Scene is start...
UGN支部、神居の部屋――の前の廊下。
中では治療を終えた神居が、普段では絶対にありえない程静かな状態で眠っている。
ベッドの傍には白百合が深刻そうな面持ちで、甲斐甲斐しく彼の看病をしている。
そんな部屋の、扉前。
伊弉としぶちょーが話をしている……。
|
伊弉 |
「私が着いた時点ではカクカクシカジカな状態でした」 |
しぶちょ |
「コレコレウマウマ、というわけだにゃ」 |
伊弉 |
「残りはそれこそ、あのバカに頭から聞くしかないのですが」 |
GM |
いや、いや、いやいやいやいや?!
流石に生死の境彷徨ってる相棒に<エグザイル>で神経ジャックして頭から聞こうとするのは止めてやってくれーっ!? |
しぶちょ |
「そうだねえ。
とりあえず今かみやんは危ない状態だと思うしぃ、ヘタに触んない方がイイと思うからぁ〜♪
頭サワるのは止めてねぇ♪」 |
伊弉 |
「……まあ、触るとしたら起きた時にコレで張り倒します」
握る手の中にはお約束のハリセンひとつ。 |
しぶちょ |
「そだね〜その位はやっても良いかにゃ♪」 |
伊弉 |
「まあ、そんな事は置いておいて」 |
しぶちょ |
「“これからどうするか”ってことなんだけ、どもっ。
不思議なところはさ、かみやんボロボロなんだけどさっ。
FHの連中、た〜ぶんアレに襲われたって考えられるんだけどさっ、その割には連れてかれてないんだよねぇ〜?」 |
GM |
アレってか“トイフェル”春日部恭二郎な。 |
しぶちょ |
判ってるにゃよGMぅ。 |
伊弉 |
「私が着いた時には既に気絶していました」 |
しぶちょ |
「周りのビル崩壊してたんでしょぉ?
てことはぁ、かみやんは“トイフェル”と間違いなくやりあってぇ、その影響でビルが壊れた筈なんだけどぉ……」 |
伊弉 |
「あれだけカムイをボロボロに出来たら、普通持って行きますよね」 |
しぶちょ |
「持って行くよねぇ〜?
だってアソコから逃げることはできるんだしぃ、それなりの実力はあるはずにゃんだけどね〜?」 |
伊弉 |
「それを覆しても置いていかざるを得なかったってこと。
――逆にカムイの奴襲いましたかね? 無意識に」 |
しぶちょ |
「ん〜ん、でもね?
レネゲイドの暴走って言うのはね? 目的があるわけではないからほっとけば収まるはずなのにゃ。
別に“トイフェル”はさっ、ボク達Y市支部の面々がかみやんの応援に来ても大丈夫な位に地盤を整えてきてる筈なのにゃ」 |
伊弉 |
「まあ、これだけやっていれば、そうですよね」 |
しぶちょ |
「と、考えるならばっ。
キョーちゃん的にいえば“プランが自動的に修正された”タイミングになるわけにぇ?
ということはぁ、うちらにチャンスな状況かもしれないの♪」 |
伊弉 |
「確かに」 |
|
伊弉 |
「とはいえど打って出るにはまだまだ無理ですし……」 |
しぶちょ |
「まだまだ無理って言ってもボクらが出来ることって大したことがないのよねん♪」 |
伊弉 |
「調べる位ですよね、正直言ってしまえば」 |
しぶちょ |
「とりあえずぅ、今『アイツがいるところ』と『アイツがどうなっているか』を調べるべきなのか、それとも今すぐ打って出るべきなのかどっちかを選択するべきにゃのよ」 |
伊弉 |
「今すぐは無理です。
アレを速攻で起こせるなら兎も角」
扉の方に視線を向けます。 |
しぶちょ |
「んっとねえ、起こせるけどね〜え?身体にだぁいぶ無理が掛かるんだよね〜?」
ボクが≪ヨモツヘグリ≫を使えばあの状態のかみやんでも起こすコトはカンタンなんだけど、ボクは6、受けるかみやんに至っては2D10も侵蝕率が上がってしまうのにゃ〜。
2D10の侵蝕率上昇は半端じゃないにゃーよ―? |
伊弉 |
「まー……あ……。
支部長的に無理してまで撃って出る必要はあると思いますか?
それをするかどうかはともかくとして、まず調べてしまえば良いと私は思います」 |
しぶちょ |
「まっ、調べる前に霧の字に報告ね♪」
そういって支部長室にトコトコ戻っていくにゃん。 |
伊弉 |
では私も、支部長を抱いて一緒に向かいましょう。 |
しぶちょ |
おねがいするにゃ〜ん。 |
伊弉 |
いつも通り、鍋の中に入れて抱えて向かいましょう。 |
しぶちょ |
煮るのだけはやめてにゃーん?! |
とこ、とこ、とこ……
支部長と伊弉が支部長室に向かい扉の前から去ったころ。
その件の扉の先、部屋の中ではようやく神居の意識が戻る。
|
白百合 |
「神居君?!」 |
神居 |
ぱっと起きる。
暫く呼吸を整え、きょろきょろと周りを見渡す。 |
白百合 |
「良かったあ……」
心底安心したように、ほっと胸をなでおろします。
「大丈夫? 痛いところない?」 |
神居 |
「……ここは?」 |
白百合 |
「ここは大丈夫、私たちの支部だから。本当に良かった……」
ぽろぽろと泣き始めます。 |
神居 |
「あー……」凄い気まずそう。 |
2人 |
「「ごめん」」 |
GM |
ハモったな。 |
神居 |
「……ん?」
きょとんとした顔、『何かあったっけ?』という顔で白百合さんの顔を見る。 |
白百合 |
「だって、神居君が大変な時に私……私たち、力になれなくて……」 |
神居 |
「ごめんそれ大体俺のせい。
まさか……あんなのに掛かるとは……思ってなかった」 |
しぶちょ |
ブラフ撒いておいて無茶を言うにゃー?! |
神居 |
「ほら益須さん達が行くと多分殺られちゃうと思って張ってたんだけどさ」 |
酷いなそれは。
|
神居 |
「まあまあ、心配していってくれたんだろ? アリガト」
ボロボロなんだけど笑顔を見せてお礼を言っては立ちあがる。
立ち上がった瞬間、クラッとくる。 |
白百合 |
「神居君?!」
びっくりして起き上がって肩を支えます。
「どうしたの? どこにいくの?」 |
神居 |
「ごめん大丈夫、大丈夫だから」
支えてもらった身体を離してから「ちょっと……調べ物?」 |
白百合 |
その言葉に少し怪訝そうな顔をします。
「あの……あんまり、無理はしないでね?
