オープニング/Opening

Opening Scene 1
Side:Master
 ではオープニング、シーン1から始めます。
 始まりはマスターシーンです。
GM  マスターシーンですけれど、ちょっとNPCを自分1人で2人やるのはやりにくい場面なのです。
 なので申しわけないのですがジーク、NPCを代わりに1人演じてもらって良いですか?
ジーク  ん、構わない。
 構わないがどんなNPCを私は演じればいいのだろうか。
GM  お願いしたいNPCは小さな女の子で、名前が“ジーク”っていう子ですね。
ジーク  は?
夕姫  ……今GM、何て言いましたかNPCの名前……。
GM  ジークに演技をお願いしたいNPCの名前は“ジーク”、もっというと“ジークリート”
 そんな名前のNPCの女の子を演じていただきたいのですよ。
ジーク  なるほどそういうフリ、か。
GM  君ではなく、NPCなのですけどね。
ジーク  ん、わかった。
GM  お願いしますね。
 ……茶番劇にも、程があンな……

Scene is start...

――霞のような記憶。

 白い壁、白い天井、子供たちの笑い声。
 鉄格子のはまった窓の向こう側に、一本の桜の木があった。
 遠くの風景。
 小高い丘の上に一本だけ生えた――桜の木。

 少女がひとり、その風景をクレヨンで画用紙に写し取っている。

 白い服の少女。
 長く伸ばした黒髪には、青いリボンが揺れている。
 少女は傍らに佇む彼女に気づくと、キャンパスに描く手をとめて、ゆっくりと口を開いた。

「ねえジーク。
 あの桜の木って、いつからあそこにあるのかなあ?」
「いつだろうね」
 素朴な疑問を口にした少女。
 その言葉にジークと呼ばれた彼女はゆっくりと、穏やかな面持ちで言葉を返す。
「1人で、さみしくないのかなあ……」
「きっと、寂しいのだろうね。
 でも誰かに見てもらいたくて、あんな風に満開に桜の花を咲かせるのじゃないかな」

 湖の水面を思わせるような、静かで緩やかなジークの言葉。
 だがその言葉を聞くと少女は、瞳を哀しみの色に染め、視線を下へと落としうつむいてしまう。
 穏やかな春の風の音が流れる程度の間が過ぎると、少女はゆっくりと顔を上げ、傍らの君の目をじっと見据えた。

「あたしね、みんながいるから……さみしくないの。
 だけどあの木は、ひとりぼっちでさみしいよね? ずっと、丘の上で……ひとりぼっち。
 何年も、何年も……」

 寂しさに染まった少女の言葉が空に舞えば、自然ジークの視線も軽く下へと落ちる。
 その時にふと、彼女が手にしているスケッチブックに目がとまった。

 白いキャンバスの中に描かれているのは、たくさんの桜の木。
 描かれているのは1本ではない、咲き誇るたくさんの――桜の木々。

 少女はその視線に気づくと、はにかむように笑いかける。
「うそでもいいの。
 だって、絵の中でもひとりぼっちだなんて、さみしいじゃない」
「そうだね。
 それで、いいんじゃないかな」

 ともすればさみしさに押しつぶされそうになりながらも笑いかける少女と、少女の言葉を受け止めて穏やかに返す彼女。
 澄んだ白の空間に流れるゆったりとした時を、時計の針が静かに刻んでいく。

「あ、そうだ」
 少女はふと思い出したかのような声を上げ、懐から何かを取りだす。
「これ、あげる」
 差し出された手の中には、小さなしおり。
 簡素な紙に押し花のような桜の花びらが留められた、小さなしおり。
「風に乗って飛んでくる花びらを、1枚ずつ集めたんだ。
 みんなの分もあるんだよ。かける君の分も、ゆきちゃんの分も、つむぎ君の分も――」

 さらり――
 穏やかな白い空間には似つかわしくない冷たい鉄格子。
 格子窓の向こうを流れるのは、薄紅と戯れる春の風。
 どれだけ手を伸ばそうとも届かぬはるか先にあるものは、春風と揺れる1本の桜の木。

「ねえ、知ってる?
 あの桜の花びらをたいせつに持っていたら、いつかきっと、かみさまが、ここから救い出してくれるの」
「そうなんだ」
 見上げる少女と、佇む彼女。
 佇む彼女――ジークは小さく答えると、少女の手の中からしおりを掴む。
 ジークへと差し出したしおりから、少女はゆっくりと手を離す。
 ぱたりとひざの上へと落ちゆく手。その手と同じく力なく、少女の顔はうつむく。
「――なんてね。
 そうだったら、いいのにな……」
 ぽつり。
 口の端からさみしさと共に、言葉が漏れる。

「ねえ、ジーク。
 私たち、何があっても一緒にいようね」
「そうだね」
 憂いに覆われた少女を安心させるかのように、ジークは笑みを1つ浮かべる。
「絶対、約束だよ……」

 薄れゆく、霞のような記憶の最期。
 かすれ散りゆくその最期に流れたのは、白い服の少女の言葉――

...Scene is end.

