エンディングフェイズ/Ending phase

  エンディングフェイズです。
 っても俺、ヤるこた決まってるンだとしか言えねぇんだよな。
 例のナイト・パブ行って“首つりジャック”はブン殴るだけぶん殴ってくる。
夕姫  私も決まってはいるのですが、正直、かける君とのシーンも造りたいのですよね。
 あ? ンじゃそっちにするか?
 とりあえず連中はブン殴ってきたてことでもイイぞ俺は。
GM  全員好きにしろよ。
 エンディングが2回以上あってもいいよ。満足いくようにやってくださいよ。
夕姫  ああGMがブン投げたっ。
ジーク  完全に一仕事終わった顔になっているな、あのGM。
GM  満足いくように、やりたいことをやると良い。
 もっとも1人1シーンずつで締めた方が締まりが良くなるのですけれど、ね。
夕姫  あー……じゃあ私阿東さんところに行きません。
 エンディング、SSにして持ってきても良いですよね?
GM  好きにしてください。
 シーンを思いついた人からエンディングを始めてくださって結構ですよ。
ジーク  では私から。
夕姫  あ、どうぞ。
ジーク  ……あれ、良いのか?
 ユキは場面が思いついてるだろうけれど時間食うンだろうし、紡は判らん。
 俺に関して言やぁ、誰とも競合しねえから後でも先でも別に構わねえ。
 とはいってもPC1は最後にした方が締まりは良いだろうから、翔から夕姫、ぼくとぐるっと回って最後にジークのエンディングで良いんじゃないかな?
 あー……だな。
 ンじゃ俺からイくか。
Ending Scene 1
Side:Kakeru

Scene is start...

H市某所。
人目を避けるよう薄暗く、されど人が集うナイト・パブ――
 “首つりジャック”のいつもの居どころ、そこにさっさと向かいます。
「ういーっす、任務終わりましたー」
塩見 「おっつかれー」
 彼を見ると、右手を軽く上に掲げながら歩みを止めずに近づいていく。
「ザンネンながら、死体は持ってこれなかったンすけどねっ」と言うが早いか距離を詰め、掲げた腕に血を纏い紅の鉤爪を造りだす。
 エフェクトを用いた全力攻撃、鉤爪を塩見へと容赦なく振り下ろす。
塩見 「うぉぅ!?」
GM  不意打ちに驚き一撃を喰らう。
 喰らいながらも彼はオーヴァードなので、致命傷を受けようとも瞬く間に再生をしていきます。
塩見 「なにをするんだよお前は」
「自分の心に聞いてみろ」
 ぴしゃりといった後に手をパンパン。はたいてレネゲイド活性化を解除し血を血へ戻す。
「とりあえず仕事は終わりました、報告も終わりました。ってことで」
塩見 「あ、ああ」
 間。
塩見 「まあ、さ? 世の中そんな悪いトコロだらけじゃないよ」
夕姫  あなたが言うなっ?!
「あ〜……正直この力や実験体だったこと、それ自体は感謝してます」
塩見 「そうかい」
「一発殴んなきゃ気が済まなかったんで。そんじゃ」
塩見 「なるほどねぇ」

...Scene is end.

夕姫  いいなあファルスハーツさばさばしてて、そっちに行きたい……
 私阿東支部長と話したくありませんよ。
 もともと“首つりジャック”と俺、こんな感じだったしなあ。
Ending Scene 2
Side:Yuki

Scene is start...