神居君身体中傷だらけで、お医者様も絶対安静って言ってたから……」 |
神居 |
「んー……?
オーヴァードで“絶対安静”って聞かない話だけどね」
自分のことではないかのように呟いてから「ま、少し調べ物してから寝るよ♪」 |
白百合 |
「む、無理はしないでね……」 |
神居 |
では白百合さんの方に少し近づいてから、頭をポンと叩く。
「心配してくれてありがと」
そして部屋から出ていきます。 |
白百合 |
去っていく神居君の後姿を見、安堵とも不安ともつかないため息をつきます。 |
神居 |
「さて、あの力の秘密を暴かないとな――」
こう呟いては支部長室とは反対の方向、資料室へとよろよろと向かいます。 |
しぶちょ |
資料室?
ていうかぁ、起きたことをボクに報告しないのかにゃ、かみやん? |
神居 |
俺はひと段落つくまで自分から報告するつもりはない。 |
しぶちょ |
こ、こにょっ……!? |
伊弉 |
……霧谷さんに報告後、カムイの様子見に行って、聞いてきますから……。 |
GM |
あ。言い忘れてたけど情報収集判定とかしたい人はしても良いよ。 |
神居 |
“春日部恭二郎の障壁について” |
GM |
それは調べることはできる――が答えは出てこない、情報不明・原因不明。 |
神居 |
では資料室で調べるのだけど、答えは見つからずに呻いてる。
「あー、見つからねえなあ……」 |
GM |
ぶっちゃけるとオリジナルDロイスとかEエフェクトとかと思って貰えばいいかな。
セッション進めば看破する場面あるのでそこまで待っててくれ。 |
神居 |
メタな話が俺に判るわけがない。
なので資料室で必死こいて調べ続ける。 |
そりゃそうだわな。
じゃあ資料室で呻いてる神居は放置して、伊弉&支部長サイドに視点を戻そうか。
|
しぶちょ |
とりあえずぅ、ホワイトハンドにかみやんを治療して貰ったのでぇ、『かみやんの今の状態』については調べられるかにゃGMぅ? |
GM |
どうぞ、それはちゃんとあるよ。 |
しぶちょ |
ホワイトハンドの人はUGNの人、だから[情報:UGN]で調べるにゃ。
UGN幹部も併用して(ころころ)達成値:23! |
GM |
その達成値はどこからでも出るな?!
では支部長室に向かう2人へ、ホワイトハンドの方々が駆け寄ります。
「支部長、報告があります」 |
しぶちょ |
霧の字に報告に行く途中だったんだよにゃー……
「イサナちゃん報告しておいてくれるぅ? こっちの報告、ボクが受けておくにゃー」 |
いさな |
「では後でお願いします」
そう言って先に支部長室に向かいます。 |
GM |
伊弉は別れて先に支部長室ね。
ではしぶちょーにホワイトハンドの方が説明してくれます。 |
◆神居の状態
神居の中に眠る<賢者の石>、そして正体不明の能力が“トイフェル”が持つであろう<賢者の石>とが共鳴反応を起こし、神居が制御できる限界を超えたと予測される。
実際、神居は一時的な暴走状態となった様子。
|
しぶちょ |
「つまりぃ、かみやんの中に眠っているアンノウンシンドロームと2つの<賢者の石>が反応したことでビルが吹っ飛んじゃった――でいいのかしらん?」
|
GM |
「――であると、我々のところからは推測されます。
ただ、今まではそのアンノウンシンドローム、そして<賢者の石>の力を彼は暴走させずに抑え込んできました。
今回の件も“たまたまこうなっただけである”とは、思いたいのですが……」 |
しぶちょ |
「でもにぇ、<賢者の石>ってのはそうそうあるものじゃなくってねぇ?
2つぶつかった例もボクも今んところ聞いたことがないのねぇ?
そうなると春日部の方もタダじゃ済んでないんじゃないっかな〜……?」 |
GM |
「……どうでしょう……。
その情報に関しては我々の方には特には……」 |
しぶちょ |
「ごめんねっ、ホワイトハンドの人にそんなこと聞いちゃって♪」 |
GM |
「済みません……」 |
しぶちょ |
「アリガトッ、イイ情報だったよ♪」といって、支部長室に向かうのにゃ。 |
支部長室、通信用スクリーンには霧谷が映っている。
一足先についていた伊弉は簡易的にここまでの一連の報告をしている――。
|
しぶちょ |
イサナちゃんの報告中にボクも現れて、さっき貰った情報と同じことを報告するにゃ。 |
霧谷 |
「……成る程、彼が無事であったことは何よりです。
次の手を私としても用意しているのですが……全て“トイフェル”の手によって妨害されてしまっています。
申し訳有りませんがもう少しだけ待っていてください……」 |
しぶちょ |
「状況が切迫していて待てないからにゃー。
そのうち結果が付くと思うけど、どっちに転んでも文句は言わないでよ、霧ちゃん?」 |
霧谷 |
「……はい……ですが……何とか頑張っていただけると私は信じています……」 |
しぶちょ |
「UGNの人間としてそこら辺は判っているけれどぉ――あ、ちょっと待って?