Opening Scene 2
GM  次のシーンは学校の教室のシーンです、登場するのは翔以外の3名ですね。
夕姫  GM。
 侵蝕率上昇のダイスは振りますか?
GM  オープニング・シーンは振らなくて良いです。
 舞台はH市立、譜代高校。
 なお高校の名前は、あそこのGMが『譜代高校が良い』と名前をつけてくれました。
GM‐X  (手を振っている)
夕姫  ……どういう意味があるのですか?
 譜代大名、の譜代だとよ。
 江戸時代の大名出自による分類の1つだな。
 確かそれに準えて、親藩高校・外様高校・譜代高校と姉妹校があるらしいね。

Scene is start...

 H市立、譜代高校。
 ホームルームの時間――
GM  朝の高校、教室は活気に満ちあふれています。
 君たち3人は席についているのですが、そこにNPCの女の子:月見夕菜がやってきます。
月見 「おはよう!
 今日もかわいいね〜っ、ユキちゃん」
GM  夕菜は元気良く笑いながら、夕姫の傍まで来て話しかけてきます。
夕姫 「おはようございます」
 静かにここは返しておきましょう。
月見 「ジークもちっすっ」
ジーク  ちょっとぼうっとしているような感じで「おはよう」とひとこと。
GM  さらに紡君の席までわざわざ駆け寄っては「紡君、イェーイ!」と腕を上げる。
 元々元気な子ですが、今日は普段に比べてものすごいテンションが高いです。
「いつも、元気だね」
月見 「元気だけが私の取り柄だからねっ」
「“だけ”ってことはないよ」
月見 「え? 私そんなにカワイイ?
 やっだもぉ、朝から紡君ってばーっ♪」
「あ、あは、あははは……」
 笑っているのだけどちょっとついていけないかも、笑いながら軽く距離を置く。
GM  そうすると、距離を置かれたことに気づいたのか、夕菜は素に戻ってしまいます。
月見 「あ、そうだ。知ってる?
 今日さ、転校生来るんだってこのクラス」
ジーク 「そうなんだ」
月見 「いや〜いいよね転校生、“青春!”て感じがするよねっ」
ジーク 「そうだね」
 このアマ、それって単に相手に合わせて相槌打ってるだけじゃねえか。
月見 「あれあれっ、ジークったらテンション低くない?
 ダメだよそんなんじゃ。高校生活青春乗り切れないよ〜っ?」
ジーク  私は常日頃からこんな感じなのだが……。
「けっこう君に引っ張られて、青春謳歌している気がするんだけどな」
 そういうしているうちにチャイムが鳴り始めます。
 キーン、コーン――
 チャイムが鳴っている間にモノローグで考える。
 「(テンコウセイって、なに?)」
ジーク  ああ、なるほど。
夕姫
 ロール、大変そうですね、紡君……。
GM  ……って、え?
 いや、そこから?!
 うん、ここから。
 ほら、“テンコウセイ”って遭遇しないと、文字が出てこなかったりしない?
GM  あー……なるほど、ここからか。
 ロール自体は大変そうだが面白いな紡君のキャラ、なるほどなるほど。
 ――カーン、コーン。
GM  チャイムが鳴り終わると夕菜は「おっと。じゃ、またね♪」と席へと戻っていきます。
 彼女が席に着くやいなや、まるで入れ替わるようにしてガラッ――扉が開いて先生が入ってくる。
 先生は頭をガッ! と刈り上げ、ヤクザみたいなしゃべり方をするチンピラのようなの人です。
先生 「あ〜お前ら席につけーさっさとつけ―」
夕姫  最初から座ってます。
先生 「今日はうちのクラスに転入生が来ましたー。
 しかも2人同時なんで、よろしくおねがいしやーす」
3人  ……。
GM  君たち、テンション低くないですか?
ジーク  「(……2人?)」
夕姫  ちょっとジークに目配せしましょう、なぜならば私たちも転入生組だからです。
ジーク  ああそうか、そういえばそうだったね。
夕姫  転入生って、それ自体はそんなに珍しいことではないですからね。
 あっ、そうなるとぼくは知ってないとおかしい……よね。
ジーク  転入生、と、転校生、は違うよ。
GM  教室内ではひそひそと話し声がし始め、徐々にざわざわとざわめき始めます。
「せんせー、女の子ですかー?」
「ギブミー、謎の転校生!」
 こんな感じで微妙に盛り上がり始めるのです、が――盛り上がらないですかね?
ジーク  他人と話すよりも『どんな感じの人かな?』と思案しているな。
GM  では周りが勝手に盛り上がり始めます。
「いやいやここは、金持ちで美形の白馬の王子様だろ、間違いないな」
「いや、そんなんうちの学校こないから」
 こんな会話が教室内で、がやがやとなされていきます。
 隣の席の子に話しかけます。
「2人同時って、珍しいの?」
夕姫  隣の席は私たち。
「私とジークの時も、そうだったでしょう」
GM  えーっと。
 ところで皆さん、NPCを好きに演じてくださって結構ですからね?
夕姫 「ですが、2人同時の転入って、そんなにあるようなことではない筈ですが……」
先生 「よーしお前らダマれー、黙らんと体罰すっぞー?」
(ジーク)  そうするとNPCの生徒がばってんがついたマスクをつけ始める。
夕姫  ってこの学校大丈夫ですか?!
 というかなんで常備してるのですかそんなマスク?!
(ジーク)  こういう先生だから。
先生 「おいお前、フザけてんのか?」
(ジーク)  ばってんのつけたマスクをつけたまま、黙ってる。
先生 「ちっ……。
 じゃあ寺崎、桐生、入ってこい」
GM  ガラリ。
 教室の扉が開くと少年と少女が入って来るところから翔が登場になります。
 へーい。
 ガラが悪く、機嫌が悪そうなヤロウが1人、黙って入ってきます。
GM  そして黒い髪の少女が1人、教室へと入ってきます。
夕姫  少女の方に見覚えはあるのですかね?
GM  見覚えがあるかないかという話でいえば、あるにはありますよ。
 夕姫、君とよく似てます。
夕姫  ……そ、それはちょっとリアクションが取りづらい……。
ジーク  入ってきた少女の姿にほんの少し驚いて、夕姫と少女を見比べる。
「あ、似てるな……」
夕姫 「……」
 翔に目が行ってしまったので、ジークのその様子は流そうとします。
GM 「とりあえず自己紹介からしてもらおうか。寺崎から」
 先生に促され、少女の方が教壇の真ん中へと歩いて来てはまずは一礼をします。
「寺崎朝海です」
 一礼の後、黒板へと向かい自分の名前を書きだしていきます。
 彼女の頭には青いリボンが結ばれていることが、君たちには判ります。
 青いリボン?
GM  おっと、違った。
 赤いリボンが、朝海の髪には結ばれています。
 青は、夕姫。
夕姫  ……今の、わざとじゃないですか……?
ジーク  ちなみに夕姫は、青いリボンは普段付けていたのだったか?
夕姫  大切にいつも持ってはいますが、普段は髪につけてはいませんよ。
GM  朝海が黒板に名前を書きだしていくその最中、風が吹いて彼女の髪がさらりと揺れる。
 赤いリボンが結ばれたその髪が揺れた時、ジークの頭にフラッシュバックするよう、何かが一瞬だけ蘇ります。
 揺れるリボン。
 黒い髪。
 白い服の少女。