 真境名夕姫の未来

 いつもの喫茶店、いつもの席に座って外を見た。
 昨日と今日とでその風景が変わったりはしない。見慣れた、ガラス越しの街並みが視界に視界に移り込むだけだ。少し目を凝らすと、窓ガラスに反射して自分の顔が移り込んでいるのがわかる。そこに朝海の面影を見つけて、私はうつむいた。
 ポケットの中に、青いリボンが入っている。捨てようと思っていたのに、何となく手放す気になれなくて、結局今日まで持ち歩いていたあのリボン。朝海は、私がこれを持っていることを認めないだろう。でも、捨てるわけにもいかない。許されなくたって、嫌われたって、私はこのリボンを捨てることは出来ないと思う。
 だけど、……特別な意味なんて何もなかったはずのこのリボンが、今は、どうしようもなく重く感じるのだけは、なんともしがたかった。
 沈みがちになる思考を、ふとコーヒーの香りが現実に戻した。
 冷めてしまう前にと手を伸ばして、一口だけ口に含む。
 苦かった。
 こんなに苦いものでした? と眉をひそめて、テーブルの隅の角砂糖に手を伸ばした。今まで、私は何を飲んでいたんだろう? 毎日のようにここにきて、コーヒーを飲んでいたのに、味なんかぜんぜんわかっていなかった。
「お気に召しませんでしたか?」
 いつの間にかマスターが私のテーブルの横に立っていた。
 心配そうに私の顔を伺って、「お取り替えいたしますか?」と聞く。
「いえ、ごめんなさい。味変わりましたか?」
「いいえ、そういったことは御座いませんが……」
「ごめんなさい、変なことを聞いてしまって」
「そんなに謝らないでください。お口に合わなかったのなら新しいものをお出ししますので」
 笑顔でマスターが立ち去ろうとするのを、私は止めていた。口にあわなかったんじゃない。味が変わったのでもない。
「多分、私が変わったんです。コーヒーはいつも通りです。いい香りだし、……美味しい」
 そういうと、マスターはぺこりと頭を下げた。いつも冷静なマスターが、少し照れているような気がして、ちょっとだけおかしかった。
 私の世界はガラスと領域とで隔てられている。
 外にでるのは怖いから、ガラス越しに物欲しそうに眺めているだけだった私と。
 籠もってしまって、見ようともしなかった私の内側の世界。
 取り返しのつかない過ちと、ポケットの中の青いリボン。
 私は、これからどうやって生きていけばいいのですか?
 考えてみたのだけど、答えは出そうになんかなくて。
 マスターがすぐ近くで心配そうに眺めているのがわかっていたのに、私は再度顔を埋めた。
 コンコン、と窓ガラスをたたく音が聞こえた。
 無視しようとしたのに、そうしているとその音はだんだん乱暴に、どんどん力強くなってくる。
 見かねて、マスターが声を出す。
 ガラスをたたくその人じゃなくて、私に。
「お客様」
 と、一言だけ。
 顔を上げて、窓の外を見る。
 そこに、かける君がいた。
 窓ガラスの外なのに、かける君はなんだかいつも通りで、でも、どこか怒ってるような顔をしている。いつまでうじうじしてるんだ。顔に雄弁にそう書いてあるような気がして、そんな簡単な事じゃないんです、と、なんだかこっちまで叫びたくなってくる。
「よかったですね」
 不意にマスターが言った。
「え? どうしてですか?」
「ずっと、この店で人をお待ちになられてたでしょう?」
「あの……、そう見えましたか?」
「はい、先日訪れたあの年輩の方かとも思ったのですが、お会いしてもとても嬉しそうには見えなかったので、心配していたんです」
「心配って……」
「いえ、過ぎた事を申しました」
 何事もなかったかのようにマスターがカウンターの内側へと戻っていく。いつものように澄まし顔で、グラスを磨き始める。
 心なしか、口元が笑みの形の歪んでいるように見えるのは、気のせいなのだろうか?
「あの、お会計を……」
「今日は奢りです。早く外に出ないと、彼氏に怒られてしまいますよ?」
「……そ、そんなんじゃ」
「それに、待ち人にコーヒーを奢るのはすべての喫茶店経営者の夢なんです。ですから、お気になさらず」
 マスターが楽しげにそう言って、グラスを棚に並べるために背を向ける。
 からんからんと、待ちきれないほど軽快な音をたてて扉が開いた。


「私、UGNをやめようと思うんです」
 たくさんの人が歩いている。すぐ横にはびゅんびゅんと車が行き交っていて、壁なんてどこにもないごちゃ混ぜの世界を、私はかけるくんと歩いている。一人では気詰まりなこの世界、でも、今はそれを感じない。周りにいるたくさんの人たちより、よっぽど存在感のある人が隣にいるから。
「お、FHくるか?」
「いきません」
「はぁ? じゃあどうすんだよ?」
「とりあえず、紡くんみたいにやってみようかなと思います。UGNの理念も、私はわかる気がするんです。でも、ちゃんと自分で考えてどうするのか決めたい」
「あのなぁ……」
「聞いてください。場合によっては、またかける君とも戦うことになるかもしれませんし、殺しあわなくちゃいけないかもしれません。そのときは、ちゃんと殺してください。私は、かける君には勝てませんもん」
「バカじゃねーの? おまえは考え過ぎなんだよ! うじうじうじうじ。イライラさせんなよ!」
 勢いなのかもしれない、本心なのかもしれない。
 でも、そういうの、関係ない。

「俺がほかの奴に譲るわけねーだろ」
 当たり前に言ったその言葉を、私はきっと忘れない。
 もう二度と、絶対に忘れない。

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...Scene is end.