イサナちゃん今ちょっと席外してくれるかにゃ?」 |
伊弉 |
「判りました。
ではちょっとアレの様子を見てきます」 |
しぶちょ |
「いってらっしゃーい」 |
――パタン。
|
しぶちょ |
イサナちゃんが去った後、居住まいを改めるのにゃ。
「霧の字さ、上からの命令って――聞いてる?」 |
霧谷 |
「……」 |
GM |
聞いてるなきっとこいつは、な感じで沈黙を保ちます。 |
しぶちょ |
「それでさっ、しょ〜じきね? 知ってるって前提でね? どっちにしようかスゴく迷ってるところなんだけどぉ〜?」 |
霧谷 |
「……」 |
しぶちょ |
「やっぱりね? この状態でね?
ボクとしても霧の字にこういうことをいうのはしょ〜じき厳しぃんだけどぉ、 彼が居ないとた〜ぶん勝てないんだよね〜♪」 |
霧谷 |
「……ええ」 |
しぶちょ |
「で、逆に“もう一つの方法”を取ろうとするとねっ、春日部の方が今どうなっているか判らないとしょ〜じき手を出せないのっ。
そっちもズイブン混乱していると思うんだけどぉ、とりあえず上の方にはボクが『第2案の方で賛成した』って伝えておいてもらえると嬉しいかにゃ♪」 |
霧谷 |
「判りました、『第2案で賛成した』ですね。
頼みますよ」 |
しぶちょ |
「りょ〜か〜い」といってプチっと通信を切るにゃ。 |
...Scene is end.
Scene is start...
伊弉が神居の病室に行くと、そこにはおろおろしている益須寅蔵が一人。
|
伊弉
|
「……どこ行きました? 彼」 |
益須 |
「えーっと、目撃証言だけ聞きますと……資料室の方に向かっていたと……」 |
伊弉 |
「判りました、では行ってきます」
一礼をしてから資料室へ向かいましょう。 |
In、資料室。
|
伊弉 |
「(さーってと、結構広いんだよな……)」
そんな事を思いながら、司書さんすら居ない資料室を探しましょうか。 |
GM |
誰もいない資料室をうろうろと。 |
伊弉 |
耳を澄ませて探します。アレは騒がしいから騒いでるだろう、と。 |
神居 |
あー……ザンネンながら今回は静かなんだ。 |
GM |
おや? 今回は黙々とやってるんか。 |
神居 |
そう、今回は黙々とやってる。
のだけど……調べ出してから時間が結構経っている上に体力使っちゃってんだよね。
ボコされて消耗した体力も戻って無くてさ―― |
伊弉 |
つまり? |
おや?
耳を澄ませていると、どこからか寝息が……。
|
神居 |
「ZzzZzzZzz」
山積みの色んな資料が散乱する机の上で、疲れ果てたように突っ伏して眠ってる。 |
伊弉 |
「……。
落ちてた」 |
GM |
そんな“床に落っこちてた”的に言わなくても?! |
伊弉 |
とりあえず起こす前に資料を見てみますが、カムイ、どんなものを調べてた? |
神居 |
俺は春日部との戦いから、エフェクトに対して無効化する障壁が張られていそうだと判断した。
ので、春日部の過去の戦闘資料や色んな事例から対エフェクト用のエフェクト、いわゆる“無効化”の項目に絞ったエフェクトを調べてる。 |
伊弉 |
「(ふーん……)」
軽く資料に目を通してから、首のあたりをトントン、トントン。
「資料室は仮眠室じゃない。起きろ、カムイ起きろ」 |
神居 |
まだ寝てます。 |
伊弉 |
トントン、トントン。 |
神居 |
寝ぼけた感じで「後5分……」といって、また寝る。 |
白百合 |
これは神居君、伊弉さんにハリセンを落とされる…… |
GM |
フリだろうねどうみても。
でも資料室は大きい音を立てていい場所じゃないんだけどね、へへへ。 |
伊弉 |
ったく……。
向こう脛を思い切り蹴っ飛ばす。 |
ゴス!
|
神居 |
「……〜っ?!」
暫く悶絶して「……やられた」バタ。 |
伊弉 |
カムイのこめかみを両拳で挟んでぐりぐりぐり。「お・き・ろ」 |
神居 |
「イタイイタイイタイイタイ」 |
これは酷い、扱いが酷い。本当にヒロインかPC2?
まあPC1の神居がヒーロー兼ヒロインだしなあ……で済むのかこの扱い。
|
伊弉 |
「起きた?」 |
神居 |
「……おはよう」 |
伊弉 |
「お早う。
とりあえずここは仮眠室じゃないんだけれど……それはそれとして。
もう大分回復したの? そんなワケ無いよねこんなところで眠っているだなんて」 |
神居 |
ふああ、と大欠伸を一つ。
「いや〜大分動けると思ったんだけど、頭使うのやっぱキツいわ。流石キュマ筋」 |
伊弉 |
「自分で言ってりゃ世話が無いと思わない?」 |
キュマイラは常人離れした筋力を持つシンドローム、反面頭使うのは不得手君。
ヘタをしたら脳まで筋肉、だから略してキュマ筋さっ♪
|
伊弉 |
「とりあえず、あの時何が・どんなことがあったか教えて?