「ねえ、知ってる?
 あの桜の花びらをたいせつに持っていたら――」
GM  サア――とその記憶は過ぎ去り消えていく。
 それは何だかわからないけれども、君の心の中に残り続ける。
ジーク  たまたま、なのだけれど私は『思い出の一品』を持っている。
 思い出の一品――桜の押し花が留められたお守りを、胸ポケットの中から取り出して見ています。
朝海 「北海道の学校から来ました。
 この辺りのことはまだまだ分からないので色々ご迷惑をお掛けするかも知れませんが、宜しくお願いいたします」
GM  そういうとぺこり、もう一度朝海は頭を下げます。
 礼をし、頭を上げると彼女はジークの方に向けて微笑みます。
 その姿は与える印象こそ違いますが、夕姫によく似ているような、似てないような……。
ジーク 「(なんだか、ほんとうによく似ているな……)」
 そんなことを頭の隅で思いつつ、お守りを手にして何か物思いに耽る。
夕姫 「リート、リート」
GM  そして朝海が微笑んだ瞬間、ズキン――
 夕姫の心臓のあたりに、鋭い痛みが走ります。
夕姫 「……っ!」
GM  一瞬息が出来ないほどの痛みを感じるのですが、次第にそれはチリチリとした耐えられる程度の痛みへと収まっていく。
夕姫  胸を抑え、敢えて朝海さんからは視線をそらしてジークに話しかけましょう。
「リート、ぼうっとしないでください。
 あの男です、この前言った男」と、翔を指差します。
 指差された少年は非常に機嫌が悪そうで、つまらなそうな様子。
 周囲、教室内を見渡している。
 夕姫はつい先日、ジャーム対峙の際の領域を展開中、翔に領域内を見据えられています。
 ≪ワーディング≫≪不可視の領域≫を併用しているのならば、一般人はおろかオーヴァードすらその領域内のことはまず認識はできない。
 できない、はずなのです、が――
ジーク 「ああ、彼か」
夕姫 「きっとあの人、ただものじゃないから。気をつけてください」
GM 「おい次、桐生」
 先生の言葉が響き、翔の自己紹介が促されます。
 促されると思いっきり顔をしかめては「へーい」
 つかつかと黒板前に行っては、けだるそうなやる気がなさそうな様子で自己紹介。
「桐生翔と言います、名古屋の方からきやした。よろしくおねがいしやーす」
 カッカッカッ。乱暴に黒板にチョークで名前を書いて、書き終わるや否やチョークを黒板に叩きつける。
生徒  ザワザワッ 「おお、すげー!」
GM  もちろん先生は顔をしかめます。
 無視。
生徒 「ねえ、あの子先生に似てない?」
「先生に……?」
生徒 「ほら、雰囲気とか」
「ああ、そうかなあ?」
 ぼくは教室に翔が入ってきてから、ずっと翔の方を見ている。
 近くの席の子に話しかけられていても、気もそぞろ。で翔の方をずっと見ている。
 紡の視線に気付くと、嫌悪を露わに睨み返す。
 それにはにこっ、と笑顔で返しておくね。
先生 「……まっ、こんなもんか。席はとりあえず後ろの2つでイイな。
 近くの奴――お前たちか、しっかり面倒見てやれよ」
GM  先生がそういうと2人は、ジーク・夕姫・紡の方の席へと歩いてきます。
 翔も勿論、その席を促されてます。
 へーい。じゃあ女の後ろを歩く形でいきますか。
GM  歩いてくる途中、朝海がジークをじっと見ています。
ジーク  自分たちの席に2人が近づいてくると、席を立つ。
「これからよろしく」と彼女に向かい、右手を差し出す。
GM  その様子を見ると、朝海は微笑んで右手を差し出します。
「よろしくね。えっと……」
ジーク 「ジークリート・ウェイスェンフェルトです」
朝海 「よろしく、ジーク君」
GM  朝海は柔らかく微笑み、握手を交わします。
 そこでシーンを切りましょうか。

...Scene is end.

