バックトラック/Back Track

 バックトラーック!
ジーク  本番は、ここからだ。
 本番、ねえ……。
 俺は絶対帰ってくるぞ、侵蝕率110%でロイス1個も切ってねえよ。
夕姫  な、なんですって?!
 私侵蝕率191%、ロイスの残りは4つなのにっ。
 は、ははは……。
 とにかくGM、今セッションのEロイス、全部でいくつでした?
GM  その前にバックトラックの説明をします。
◇バックトラック判定
 タイタス化していないロイスの数だけダイスを振り、出た目の総計を侵蝕率から減らします。
 Dロイスはこの時ロイスとしてカウントされないから注意してください。
 もしセッション中の敵役にEロイスがあった場合、その数だけ追加してダイスを振ることが出来ます。

 その結果、侵蝕率が100未満になれば今まで通りの自分・日常へと戻れます。
 侵蝕率を見て戻ってこれない!? と感じたら残ったロイスの倍の数を侵蝕率減少に持ち込む『倍振り』を宣言することもできます。
 ――がその場合は当然ペナルティ。アフタープレイで貰える経験点が一気に減ってしまいます。

 一度の減少で戻ってこれなかった場合、最後のチャンスがあります。
 後1度だけ、ロイスの数だけダイスを振ってその総計だけ侵蝕率を減少させられます。
 この上でまだ侵蝕率が100%以上だと、その果てに待つのは己自身の崩壊。
 レネゲイドに身も心も凌駕されてジャーム化し、NPCとなってしまいます。
GM  Eロイスはいーち、にーい……10個ですね。
 なおEロイス分のダイスは振らなくて平気です、振らない選択肢もあります。
夕姫  かける君の場合は6D10でAll1という奇跡を起こさなければ♪
 ……。
 ヤって欲しいのかよ。
 ぼくはEロイスがあっても戻ってくるのキツそー、侵蝕率191%で残りのロイスが4つ。
ジーク  私は侵蝕率175%、残りのロイスは3つ。
 侵蝕率110%、残存ロイスは6つ、Eロイスによる追加ダイスは放棄で等倍振り宣言。
 (ざらざらっ)出目24で86までバック、よゆー。
ジーク  (ざらざら×3)――良し、追加振りで帰ってきた。
 けぇり。
 ……って、追加振り? 3倍振ったのか?
ジーク  3倍振った。
 Eロイス分で46、最初の2倍振りで22振って107、追加振りで帰還。
 あ、あっちゃー……経験点が……。
GM  今回はバックトラックで帰還するのはかなりシビアに設定してますからねえ。
 紡君も夕姫もひとごとではありませんよ?
 Eロイス分で2人とも49減らしたようですが、それでは期待値的にはジャーム化がありえる数値ですからね。
夕姫  だ、黙っててください!?
 わ、私は『倍振り』を宣言します。
 ぼくも『倍振り』で行きます。
――ざらざらざら。
夕姫  あ、戻ってこれた戻ってこれたっ。
 ぼくは95までバック、帰還成功っと。
夕姫  (数え計算して)――えーっと、結局102までバックし――追加振り行きます。
――ざらざらざら。
GM  夕姫の帰還に必要な数値は残り3、振れるダイスは4D10。
 さすがに帰還しないわけがありませんがね。  
夕姫  でもこんな時に限って高い目を振る……最初っから出して欲しいのに……。
 ま、無事に戻れてよかったな。
ジーク  おかえり、2人とも。
夕姫  経験点とは何だったんでしょうか。
 正直、あのコンボをやらなくても普通に勝てた気がします、あのコンボとは何だったのか――。
GM  夕姫は自分を追い込むためのキャラにしてきましたからね。
 さて。
GM  バックトラックも終わりまして、次はエンディングなのですがどう行きましょうかね?
 『我こそは先に!』という方はいらっしゃいますか?
夕姫  多分私とかける君は決まってますよね。
 あ?
夕姫  だってかける君はファルスハーツに行ってセルリーダーぶん殴ってくるんじゃないですかね?
 私もUGNに行って支部長殴ってる可能性、高いのですよね。
 そこは正解。
 でもその前に、あのクソ研究者のところいってコントローラーぶち壊しておきたい。
夕姫  あ〜、それはそうですね♪
 だろ?
 さっすがに自分の命、握られてンのはイヤだしな。
GM  では、クライマックス・フェイズの続きのシーンを1シーンだけ挟みましょうか。
Insertion Scene

Scene is start...