報告という側面もあるけれど、調べるならば私が手伝った方が早いでしょ?」 |
神居 |
「まあ……ねー……」 |
GM |
めちゃくちゃ気まずそうだな。 |
神居 |
あー……。
俺は<賢者の石>持ちの上に、周りとは違う変なエフェクト使えるんだよ。
でもって“WIRD CARD”って呼ばれる位、周りから期待されてる……。 |
GM |
まあ、そうだな。 |
神居 |
で、ある以上、俺は『他のエージェントに頼っちゃいけない』っていう意識が強いんだ。
例えしぶちょーや白百合さんであっても『ヨロシクちゃん☆ミ』って自分から頼まない方が良いんじゃないかって思ってて、さ……。
ほら、自分目当てに向かってきた面倒相手は自分で処理するべきだし、さ?
どっから話したモンかなあ……と。 |
伊弉 |
「……。
『起きたことを私は知りたい』、そう言って、聞ける?」 |
神居 |
「春日部と会ってぼこられたっ、ムリムリっ」 |
伊弉 |
うわ、かっる―……。 |
GM |
ぅぉぃ。
ついさっきまでの悩みと気まずさ言いづらさはどこ行った?! |
神居 |
「さっすがにね、ちょーっとキツかったわ。
なんだけどさ、なんだけどさ……なんだろうな、良くあるじゃん?『暴走』って」 |
伊弉 |
「いや、話が飛んでるんだけど……」 |
神居 |
「それが今までにない位強いのが起きてさ、次に起きたら病室だったわけよ。
その間何があったかは、俺も判らない。
確かに春日部の一撃を受けて――多分オチたんだと思うんだけどさ――気づいたら病室だった」 |
伊弉 |
カムイの言葉を聞いて思案する。思案のさなか沈黙が場を支配する。
「……戦闘をしたというのは判っているんだ。
私が着いた時にはビルは粉々・周りもボロボロだったのだけれど、ビルを壊したのは暴走する“前”? それとも“後”?」 |
神居 |
「春日部と戦ったのは廃ビルの3階位で、そこから落ちてその後も戦って負けた、のまでは覚えてる。
でも俺が知る限りだとビルの3階がぶっ壊れた位じゃないの?
他は何ともなって無いんじゃないかな」 |
伊弉 |
「その3階が壊れたビルの向かいのビルもスクラップだった。なので何があったかを聞きに来た。
実際に戦って、カムイをボロボロに出来たのにさらわなかったのは可笑しいでしょう? 狙っていたカード1枚奪える状況だったのに。
なんで春日部は、そのカードを置いて逃げたの?」 |
神居 |
GM、俺はその時のことをどこまで覚えてて良い? |
GM |
自由です、任せます。 |
神居 |
OK、じゃあ俺ははっきりとそのことを余り覚えてないと明言する。
暴走状態に入った時は記憶が飛んでいるんだ。
「ただ、奴の一撃凄かったんだよなー……」
そう言いながら資料のキュマイラの項をぺらぺらとめくって≪神獣撃≫の項を指差す。
「獣化した奴の限界を振り切るとさ、獣化って解けるわけよ。
でもアイツ、あんまり力入れて無かったと思ったんだけどなあ……?」 |
伊弉 |
「……?」 |
神居 |
メタ的になるけど解説入れるよ、GMちょっと説明ジャックします。 |
GM |
お好きにどうぞ。 |
キュマイラには≪神獣撃≫て言うエフェクトがあります。
これは≪完全獣化≫という肉体を完全な戦闘形態へと換えるエフェクトを使用しているときのみに使えるエフェクト。
≪神獣撃≫を使うと、物凄いダメージを相手に与えることのできる一撃を繰り出せます。
……が、最大限かつ限界を超えての力の為、≪神獣撃≫を使ってしまうとその後≪完全獣化≫は解けてしまいます。
神居は≪神獣撃≫を春日部が使ったそぶりは無いのに≪完全獣化≫が解けたといってます。
言い換えれば溜めこんだエネルギーを放つ行動も素振りも見せていないのに、なぜかチャージがキャンセルされた――と語ってます。
さて、その溜めこんでいた筈のエネルギーは一体どこに行ったんだろうね?
|
GM |
メタ的に言えば神居が喰っちゃったんだけどね、そのエネルギー自体。 |
神居 |
だが喰ったということの自覚が俺にはない。 |
伊弉 |
そしてエネルギーを喰らうという力自体を私は知らない。
訝しげな顔をして「……まあ、判らないものは調べるしかないよね……」とどこともなく呟く。 |
神居 |
「あとさ?
それから奴さ、そこの資料にあるようなエフェクトを弾くような力を使ってくるんだけどさ。
あれは何なんだろうな―……」
と言いながら、また座ってたふかふかのソファーに沈んで目を閉じる。 |
伊弉 |
ペンペン、ペンペン。
「寝るんだったら病室、もしくは自分の部屋!」 |
神居 |
「判った判った。悪ぃ、寝る」
ソファーから立ち上がって、ふらふらと出口の方へと歩いていく。 |
伊弉 |
とりあえず、せめて部屋までは送って行こうか。 |
神居 |
「だいじょぶだいじょぶっ」
軽口を叩いているのだけれど、良く見ると足を引きづっている。 |
伊弉 |
「……」
人が支えるように、カムイの肩を支えます。 |
神居 |
「だいじょうぶだいじょぶっ」 |
伊弉 |
「身体が『大丈夫』って言ってないよ」 |
...Scene is end.