夕姫  GM、ここでロイスを結びたいです。
 桐生翔に好奇心/【嫌悪】、寺崎朝海に懐旧/【恐怖】。
 両方ともネガティブ感情が表でお願いします。
ジーク  私も寺崎朝海にロイスを結びたい。
 【友情】/脅威、私はポシティブの友情を表。
GM  承りました。
Opening Scene 3
 次のシーン。
 このシーンは回想シーン、翔がH市にて最初に任務を言い渡されるシーンから始まります。

Scene is start...

 暗い地下、薄暗い明りの灯ったナイト・パブの一室。
 ひとけもまばらなその場所に、その男はいた。
 彼の名は“首つりジャック”塩見徹朗、H市に潜伏するFHセル『ナイトサーカス』セルリーダー。
 頼りない印象をも受けるその男が、現れた少年を歓迎するかのような調子で口を開いた。
塩見 「いやー来てくれて助かるよ、ほんと困っててねぇ。
 『人手不足ここに極まれり!』って感じでさっ」
 非常に不機嫌そうに、語気を強めて言い放つ。
「じゃあ何で人を集めてないンですか!」 
塩見 「んーあー……。
 集めたさ。君がその最初のひとり」
 こ、このっ……っ。
ジーク  そうするとマスターの携帯電話に「ちょっと用事がある」等の断りのメールがたくさんあるわけだな。
夕姫  こらこら、勝手にマスターをヘタレにしちゃいけませんよ。
GM (塩見徹朗は、頼りない印象を受ける30代男性ですからねえ……)
塩見 「えーっと、翔君だっけ?
 君の噂は聞いてるよ。結構な腕効きらしいじゃないか」
「そいつァどうもありがとうございます」
塩見 「……と、言いたいところなんだけどねぇ。
 悪いね? 君の実力を疑うわけじゃないんだけれど――」
 沈黙したまま、憮然とした態度を隠そうともしていない。
塩見 「……。
 ま、いっか。じゃあ任務の話をしようかっ」
「あい任務の話してください」
GM  そういうと男は懐から、何枚かの書類と写真を取りだします。
 調子の良い感じだった口調がすっと、真面目な様子へと変化する。
塩見 「ターゲットは“ファタ・モルガーナ”。
 市内にUGNが抱える研究施設から脱出してきた、折り紙つきの実力を持つ厄介なジャーム――それが、こいつだ」
GM  彼が出してきた写真には白い髪の少女が映っています。
 ただし、遠くから撮られた写真のようでぼやけていて、彼女の雰囲気位しか判りません。
 ファタ・モルガーナは『白い髪の少女である』ということだけは判ります。
 気のせいかこの少女、いつかどこかで見たことがあるような――
 写真を手にとっては見、怪訝そうな顔を浮かべては悩み始める。
「(どっかで見たことあるような気はするンだが、こんな奴しょっちゅううろうろしてるか……?)」
GM  君がそうやって悩んでいると、塩見徹朗は続けます。
塩見 「本来ならジャーム程度で、俺たちは動かない。
 だけど、コイツに関しては『UGNの施設から脱走して来た』っていうのが問題でね?
 言わずもがななんだけれど、彼らはこういう実験はしてないことになっててさぁ――捕まえちまえば切り札になる。
 何より、コイツは実に優秀だ。
 どういう実験を重ねたかは知らないが……ほら、欲しいだろ?」
 にやり、軽く口元を笑みで歪める。
「まあ、欲しいですよね。
 カードにするにしても研究資料にするにしても欲しいですよね、ヤッパ」
塩見 「だよねぇ〜。
 ――アンタけっこう良く判ってんじゃん、桐生君」
「殺してこなくても別にイイんすよね?」
塩見 「ああ、もちろん。
 死体でもいいが、出来れば生きてる方がイイなあ……」
「ヤッパ生きてる方がイイっすよねえ〜?」
塩見 「わかってんじゃん」
「わかってんじゃないっすか」
夕姫  エゲツない内容でものすごく意気投合してますねこの2人。
 さすがは人類の敵、ファルスハーツ……。
塩見 「コイツ自身も、コイツを造る過程で生まれた技術もさ、全部持って来て欲しいってワケだ」
「あいりょうかいしやした、俺もこういう任務のが好きっすよ」
GM 「期待してっぜ?」
 塩見は翔の肩をトンと叩くと、さらに2枚の写真を取りだします。
 ひとつは不機嫌そうな顔をした青年の姿。そしてもうひとつは線の細い白衣の男性の姿。
 こちらはファタ・モルガーナの写真と違いけっこう奇麗に映ってます。
塩見 「コイツら、対象と共に行動していると思われるものたちだ。
 この青年はファタ・モルガーナと同じUGNの実験体、そして白衣の男が実験の首謀者と目される。
 先程もいったが捕縛してくれりゃもちろんステキだ、だがこの際生死は問わない。
 コイツらを、俺達の元へ奪ってきてくれないか」
「了解しました」
GM 「特に、この男の――」そういうと、白衣の男性の方の写真へと、すっと指を滑らせて続ける。
「この男の“頭の中身”が重要なんだ。頼んだよ?」
 残忍な笑みを浮かべる。
「はい、はい、はい、判りました了解しました――首だけ持ってくりゃ十分だな」
GM  そんなところで回想シーンは途切れます。
 ここからはシーンこそ変えませんが、場面と情景が切り替わり紡君のシーンとなります。