 蜃気楼の魔女はもういない。安らかな顔で親友の腕に抱かれている。
 戦意なぞ既に霧散し、倒れた朝海を抱きとめるジーク。
 全てが終わった。
 静寂の中、喪失感と共にみな一様にそういった気持ちになっている。

「まいったな。
 私の最高傑作が、こうも簡単にやられてしまうだなんて」

 唐突に静寂の中に響く声。
 後ろから、一同の気持ちをまったく厭わぬ不躾な、低い男声が響いてきた。
三坂 「全くこれは想定外だ。
 やはり変なリンクなどというものは、残しておくべきではなかったな」
「……」
 黙ったまま次の瞬間身をひるがえし、その声の主に向かい攻撃を仕掛ける。
GM  三坂はそれを見て、スイッチを押し電撃を放とうとするのです、が――翔の方が早いです。
 顔面に膝を思いっきりブチこむ。
ジーク  彼は私も一発殴りたい。
 スイッチに間に合わず身体に電流が奔る。のだが、歯を食いしばってそのまま殴りつける。
 ドグッ、ガッ!
GM  2人に思い切り殴りとばされ、変な音がするとその拍子にコントローラーがカラカラカラ……
 三坂の服のポケットから、床の方へと落ちては滑り転がっていく。
 ガン!
 一足飛びでコントローラーへ跳んでは踏みつけ破壊する。
GM  三坂仁義は抵抗する様子もありません。
「ああ、しまったなあ。これでは私は殺されてしまっても文句は言えないなあ」と自嘲めいた笑みを浮かべています。
 ジークに対して目配せする。
 意味はもちろん『殺っていいか』な目と表情。
ジーク  私はいっこだにしていない。
 一発だけ殴ったら朝海の事を抱きかかえ、この場を去る。
 誰か止めるか? 止めなかったらこのままこのくそ野郎を殺す。
 三坂の胸倉掴んでは、流れる血を腕に纏い、歪んだ鉤爪と化させてそれを振りあげる。
夕姫 「かける君!」
 ――ぴたり。
 後ろからのユキの声で制止し手を離す。
夕姫  朝海の“愚者の黄金”を手で掬いとります。
「先生。
 私が持っているのもおかしいですけれど、これは私が貰っていきます。良いでしょうか?」
三坂 「ああ、好きにしたまえ。
 それはただの失敗品。それに纏わる計画に関しては、既に失敗しているんだ。
 それが成功さえしていれば、こんなことにはならなかったんだよな……。
 持って行きたまえ、好きにすると良い」
夕姫 「はい……先生、今までお世話になりました」
 ぺこりと頭を下げ、私もこの場を去りましょう。
GM  さらに翔の方を向いては起き上がり、三坂仁義は続けます。
「君はどうするんだい? 私が憎いかね?」
「憎いかどうかといわれたら憎くはない。たんに命を握られているのが嫌なだけだ」
三坂 「そうか。
 安心したまえ。あの機械は1つしかない、もう君は自由だよ。
 もっとも、そうそう君に干渉するつもりはなかったのだがねぇ」
「その言葉をにわかに信じられると思うのかよ、アンタが造ったんだろ?
 アンタが同じような機械をもう一度、造れないわけがねえだろう?」
三坂 「そうとも、全て私が造った。
 あれも、これも、それも――君たちもだ」
 忌々しそうに舌打ちを1つ。
「造ってもらったことに関しては感謝する。
 ただ握られてるのはガマンならねえ、もう一度造られるのもメンドウだしな」
 そういえばもう一発、三坂の顔面に向かいストレートを叩きこむ。
GM  三坂仁義は抵抗するそぶりもなく、顔面への一撃をもろに受ける。
 吹き飛ばされ、顔から血を流しながらもそれでも彼は不敵に笑っては、床へと崩れ落ちます。
 パンパンと手を叩いてから、黙って俺もこの場を去る。
 う〜ん。
 これはみんなの行動を待ってたかいがあった、かな?
ジーク  おや? 最後に何かするのかな?
 うん、させてもらうね。
 1人、1人と人が去り、静寂が支配するがらんどうの白い部屋。
 血を流し倒れる三坂仁義、彼の目が覚めるころ――

 紡――否、紡を核にした仲間達――ぼくたちは、三坂仁義へと凛と厳かに話しかける。

「「生み出してくれてありがとう。
  でも、あなたを残していくわけにはいかない」」

 どろり。
 言うやいなや、死とも見まごう影の闇が、三坂仁義が倒れている床を中心にして広がっていく。
 底なし沼のようなその影が、三坂仁義をゆっくりと喰らっていく。

「やれやれ……まあ、こういう死に方も、無しじゃあ……無い……」
 飲み込まれていく白衣の研究者は、静かに、不敵に笑うと、闇へと飲み込まれて消えていった。

...Scene is end.