Scene is start...
UGN支部、神居の部屋の前。
伊弉は神居を部屋まで送っては、ベッドに眠らせ休ませる。
終わった後に部屋を出ようとドアを開けると、足元にはちょこんと座っているしぶちょーの姿。
|
伊弉 |
「あら支部長」
会釈をしながらカムイの部屋のドアを閉じる。
「とりあえず、アレは寝ました」 |
しぶちょ |
「寝たのね〜」 |
伊弉 |
「“多分”って、つけますけど」 |
しぶちょ |
「窓の鍵って確認したぁ?」 |
伊弉 |
「一応確認してきましたよ」 |
中から掛かってるね。
|
神居 |
内側からね。 |
しぶちょ |
「鍵、溶接しておいた方がいいかもにぇ〜?
また行きそうなら今度は流石にボクは止めるけどさ〜あ」 |
伊弉 |
「もう一回言ったら死にに行くようなものですよね、既に一回死に掛かってるのですし」 |
しぶちょ |
「まあ、そうなんだけどねぇ〜?
そういや、かみやんどこ行ってたの?」 |
伊弉 |
「ああ……思いっきり“追っかけて”ったみたいですよ?」 |
しぶちょ |
「あ、そっちじゃなくてね。今、どこにいってたの?」 |
伊弉 |
「資料室でした。寝てました」 |
しぶちょ |
「資料室? 何か調べてたの?」 |
伊弉 |
「ええ、どうもこういう系統のを……」
と言って先程のシーンの話をかいつまみます。
「エフェクトを無効化するような系列や能力のものを調べていたみたいですよ。
資料の山を見ている感じ、どうやら余り当たりはなかったようですが」 |
しぶちょ |
「まあ基本ね、うちらの仕事ってのはね、前例のない事にぶつかる仕事だからさ〜あ?
前例なんてほとんど意味がないんだけどぉ、固定観念なんてものもあるのだからねえ」 |
伊弉 |
軽く欠伸。
「まあ……経験と言うものも関わってきますからね……どうしても。
そもそもウィルスなんてものはどんどん進化しますから」 |
しぶちょ |
「そ、ボクみたいにね」 |
伊弉 |
「全くです、彼の能力でも全然判らないモノが多すぎます。
話としても、これこれこんな感じという事があったそうですし」
今度はカムイの気絶前/暴走前の変質関連の事を概略で説明します。
「――覚えてないそうですけど」 |
しぶちょ |
「その“覚えてない時”に何かなかったら、間違いなくかみやんは連れてかれてたってことなんだよねえ?
それでさ、やっぱりあいつさ、ちゃんと話してくれないからさ〜あ?
イサナちゃんの方で色々聞きだしておいてくれると、嬉しいんだけどねっ」 |
伊弉 |
苦笑浮かべます。
「た、多分聞きだすのは、私よりもほのかちゃんの方が……て、適任な気はしますけどね」 |
しぶちょ |
「やあ、ムリムリ。
ほのかちゃんねぇ、だぁいぶゴマカされやすいから♪」 |
GM |
ふ、ふははははははは。 |
しぶちょ |
「でねぇ、かみやんってのはさ、ああ見えてゴマカすのが一番得意なタイプなのよね〜♪
だからそこんところは君にお願いしたいのぉ。ボクあいつに嫌われてるっぽいからさあ?」 |
神居 |
え? 大丈夫ですよ?
俺のしぶちょーへのロイス、<ポシティブ:尊敬>ですよ? |
しぶちょ |
そんなのは知らにゃい、プイッ。 |
GM |
神居からしぶちょーはともかく、しぶちょーから神居は本能的に嫌われてるよな。
神居はレネゲイトウィルスを喰らう<ウロボロス>、レネゲイトウィルスの進化体であるレネゲイドビーイングのしぶちょーにとっては補食者なわけだ。 |
しぶちょ |
ボクはかみやんへのロイス、<ネガティブ:危機>だからにゃ?!
喰われる、喰われるにゃー?! |
伊弉 |
でも実際に食べようとしているのは私だったりする不思議。
「嫌われているかどうかは知りませんけど……嫌われるようなこと何かやりました?」 |
しぶちょ |
「にゃん?」 |
伊弉 |
「例えば支部長。
私、支部長をお鍋にしようとしてますけど、嫌ってます?」 |
しぶちょ |
「ん?
いやね、『嫌ってる』って言ってもボクが嫌ってるワケじゃにゃいからねえ?
Y市支部のみんなはかわいい後輩みたいなモンだしぃ♪」 |
伊弉 |
「じゃあ逆に。カムイから何か嫌われるような事、何かやってます?」 |
しぶちょ |
「んっとねぇ、これから嫌われるかも知れにゃいねえ〜?」
意味深に言って、窓の外をきゅっと見るにゃ。 |
伊弉 |
微妙な訝しげな顔をしながら同じように見ましょう。 |
しぶちょ |
「ま、そんなわけでね♪
ボクの方はアレにあんまり近づけないからさっ、君の方でガンバってくれよ♪」 |
伊弉 |
「はあ……」 |
近づけないからさっ♪
|
伊弉 |
「……まあ、頑張りましょうか」
と言ってはいつもどおり、またお鍋を出してきて――ハイ。 |
しぶちょ |
そこのお鍋にひょいっと乗りましてぇ〜♪ |
伊弉 |
まずは水道の方に行って蛇口を捻って……。 |
しぶちょ |
水入れだしたなら逃げるにゃー?! |
伊弉 |
「あ、逃げた」 |
猫は水が嫌いなんですよ?
|
伊弉 |
「……。
お風呂にでも入りませんか? たまには洗いますよ、ちゃんと」 |
しぶちょ |
「温度がね〜、問題あるんだよね〜え?」
とことこと、支部長室に逃げていくのにゃ。 |
...Scene is end.