 昼休みの譜代高校、翔と紡君の久しぶりの出会いの場面です。
 ここはGMは演出しないので、2人で好きに巧く演出してください。
 昼休み、譜代高校。
 任務を請け負った時の事を思い浮かべる翔が屋上でひとり、横になっている――
 自分の弁当と、購買で買ってきたパンの紙袋を持ちながらきょろきょろうろちょろ。
 だけど屋上に行ってからそんなに経たないうちに、翔の姿を見つけててこてこ歩いて行きます。
 近づいてくると目を開け、身体を起こして相手を見る。
「なんださっきの奴じゃねえか、どうかしたのか?」
「翔……だよね?」
「まあ、そうだけど……?」
「覚えてない? 四十九院紡だよ」
「ツルシ……紡か。
 ずいぶん久しぶりだな――ていうかだいぶ変わったな」
「あ、う、……ん、と……」
「ま、当然か? 何年経ってるか判らねえもんな」
「“変わった”っていったら、翔の方が変わってない?」
「ほっとけ!」
「う〜ん……。
 でも“ほっとけ”って言われても、気になることは気になるね」
「……。
 気にされて話しても、面白ぇ内容じゃねーから」
「そっか」
 てこてこ。翔のところに購買で買ってきた紙袋をひょいと置く。
 そのまま横に座って、自分のお弁当を食べ始める。
 嫌そうな顔をしてるが、追い払わず。
「あら、もうおわりですか?」
「コイツらバカだからさー、ヒャハッハッハ」
GM  ……〜っ!
 おい隣、お前らちょっと音量落とせ! こっちゃシリアスロールやってるんだよ!
PC-α  そいつァ出来ねえな、こっちゃN◎VAやってるんだよ。
 まあ屋上の喧騒がそんな感じなんでしょうよ。
 てことで昼休みの喧騒が屋上へと風に乗って運ばれる中、暫くの合間を開けて、隣にいる紡に声を落とし、声をひそめて話しかける。
「……お前、オーヴァードだったよな」
「そうだね。でもそれが?」
「……ひとを、女をひとり探しをしてるんだ。頼まれてくれるか?」
「うーん?
 他でもない、翔の頼みだから」と笑い掛けます。
「はっきりいやあ、こんな女なんだが――」
 胸ポケットからファタ・モルガーナの写真を取りだし、紡に見せる。
GM  写真を取りだした瞬間、屋上の扉がバターン!
 月見夕菜が現れて、きょろきょろと屋上を見渡します。
 うぁやべえ、写真を急いで隠す!
GM  彼女は君たちを見つけると「おーっす転校生っ」と声を上げ、駆けよってきます。
 思いっきりにらみ付ける。
月見 「なになに、さっそく友情芽生えちゃったの?」
 “昔馴染み……”って言おうとして、翔の顔をちらりと見……
 あからさまにイラついてる。
 ……黙ります。
月見 「いいなあ。
 男の子ってすぐ友情芽生えるよね〜、青春だなぁ♪」
 あ、う……
 何かを語りたそうな顔を浮かべるのだけれど、もう一回翔の顔を見……
 ギラついた目が“好きにしやがれ!”と語ってる。
 ……うぁ……。
 さすがに翔が不機嫌そうなのは見てとれるので、結局黙っておきます。
月見 「いや〜すばらしいっ。うんうん、いいねえ♪
 ――あ、そうだっ。私たち3人でトリオを結成しない?」
「何のトリオだよ?!」
月見 「名付けて『譜代ストレンジャーズ』!」
2人 「……」
 絶句してから「……すとれんじゃーず?」と、首をかしげる。
GM  夕菜は翔のいらだちも紡君の首をかしげたのも全く気づかず聞いていない様子です。
「うん、イイね。これにしよう♪
 じゃあトリオ結成を祝って放課後は、イケてるあんみつ屋にけって〜い♪」
「なんなんなんだよこいつは?!
 おい紡、一体こいつは何なんだ!! 」
「えーっと……なんなの?」
 本人・夕菜に振ってみます。
月見 「私たち、ストレンジャーズの仲間♪」
「名前すら知らねえ」
月見 「私、月見夕菜♪」
 ……っ。
月見 「あなたのクラスメイトで、新しく結成した、私たちのチームの、仲間♪」
 しょーじき……この女ブン殴りてえ……。
 殴りたそうな顔はしてる、必死で押さえてっけどこぶし握り締めて殴りたそうな顔にゃなってっんだが……。
夕姫  翔、この手の子に弱いのですね……。
ジーク  彼を落とすには話を聞かないのが一番良いのだな。
 てめぇら不穏当にも程があんぞ?!
「その、『すとれんじゃーず』は、何をするの?」
月見 「ん〜っと。
 とりあえず今日の放課後、イケてるあんみつ屋さんに行ってあんみつ食べてー……」
「俺はイヤだ」
 付き合ってられっかとばかりにその場から立ち、すっと去る。
月見 「転校生ってさ、いろいろ判らないじゃん?
 だからいろんなこと教えてあげられたらいっかなって」
 見事な完全するー……。
夕姫  流石は夕菜さん……。
 翔の様子を見るけれど、立ち去ろうとしてる、よね。
 なら夕菜の気が翔に行かないように、うんうんとうなずいて調子を合わせておこう。
GM  翔がすっと出ていく後ろ姿、それに対して夕菜は
「放課後にイケてるあんみつ屋さんだからね、絶対だよー!」
 ひとこと、しっかり声を掛けます。
「……」
 ――バタン。
「イケてるあんみつ屋って?」
月見 「そこは、おたのしみ♪」

