていないな。ところどころ記憶は忘れていることもあるさ」
さすがに子供のときのこと、その全てまでは事細かくは覚えてないからな。 |
夕姫 |
「……ごめんなさい、唐突に。
でも、判らないんです。あのジャームが、私に言った言葉……」 |
ジーク |
「何か、言ったのか?」 |
夕姫 |
「“裏切り者”って――そう、いいました。
ですが私は、あのジャームのことなんて、覚えていません。
でも……不安になるんです。あのジャームを見ていると、私が、私じゃなくなるような気がして……」 |
ジーク |
「君じゃなくなる?」 |
夕姫 |
「ごめんなさい。
侵蝕、上がっているかもしれません」 |
翔 |
この女、そ〜と〜テンパってんな。
わりと言葉が支離滅裂だ。 |
夕姫 |
「やくそく、して、もらえませんか?」 |
ジーク |
「ん?」 |
夕姫 |
「もし、私が自分の衝動を抑えられなくなったら、あなたが私を殺してくれる、って」 |
ジーク |
「……。
前から思っていたのだけれど、そんなに自分を追い詰めるのは良くないよ」 |
夕姫 |
「そういうのじゃありません、嫌なんです。私が――私じゃなくなっていくのが」 |
ジーク |
「でも」 |
夕姫 |
「お願いします、こんなの頼めるのはリートしかいないから」 |
ジーク |
「わかった。
ただ、私は夕姫が衝動に飲まれないように支えられたらいいなって思うよ」 |
夕姫 |
「ごめんなさい急に。
そんなつもりじゃないのですけれど」 |
ジーク |
「たしかにそういうことってあるよね、デ・ジャヴ――だった、かな」 |
夕姫 |
「対したことでは、ないと思うのですけれど……」 |
GM |
あなたたち、ファタ・モルガーナについて何も覚えていないわけではないのですよ?
彼女と対峙すると必ずフラッシュバックが起きてますよね。 |
夕姫 |
判ってますよ?! |
ジーク |
だからデ・ジャヴみたいなもの、というのだけれどね。 |
夕姫 |
ですから私は、こう言わなくてはいけないのです。
「リート、私たちはずっとコンビを組んでいられますよね?」 |
ジーク |
「ああ。私にとって、君は一番のパートナーだ」
嘘いつわり一片もなく、本心から、夕姫へそう返します。 |
夕姫 |
「ありがとうございます。
では、煩わせてしまって済みません。ファタ・モルガーナを探しましょう」 |
ジーク |
一瞬の間をおいた後、夕姫に静かにこう告げる。
「“出来れば”で良いのだけれど、パートナーなんだ。
だから、あんまり気を回し過ぎ無くても良いんだよ」 |
夕姫 |
「なら、私は大丈夫です」
そう言って、ここから歩き去りましょう。 |
...Scene is end.
Scene is start...
UGN支部長室。
阿東頼子はデスクに座り、書類を整理している。
|
GM |
どうやら、ちょうど書類にサインをし終わったところですね。
彼女は顔を上げ、夕姫に向かい柔らかな微笑みを浮かべる。
「あら、夕姫。来てたのですね」 |
夕姫 |
「はい。ちょっとUGNにのことで知りたいことがありまして」 |
阿東 |
「UGNに?」 |
夕姫 |
「あ、はい。
データを調べても全然わからなかったので、もしかしたら支部長なら知っているかもと思いまして」
ここでほんの少し間を空け、そしておずおずと切りだします。
「三坂……仁義さんと言う方、ご存知ですか?」 |
阿東 |
その瞬間。
今まで柔らかく微笑んでいた阿東の笑みが、一瞬凍りついたかのような印象を受けます。
彼女は雰囲気の変わった笑顔のままで「知らないわ」、そう即答します。 |
夕姫 |
……え?
「そ、そうですか……。
あの、三坂仁義という男に、忠告をされました。私は、ファタ・モルガーナに関わってはダメだ、と」 |
阿東 |
「……」 |
夕姫 |
「あの男は何者か判らないのですけれど、全部が全部嘘とは思えませんでした」 |
阿東 |
「……」 |
GM |
重苦しい雰囲気が支部長室を満たしてしばらく、阿東が言葉を紡ぎ始めます。
「――それで、三坂仁義という男の話を聞いて、貴方はどう感じたのですか?」 |
夕姫 |
「こわかった、です。
あの男を話していると、自分の足元が崩れていくような感じがして……」 |
阿東 |
「夕姫。
貴方は、そんな事を考えなくても良いのですよ。
そんな、誰とも知らないような、よくわからない男の言葉なんて、気にする必要はないの」
包容力のある声。まるで怖がる子供をあやすような、そして諭すような言葉。 |
夕姫 |
「ですがあの男は、私の“愚者の黄金” を知っていました。それに――私の手の内も知っていた。
あの男はただものとは思えません」 |
阿東 |
「判りました。その三坂仁義という男については、此方で調べておきましょう。
大丈夫、私が貴方を護ってあげるから」 |
夕姫 |
「あ……ありがとうございます。
その、報告はこれだけです」 |
阿東 |
「そうですか」
そういうと、夕姫に柔らかく包み込んでくれるような微笑みを浮かべます。
「だいじょうぶ、心配しなくても大丈夫。貴方ならできます」 |
夕姫 |
「あ、それと、私の潜入している学校に転入生が来ました」 |
阿東 |
「転入生?」 |
夕姫 |
「寺崎朝海という方と、桐生翔という男性です。
寺崎さんの方は良くわかりませんが、あの桐生翔という男――多分、オーヴァードです」 |
GM |
夕姫が寺崎朝海と桐生翔という言葉を出した瞬間、阿東の笑みの向こうで奥歯をギリっと噛みしめる音が聞こえます。
笑みこそ崩していませんが、今まで包容力のある微笑みだったのが張りついた能面のような笑みへと変わってます。 |
夕姫 |
ひっ……。
「そ、それでは、失礼します」 |
阿東 |
「ええ、がんばって」 |
夕姫 |
いつもは色々と夕姫の事を気遣い心配してくれる阿東頼子。
ですが今回は声のトーンすらも違う、淡泊で素っ気ない一言でした。 |
...Scene is end.