Scene is start...
Y市支部のその一室。
鍋に入れたしぶちょ―から、逃げられてしまったその直後。
|
伊弉 |
「こんなもんと思ったのだけどな」
呟きながら、開いた蛇口を閉めています。 |
白百合 |
そんな伊弉さんの後ろから、声を掛けますね。
「あ、伊弉さん。支部長、見ませんでした?」 |
伊弉 |
「支部長は……今さっきまで此処に居たんだけど」と言って水を湛えた鍋をちらり。 |
白百合 |
キャー、支部長ー!?
「ま、また鍋ですか……?」 |
伊弉 |
「鍋です」
きっぱり言ってから、コンロに鍋をセット。 |
GM |
とりあえず沸かす、と。 |
伊弉 |
水もったいないですからね、おかゆでも作ろうかな―っと。
鰹節を取り出してきて、ポイ。 |
白百合 |
「ね、ねこなべなんて本当においしいのかなあ?」 |
GM |
食べようとするな! |
伊弉 |
「さあ……?
学校の友人は『面白そうだし、かわいい』って言ってるけどね。
ワイワイ言ってるから、きっとおいしいんじゃないかな?」 |
しぶちょ |
イサナちゃんまでかにゃー!? |
GM |
カワイイーっ、でおわっとけ!? |
ねこなべねこなべ。
ぐつぐつにゃーにゃー。
|
GM |
いや、オイシイね。 |
伊弉 |
『おいしい』と言っているから、美味しいのじゃないかな―っと。 |
このシチュエーション、オイシイわ〜。
……って意味の“おいしい”なんだけどね。
|
神居 |
しぶちょー、オイシイヨ? |
しぶちょ |
だからお前ら、ボクを喰ったら侵蝕率が上がるのにゃー?! |
白百合 |
食べません、食べませんからっ!? |
どたばたどたばた。
閑話休題、そして暫くの間。
|
白百合 |
「あ、あのー……伊弉ちゃん……ありがとう。
神居君のこと、助けてくれて」 |
伊弉 |
肩をすくめて「何もしてないけどね」と返します。
並行してお米探し出して、クッキング開始。
白米あったかと言いながら、炊飯器から1・2合お米を注いで――お鍋へ、えい。 |
白百合 |
「す、凄い……何でも器用に出来るんだね」 |
伊弉 |
「簡単な料理だけだよ?
これ、カテイカだっけ、でやらない?」 |
白百合 |
「や、やったけど……」と目をそらし「……私、家庭科1だから……」 |
しぶちょ |
壊滅にゃ?! |
GM |
逆にすげえ!
3段階評価位で1ならまだ良いんだけど、その口ぶりだと多分5段階で1だよ、なあ……? |
白百合 |
5段階位で1です。
視線をそらして『ま、また負けた……』 |
GM |
負けロール始まりました、オイシイです。 |
伊弉 |
こちらは5段階評価で3、良いところ4。
凄い巧いわけじゃないけど、ちゃんと出来る。 |
神居 |
余談ながら俺は5段階評価で5、独り暮らししてるからな。 |
GM |
完璧超人め。
つーか、女性陣差し置いて男が一番家事巧いとか不思議な支部だな全く。 |
しぶちょ |
そこは言ってはいけないお約束にゃ♪ |
白百合 |
「で、でもよく判ったね。神居君の居場所」 |
伊弉 |
「うーん、此処に来てからアレの監視兼護衛だからね。
色々教えてるのもあるし、ある程度は」 |
白百合 |
「わ、私も、大体同じくらいの期間……見てたはずだったんだけど……」
言葉がフェードアウトしていって、口を閉じます。 |
伊弉 |
学年一緒でしたっけ? 白百合さんと私達。 |
白百合 |
一緒です、でも学校が違いますよ。 |
伊弉 |
「まあ腐れ縁とやらか“上の人”がやってるかは知らないけれど、アレと同じクラスだからね」 |
GM |
判ってるとは思うけどそこら辺は必然ですよ、必然。 |
伊弉と神居は同学校・同クラス、勿論きっちり裏から介入されてます。
それは神居がY市支部に来てからずっと。
自由意志の働く部活やら細かい処、例えば席まではされてませんが、ね。
|
白百合 |
「やっぱり、伊弉ちゃんくらいじゃないと、神居君のパートナーにはだめなのかな? なれないの、かな……?」
ごにょごにょと、さみしそうに思い悩んでるような様子で呟いてます。 |
GM |
ごにょごにょ。 |
白百合 |
その後、意を決したような形で唇を噛みしめます。
「伊弉ちゃん!
あの、もし……もしもだよ? もしもだけど……。
今回の件で、FHに神居君が奪われそうになったとしたら、伊弉ちゃん……どうする?」 |
伊弉 |
「……?
そりゃ、護らなきゃいけないでしょう?
だって私がその役割なのだし、それがUGNエージェントとしてのお仕事です」 |
GM |
まったこともなげに。 |
伊弉 |
感情なんてものは交えていませんから。 |
白百合 |
「伊弉ちゃんが護りたいのは、神居君?