...Scene is end.

 GM、俺もここで“首つりジャック”にロイスを結びたい。
 【連帯感】/憐憫、ポシティブスタートでお願いしやす。
GM  承りました。
Opening Scene 4
  次のシーンは夕姫のシーンです。

Scene is start...


 夢を見る。
 小さな子どもの夢。
 ところどころぼやけて、とびとびの夢。
 白い白い部屋の中で、子供たちが遊んでいる。

 赤いリボンの女の子は、その様子を部屋の隅で見ている。
 視線の先には男の子と、青いリボンの女の子。
 いつも仲がよさそうに笑い合っている。

 赤いリボンの女の子は、その2人の間には入れない。
 だから――そっと逃げるように歩きだす。


 世界はかすむように揺れ、途切れていき、時間軸は曖昧になっていく――

GM  学校の教室で物思いに耽るさなか、そんな映像が夕姫の記憶にすっと流れてくる。
 それとともに、唐突に頭の中へ声が響きます。
「真境名さん、そろそろお昼休み終わっちゃうよ?」
夕姫  ぼうっとしてたのではっとなります。
「あ、と、ごめんなさい……」
GM  すると夕姫の目の前には、寺崎朝海が居ます。
 彼女は君に微笑みかけています。
朝海 「次、体育だよね?
 更衣室、案内してくれないかな?」
夕姫 「あ、はい、良いですよ。
 ――そのリボン、似合ってますね」
朝海 「そう?
 これね、大事なリボンなんだ」
GM  そういうと彼女は嬉しそうに、そっと赤いリボンを触ります。
朝海 「ねえ、真境名さん。
 “真境名さん”って珍しい名前だよね」
夕姫 「え? ……ええ。
 育ての親が、付けてくれたんです」
朝海 「そっか。付けてくれた……?
 ……うーん……でも、めずらしくてちょっと呼びにくいかなあ」
夕姫 「夕姫、で良いですよ」
朝海 「じゃ、私のことは“朝海”って呼んでくれていいよ」
夕姫 「ええ。そうさせていただきます、朝海さん」
GM 「ありがとう、ゆきちゃん」
 そうすると彼女はうれしそうにはにかみながらも、夕姫に切りだします。
「あの、ね、ゆきちゃん。
 ともだちになってくれない……か、なっ?」
夕姫 「……?」
朝海 「私、この街のことあまりよく判らないし、まだ誰もともだちがいないの。
 だから、さいしょのともだち」
夕姫 「構いませんよ」
朝海  それを聞くと朝海は、嬉しそうに笑顔を浮かべます。
「ありがとう、ゆきちゃん」
夕姫 「でも朝海さんなら、そういう風にいえばきっと皆友達になってくれるのではないですかね?」
朝海 「そんなことないよ。
 私、今までも何回か転校したけれど、そんなにうまく行かないの……」
夕姫 「では、今回はうまく行くと良いですね」
 そういうと席を立ち、廊下に出て、彼女を更衣室へと案内しましょう。
GM  ここでシーンを閉じましょう。

...Scene is end.

Opening Scene 5
 お待たせしました。
 次はジークのシーンです。
GM  教室で次の授業に準備をしているところに、高浦修一がやってきます。
 ジーク、高浦修一は覚えていますか?
ジーク  はて、誰だったか……?
GM  高浦修一はNPCの5番目、UGNセクション2番目です。
 とにかく運が良すぎて調子に乗っているUGNエージェントですよ。
夕姫  「俺の時代、来た!」って言い出す人ですよ。
ジーク  ……ああ。
 あの残念なひとか。
GM  ……彼、あなたたちと同じクラスなんですけど、ね……。

Scene is start...