Scene is start...
薄暗いナイト・パブ、その一角――
|
翔 |
けったるそうな言葉と共に、塩見徹朗に会いに行く。
「うぃーっす、今だいじょうぶっすか?」 |
GM |
翔に気づくと少し間延びしたものの、仲間内相手の砕けた様子で応対します。
「ん、何? 何か俺に用?」 |
翔 |
「アンタ、確か情報収集すんのは得意でしたよね」 |
塩見 |
「ああ、情報操作は得意だよ」 |
翔 |
「操作じゃなくて収集。まあ操作もなんすけど――」
とりあえずいったん息をついてから、要件を口にする。
「標的を調べてる最中に、青年の方は見つけたンすよね。
そんときに、こんなモンを手に入れましてね」
懐からすっと遺体安置室で手に入れたデータカードを取りだして、塩見に渡す。 |
GM |
「んー?」
彼は翔からデータカードを受け取って、端末に差し込み読み始めます。
「No.EX21002、ロストエデン……?」 |
翔 |
「――標的も、実験体でしたよね。
このデータもガセかも知れないンすが、どんな実験をしていたのか・どんな連中なのか、そっちでもあたれますか?」 |
GM |
「はあ、はあ、はあ……なるほどねえ……」
塩見はしばらくデータカードの内容を見ては、何ごとかを把握したかのように声を漏らす。
「で、君はこの情報を調べて何をしようというんだい?」 |
翔 |
「標的を調べるのは普通じゃねえっすか? 今の俺らはコイツらの居場所すら判らねえンすよ?
関する資料があるならば洗って、手に入れるべきじゃねえっすか――標的を連れて来るにしても、殺すにも」 |
塩見 |
「いやぁこの資料は君が調べる必要はないね。
これは、研究に関する資料だ。君が調べるべきはこれじゃない。
君が調べるべきは、ファタ・モルガーナの居場所と、あの男たちの居どころだ」
若干スローペースになった言葉にこもるのは、悪意と有無を言わさぬ何か。 |
翔 |
「それは今調べてるところっす」 |
塩見 |
「この情報は、君が気にする必要性はないよ。
存分にこんなものは気にせず、戦いたまえ」
言葉こそまっとうだが、彼の言い回しにも様子にも、いやらしい含みが垣間見える。 |
翔 |
「はあ……そうっすか、“了解しました”」
塩見の様子に対しては、とげある形で表面的には了解の意を返しとく。
怪訝な顔を浮かべては「じゃあ逆に、ファタ・モルガーナの居場所は当たれますか?」と茶番な問いと行きましょう。
|
塩見 |
「そうだなあ、それが当たれれば君のような人間を呼んでくる必要性はないんだけどねえ」 |
翔 |
「まあそうなんすけどねえ?
――やっぱり足で当たるしかないか」 |
塩見 |
「まぁでも意外とどこかしらにいるもんかもしれないじゃないか」 |
翔 |
「女がこの恰好でふらふらしてるとは思わないンすけどね。
それこそ、男か研究者でも探した方がイイっすかねぇ?」 |
塩見 |
「そうだなぁ。
僕はこの辺りのことはよくわからないけれど、足で捜して見つからないってことはないだろう。この街はそんなに広くはない。
それに、相手はオーヴァードだ。力を使えばひずみが出る」 |
翔 |
情報を渡すっつー用件だけは終わったしおぼろげとはいえつかみもした、茶番劇はここまでだな。
「じゃあ」とひとこと言っては後にする。
そして「(こっちのが目立つんだろうな)」と、今度は研究者の方を探します。 |
GM |
“研究者の男の居どころ”、ですね?
それは好きな情報で判定してください。 |
翔 |
[情報:裏社会]
FHは塩見のあの様子じゃ当たるだけムダ。
UGNは文字通り話にならないってなると俺の当たれる手段はこれしかない。
――18。 |
◆研究者(三坂仁義)の居どころ(By裏社会)
H市の裏通りを行った先にある、建物の中に出入りしている部屋があるようだ。
|
翔 |
うっし。
ンじゃとりあえずは忍び込んでみるか。 |
GM |
ここでシーンを切りましょうか。 |
...Scene is end.