それとも……神居君の中の……<賢者の石>?」 |
伊弉 |
「……?」
訳が判らなそうな顔をしています。 |
白百合 |
「……だめ、わたしはだめ……。
わたしは石なんかよりも、神居君の方が……神居君に生きてて欲しいから……。
だから、わたしは……支部長の言う事には……」もごもご、もごもご。 |
伊弉 |
思案顔を浮かべながら『……何かあったのかな……?』とこそっと呟きましょう。
「……まあ、私に伝わってないってことは、そこまでの事じゃないのだろうし」 |
白百合 |
「……え?」 |
伊弉 |
とりあえず、そろそろコンロの火を止めようか。
「さ、そろそろ出来たかな?」 |
白百合 |
「え? い、伊弉さんっ!!
支部長様から、何も聞いてないの?」 |
伊弉 |
「むしろ……何の話?」 |
白百合 |
「えっ?!」 |
GM |
ま、そりゃそうなるんだよな……
伊弉、まだ知らないんだよ。 |
数シーン前、具体的にはシーン5を思いだしてください。
通信を介してUGN本部より、“神居の処分命令”がしぶちょーへと通達されました。
そして白百合はそれを聞いてしまっています。
白百合は伊弉に、既にこのことが伝わっているだろうという前提で話してます。
……が!
伊弉は実はまだ、その話を全く知らないんだよねー……。
神居から目が離せない状態の為に、伊弉が神居を余り単独にしようとしない。
そして当然ながら処分対象である神居に対してこの内容は漏らすわけにはいかない。
つまり伊弉が神居に付いている以上、誰もなかなか伊弉にその事を伝えるタイミングがない。
嗚呼、見事なすれ違い。
|
白百合 |
話がかみ合ってないのですか!?
「え、え、えっ!? どどど、どうしよう」
あせるあせる、おろおろおろおろ。 |
伊弉 |
こちらは淡々と、指折り数えながら続けます。
「だって普通に報告しているしカムイの身体状況とかは聞いてる」 |
白百合 |
おろおろ、おろおろ。 |
伊弉 |
「カムイから“何があったか”もカムイ視点からは聞いてるよ。
……それ以外何かある?」 |
白百合 |
「う、う、う……えっとっ……どどど、どうしよう、どうしようっ……!」
あわあわ、あわあわ。 |
伊弉 |
対象的に淡々。
「まあとりあえず。
カムイの事が気になるんだったら――寝てるからどうでもいいような気もするけれど――アッチの様子、見ておいてください」
出来たおかゆ(2人分)を小さな土鍋によそってはお盆に移し、お盆に食器も2人分添えた後に「はい」 |
白百合 |
「……えっ?」ちょっとびっくり「こ、これって……?」 |
伊弉 |
「下手してると起きてるから。ついでに届けといて」 |
白百合 |
「あ……うん、判った……じゃ、行ってくる。
その代わり、あの……さっき話した事忘れて?何でもないから」 |
伊弉 |
ちょっとだけ不思議そうな顔をしてから「了解」
「私はちょっと調べものするので、資料室にいるから」 |
白百合 |
「うん」と返事を返しながら、そのお盆を持って駆けあがるようにパタパタ。
向かう間に「(……あ、これおいしそう……)」 |
伊弉 |
食べて良いんですよ2人分造っているから、お見舞い兼任。 |
白百合 |
と言うことで、神居君の部屋に持って向かいます。
GM、シーンエンドでお願いします。 |
...Scene is end.
Scene is start...
UGN・Y市支部、1階にある資料室では黙々と伊弉が1人調べ物。
山のように積まれた資料の山の上に、音もなくすたっと現れるのは黒い猫。
本は微塵も動かず、揺れもしない。
今の時刻は真夜中、黒猫の目はきらりと光っている……。
|
伊弉 |
「今晩はです、支部長。
此処はお散歩の場所では無いですが、どうかなさいましたか?」 |
しぶちょ |
「そうねえ。
『本に毛がつく』とか言って司書さんにも大分怒られるのだけどさ〜あ?」 |
伊弉 |
「だったら、人間の恰好になったら良い気がしますけれど」と、ぽつり。 |
しぶちょ |
「まあ、それは良いとしてぇ〜♪
……何調べてるのぉ?」 |
伊弉 |
「“無効化”の能力を調べているのですよ。
シキよr……間違えた。カムイが、こういう事を言ってまして」 |
しぶちょ |
おやん?
それを聞くと「ん〜〜?」と謎の伸ばしをしながら頷くにゃ。 |
学校仲間の間ではシンとかシキとか名前をもじったあだ名で呼ばれている事が多い神居。
ですが伊弉は神居の事を、学校でも支部でも名字をもじってカムイと呼ぶ。
|
伊弉 |
「……一応、意識してるのですけどね……“名前”は呼ばないように……」
決まり悪そうにブツブツ、ぶつぶつ。 |
しぶちょ |
「まあね〜♪
でもあまり根詰めすぎないでね〜? 多分、判らにゃいから」 |
伊弉 |
「私もそう思いますけどね。引き継いで調べておくと言った手前、ある程度は」 |
しぶちょ |
「律儀だねえ♪」 |
伊弉 |
「有難う御座います」
端的にひとこと言えば、本をぱたん。
書架に仕舞いに行ってはまた新しい本を出して、机へと戻ってきます。 |
しぶちょ |
その一連の動作をしばらく見、本の上に座ったまま視線はやや上からにゃ。
「イサナちゃんさあ?」 |
伊弉 |
「何でしょう?」 |
しぶちょ |
「今の状況でえ、“解決方法”っていくつあると思ぅ?」 |
伊弉 |
「……仰る意味が良く判りません」 |
しぶちょ |
「ん〜、じゃあそうだにゃ、こっちから言おうか。
まずひとつはあ、“トイフェル”春日部を倒すコトだよね〜?」 |
伊弉 |
「ええ」 |
しぶちょ |
「で、春日部さんの目的って、なぁんだったっけ?」 |
伊弉 |
「“WIRD CARD”の奪取ですよね」 |
しぶちょ |
「そうだねえ。
で、この支部が襲われる理由もぉ〜?」 |
伊弉 |
「カードがあるからですよね、勿論」 |
しぶちょ |
「そうだねえ〜♪でっ、ここで一つくえすちょんで〜っす。
カードを切ったら、どうなるでしょ〜?」 |
伊弉 |
「2つ、意味がありますよね。
カードを切る、切り札を相手へとぶつけて倒すか。
もう1つは、“カード”を破り捨てるか」 |
しぶちょ |
「そ、れ、で、ね?