 昼休みも終わり、午後の授業の始まる時刻――。
GM  ジークが席で準備をしているところ、その前の席にドカっ!
 後ろ向きに腰掛け、ニヤついた顔の高浦修一が声を掛けてきます。
高浦 「ういーっす」
ジーク 「あ、君か」
高浦 「いやぁジークさんやるねえ、転校初日に転校生と見つめ合ってっ。
 いやあ、ヒューヒューっ!」
ジーク 「困ったな……。
 私はそういう趣味はないんだけれどな」
高浦 「何言ってるンすか、俺が気づかないと思ってるンすか?
 この俺が」
ジーク 「うーん……」
高浦 「ほら熱烈な視線を送られていたじゃん。
 イイなあ、モテるっていいなあ〜」
ジーク 「君もそれだけポシティブだったら、そういうこともあるのじゃないのか?」
高浦 「まあ、もちろんね。きっとね。そのうちあるよ。
 俺程のツキを持つ人間が、そんな……そんなことはないはずなんだ……。
 はずなんだけど、なあ……?」
ジーク 「不思議と、君のそういう噂や話は聞かないね」
高浦 「……。
 いやいいんだよ俺のことは、いいんだよ俺のことはっ!
 それよりもお前ら、どういう関係なんだよ」
ジーク 「どういう関係、とは……?
 寺崎さんとはさっき初めて会った、それだけ」
高浦 「え、へっ? それだけ?
 俺はてっきり曲がり角で『遅刻遅刻〜』とかさ、ばったり会ったとかさあ?」
ジーク 「……」
高浦 「なんだぁ……じゃあいいよ」
 なんでコイツ、こんなザンネンそうなんだよ。
高浦 「それはそれとしてさ。
 夕姫と朝海、あの2人って似てるよね?」
ジーク 「そうだね、よく似てる」
高浦 「お前さ、どっち好き? 
 どっち好み?」
ジーク  しばらく黙ってから、ため息をひとつ。
「だから私はそういう趣味はないのだけれどな」
夕姫  高浦さん……。
 この方は、いわゆるGLな方なのですかね。
 単にその女はズボラで、男だって高浦に思われてンじゃねえのか?
夕姫  あ、なるほど……。
GM  高浦はジークの返答にふに落ちないようなのですが、そんな中ジークの携帯に着信が入ります。
 どうも支部長から『君と夕姫は支部長室に来るように』との簡素なメールが着ているようです。
ジーク  事件……かな。
「すまない、次の授業代返よろしく」
高浦 「え〜、またお前らだけ? お前らだけ呼ばれるンすか?
 あの人もさあ、俺というものがありながら、なんでお前ら二人だけなんだか……」
ジーク 「君の強運は切り札だから、おいそれと使いたくないのだろう」
高浦 「なるほど、それは一理あるね。
 ――わかってンじゃねえか」
ジーク 「では私の分と夕姫の分と、代返よろしく」
高浦 「ああ。まあガンバんなっ。
 キビしいときにゃ俺に頼ってもいいんだぜっ」
ジーク  扉を開けたところで振りむいて、少しだけ笑みを浮かべる。
「ああ、そうさせてもらうよ」
 そういってから、支部長の元へ向かいます。
GM  扉を開けて教室の外に出ましたね?
 そうすると――
 ――ドン!
GM  教室から出る瞬間、派手な音がして誰かとぶつかります。
ジーク  恐らく私はびくともしない。
 ……相手にもよるか。
GM  相手が“夕菜”っていう女の子なのですが。
ジーク  それは私は揺るがない、夕菜の方が倒れてしまう。
 倒れた夕菜をみて、目を軽く丸くし逡巡している。
GM  倒れた衝撃で、夕菜は持っていたプリントを床に散らばらせてしまっています。
ジーク  それは、黙って散らばったプリントを集め始める。
 そしてある程度纏めてから「だいじょうぶか?」と夕菜へ手を差し伸べる。
GM  夕菜もプリントを軽く集めているのですが、ジークに手を差し伸べられるとその手を掴みます。
 ジークの手に縋るように捕まって立ち上がり、「だいじょうぶ? 怪我ない?」と心配しながら、ぶつかったジークの胸や顔に顔を近づけ手を当ててます。
 かなり近いです、『何これおいしいシーン?』て感じで近いです。
ジーク 「いや、特に怪我はない。
 そちらこそ、派手に転んだが大丈夫だったか?」
月見 「え、あ、うん。だ、だいじょうぶっ」
GM  夕菜は心配してジークに近づいてぶつかったところを看たりしているのですが、そのせいで何だかジークと夕菜の一帯が奇妙な雰囲気になっています。
 周囲の人間もそれを感じ取っているようです。がそれを別として、君は視線を感じる……。
ジーク  視線?
GM  君をどこからか、ある一点から、じっと見つめている視線を感じる……。
ジーク  何か視線を感じる、が、感じる程度に留めておいてとりあえず目の前を処理しよう。
 散らばったプリントを夕菜に渡してひとこと「すまなかった」
月見 「あ、うん。
 ごめんね、ありがとう」
 パタパタパタ……。
GM  そういうと夕菜は自分の席に戻っていくわけなの、ですが……視線はどうします?
ジーク  夕菜が行ったのを確認してから、視線を確認する。
GM  視線の先へと振り返ると、寺崎朝海と目が合います。
朝海 「……」
GM  彼女は一瞬きょとんとしますが、ジークと目があったのでにこりと微笑みを浮かべました。

...Scene is end.

Opening Scene 6
  次のシーン、今度は翔と紡君。
 このシーン、時間帯的にはいつですかね?
GM  放課後ですね。
 夕菜と3人での帰り道です。
 やっぱ、連れてかれるのか……。
GM  何のかんのと放課後に、結局夕菜に捕まってしまいましたねー♪

Scene is start...