そこでだね、ひとつね、上からの命令がありま〜っす」
本からとん、と降りて座ってるイサナちゃんの後ろにくるっと回るのにゃ。
そして背中合わせの状態でお座りする。 |
伊弉 |
「……」 |
しぶちょ |
「上からね〜?
『いざ盗まれそうになったら、彼を君に殺してほしい』って言う、命令があるんだよね〜♪」
そう言い終わると静かになるのにゃ。 |
伊弉 |
本を読んだまま、ひとこと「――了解しました」 |
しぶちょ |
「あれ、良いの?」 |
伊弉 |
「私はUGNエージェントですからね。それが“彼女”だったら兎も角」 |
しぶちょ |
「そうだね〜、あの子も聞いちゃったみたいだしね〜?」
そう言ってはしっぽを振ってるにゃ、ふりふり。 |
伊弉 |
「……聞いちゃったのですか」 |
しぶちょ |
「様子変じゃなかったぁ?」 |
伊弉 |
「へっ?」素っ頓狂な声をあげてから暫く考える、暫く考える。 |
GM |
暫く考える。 |
伊弉 |
ぽん。
「……ああ。そうですね、さっき“そんな感じ”でした」 |
しぶちょ |
「多分ねぇ、あの子には任せられないって上も判っちゃってるんだろうにゃー?
元々は不良品扱いで、余所に回される処だったんだから」 |
伊弉 |
「私は逆に施設のことしか知りませんからね」 |
GM |
施設の中の期待のエースだよ。 |
伊弉 |
施設生まれの施設育ちですからね。
外はカムイの見張り兼護衛で見た世界、それしか私は知らない。 |
しぶちょ |
「でねでね?
ボクはこの問題をぉ、どう解決していいかちゃんと良く決め切れていないんだけどね?」 |
伊弉 |
「ですよね。
何時その命令を受けたかは存じませんが、私に伝えれば、私はアレが寝ている隙に心臓を刺してやってますから」 |
しぶちょ |
「ん〜ん、半分そんなキモチ・半分そうじゃないで欲しいキモチもあったんだけどぉ〜。
まあそれは置いておいてね♪
人間のことってさ、やっぱり人間で決めなきゃいけないよね〜?」 |
伊弉 |
「……。
仰る意味が判りません」 |
しぶちょ |
「白百合ちゃんはね? ボクらレネゲイドビーイングとか、オーヴァードに関しての知識がしっかりあるUGNの人たちと違ってぇ、非常に人間らしい回答を出してくれるんだにゃー」 |
伊弉 |
「そう、です、か」 |
しぶちょ |
「それでね?『人を知りたい』って言うレネゲイドビーイングの本質から言うとだねっ?
ボクとしてはぁ、上からの命令はけっ飛ばして白百合ちゃんに全て任せたいと思ってるの♪」 |
白百合 |
えっ?!
ちょちょ、おかしいですよ私PC4なのですよ?! |
しぶちょ |
PC番号なんてそんなものは知らないにゃ♪
「イサナちゃんとしてはぁ、この考えどう思うかにゃ?」 |
伊弉 |
「支部長にカードの処遇が全権委譲されているのでしたらそれで宜しいと思います。
支部長の権限を超えているのでしたら私は賛同しかねます」 |
しぶちょ |
「それがね〜、とりあえず『全権任す』って言われちゃったんだよにぇ〜♪」 |
伊弉 |
「ならそれで良いじゃないですか」
あっさり。 |
しぶちょ |
「一応にぇ、ひとつの小さな組織の頭としてはねっ♪全員の意見を聞いておきたかったわけよっ」
背中合わせしていた椅子からぴょんと飛び下りて、トコトコと歩いて去っていくにゃ。 |
伊弉 |
「……」
振り返りもせず、そのまま調べ物を続けます。 |
しぶちょ |
で、ドアをカリカリしてから暗闇の中で、すっと一瞬だけ人の形になる。 |
GM |
≪ヒューマンズネイバー≫か。 |
しぶちょ |
そして音もなく資料室のドアを開けて、部屋から立ち去るのにゃ。 |
伊弉 |
去り際にひとこと「支部長」 |
しぶちょ |
「はいよ?」 |
伊弉 |
「済みません。
アイツを“名前“で呼んだこと、聞かなかったことにしてください」 |
しぶちょ |
「ウブだね〜♪」 |
伊弉 |
「……そんなモノじゃないのですけれど、ね」 |
しぶちょ |
ではドアから出かけに返すかにゃ。
「徹夜はねっ、良い仕事と美容にも良くないからぁ、やめておいた方がイイよ♪」
そう言ってドアを閉めるにゃ、ぱたむ。 |
伊弉 |
「……。
まあ、仕事に差し障るのも実際ですよね」
調べ物が一区切りしてから、本を片づけましょうか。 |
しぶちょ |
シーンアウト、お願いするにゃ。 |
...Scene is end.