 放課後。
 駅へ向かう、3人組――
 では、影で動こう。
 翔が今ツンの状態なんだけれど、ぼくはみんなと仲良くして欲しいと思ってる。
 なので夕菜を翔が行きそうな方向に誘導しながら、2人で挟み込む。
GM  そんなことに気づかない夕菜は、すごい楽しそうに語ってます。
「それであそこのタルトが絶品なのよ♪ イチゴがね、す〜っごい甘酸っぱくて」
 うぁ、シャレになってねえ……。
 翔は地元で仲間と行った“山登り”こと奇天烈発想甘味店での『イチゴパフェラーメン』体験がきっかけで、甘味類――特にイチゴやパフェといったスイーツはトラウマLvに忌避しています。
月見 「あ、やっぱりイチゴっていえば駅前のイチゴたいやきも外せないよねーっ。
 あの発想、そしておいしさ!」
 ますますヤべえ……。
 そうやってしゃべくんのに月見が夢中になってっと、そのたびに俺はどっかに行こうとする。
 で、翔がどっかに行こうとすると、こっそりと進路をふさぐようにボクは歩く、と。
「っ……。
 いちいちなんで邪魔してくんだよ、てめえはよ……っ」
 そこはにこっと微笑んでおくね。
夕姫  あなたたち、良いコンビですね。
GM  そうこうしているうちに、君たちは駅前へと向かう四つ辻にさしかかる。
 今まで楽しそうにしゃべっていた夕菜は、そこでふと何かに気付いたかのように呟く。
月見 「あれっ?
 ここって――こんなにひと、少なかったっけ?」
GM  呟いた瞬間、ここで全員登場になります。
夕姫  や、やっぱり……。
GM  画面は切り替わります。
 ジーク、君はH市のどこかでジャームと戦っている。
 ジャーム退治なぞH市では日課のようなもの、もちろん苦戦などしない。
 最期の一撃がジャームに届き、それで対象は沈黙する。

  『これで終わりだ』
 そう思った瞬間、突如訪れた不快な感覚が全身を突き抜けて行った――。
GM  また画面は移り替わります。
 夕姫、君は領域の中でジークが闘っているのを見ている。
 ジークが闘うその姿は肉眼では見ていない、けれど、自分はしっている。
 いま、ジークはジャームへと止めを刺した。

『これで終わり……』
 広げていた領域を解除しようと力を緩めると、ふと気付いた。
『この領域は自分の領域ではない。
 自分の領域が、侵蝕されている――……!』

 振り返った刹那、侵蝕の中心に居るのは見知った三人の姿。
 その瞬間、心臓に強い痛みが駆け抜けた。
GM  夕姫が見たのは四つ辻へとさしかかったこの3名、そして場面はまた戻ります。
 紡、君はこの感覚を知っている。
 どちらにも属さない自分だが、それでもこの感覚は何度も体感してきている。
 オルクス・シンドロームを相手にしたとき特有の、自分が飲み込まれるような感覚。
 それが今、自分がいる場所を中心に発生している。
 自分を中心?
GM  君がいる場所、そこが“全ての中心”であるかのような感覚に捉われ感じます。
 そして翔。その瞬間、君はもちろん気づいた。
 “ファタ・モルガーナ”
 ナイト・パブで見た写真に映るあの姿、それが脳裏にフラッシュバックする。
 自分は今、奴の手のひらの上にいる。

『喰われているのは、自分の方?』

 受け取ったデータが正しければ、この状況は非常にまずい!
 クソ、月見が傍にいる……っ!
 ≪ワーディング≫展開、月見を気絶させて抱えあげる。
GM  君が≪ワーディング≫を張ろうとした刹那――
 「あれ?」
 声を発した月見夕菜の足元に、白い影が渦巻いている。

 刹那。
 音もなく、その影が弾ける。

 白い影は無数の触手状の槍と化し、彼女の身体を貫いた。
GM  翔の≪ワーディング≫が間に合わない。
 彼女が白影の槍に貫かれたその状況、それが全員の視線の先に見えている。
月見 「……なにこれ……私、死ぬの……?」
GM  貫いた白影の槍はすぐにほどけて散り、夕菜は赤の雫を散らせながらどさり――倒れ込む。
 倒れ込む前にこっちに引き寄せ、抱え込む。
GM  翔が夕菜を抱え込んだ、そのシーンが画面に映し出されている。
 その先、はるか向こう側では陽炎が揺らめいている。
 四つ辻のはるか先に、白い服の少女が立っている。
 白い服。白い髪。白い肌。
 ――赤いリボン。
 

――フラッシュバック。

 白い壁。
 ねこのぬいぐるみ。
 シーツの匂い。
 格子の窓。

 滑り台、先生の椅子、誰も居ない部屋、白い天井、桜の花びら、白い白い記憶の海――


音が、消えた気がした。


 白い服の少女。
 前髪に隠れてその表情は見えないが、口元だけが動く。
 君たちに、唇の動きを読ませるように。

「ねえ、ゆきちゃん。今日だけだから。リボン、とりかえっこしようよ。
 ウ・ラ・ギ・リ・モ・ノ」

 少女の口元が、ひときわ大きく笑みに歪んだ――

...Scene is end.