GM  (微笑んで、夕姫の方を見つめている)
夕姫  ……な、なんですかその笑顔はGM。
GM  うん、そうだね。
Ending Scene 3
Side:Tumugi
 ぼくはまず、病院に顔を出します。
GM  あ、はい。
 ……。
 いま、『そういえばいたな』って顔されましたけど、月見さんに会いに行きます。
 ず〜っとアイツのトコなんざ、いってるヒマなかったもんなあ。
 俺もちょっと顔出したいンだが、エンディング出てもイイか? 困ンなら要らねえ。
 あ、いいよ。

Scene is start...

H市にある病院、月見夕菜の部屋。
 個室には入らずドアのガラスから様子を見、元気そうだなと思ったらこっそりを顔を出す。
 顔を出したところに夕菜と眼だけ合わせると、手を振りそのまま病室を去る。
 夕菜はぼくには気づくけれど、ぼくへと声をかける間も無くぼくはいなくなる。
 そして去る際、ぼくは翔とすれ違った。
 なんか紡のエンディング、ジャックした形になりそうだな、すまねえ。
 てことで病室のドアをコンコン。
月見 「どうぞ」
 ぼうっとした、元気のなさそうな声。
「失礼します」といってガラッ。
 病室に入りお見舞いの果物を持ってきては「はい」、渡す。
月見 「あれ、翔君なんだ。
 さっき、紡君がいたような気がしたんだけれど……」
 ちょっと考えてから「まあ――悪かったな、俺で」
月見 「そ、そんなことないってっ。そういう意味じゃないからっ」
 手をパタパタと振り、ちょっと慌てて否定します。
 少し間をおいてから月見の様子を見て言葉を選ぶ。
「まぁ……元気そうだな」
月見 「うん、そうだね」
「身体の方は?」
月見 「ぜんぜん大丈夫。なんかよくわからないんだけれど、怪我したのがうそみたい」
「じゃあ、嘘だったんじゃねえの? よくあることじゃん」
月見 「そっかぁ。
 でも嘘だったのなら、どうせならすぐ退院したかったなぁ」
「退院できねえの?」
月見 「何かよくわからないけれどたくさん検査してる」
「ごしゅーしょーさま」
月見 「検査・検査って朝から晩まで、も〜っ。病院のご飯おいしくないし―っ」
 会話の間に目を細めてオーヴァードになってないかどうかは確認してみるンすが……?
GM  覚醒はしてないですよ。
 ふぅ、そいつァ良かった。
「病院のメシなら元気になるからイイんじゃねえの?
 マズイつったってそもそもアンタは元気あり余ってるみたいだし――」
月見 「食べたいなーっ、あそこのお店のイチゴタルト食べたいなー」
 ヤべえ聞いてねぇ上にフラグ立ってやがる?!
「それじゃ俺はこれで帰るわ」と慌てて切り上げて病室から出る。
月見 「誰か買って来てくれないかな―」じーっ。
 コンコン。
 ――ガラッ。
ジーク  ちょうどその時病室に訪れた私、左手に持つのは何かの包み。
 空いている右腕で病室を出ようとした翔の腕をひょいと掴む。
「ってちょ?! おいおいおいっ?!」
ジーク 「好きだって聞いたから、お見舞い」
 そういうと左手の包みを、ゆっくり夕菜へと手渡す。
月見 「え、え、え?! これ、あのお店の?! あのお店のイチゴタルトじゃないっ」
ジーク 「ちょっと、大きかったね」
月見 「ジーク……ほんとよくわかってる、さいっこーっ。私ジークの友達でよかったっ♪」
 感無量な言葉と様相、喜びを隠せず上気する。
ジーク 「じゃあ、3人で食べようか」
 じたばたじたばた、必死でもがくもののジークの腕から逃げられない。
「か、帰らせろよおいちょっと待っ?! お前ら2人で喰やイイだろうがよ! 」
月見 「なんで翔君食べないのこれ、おいし――」
「甘いのは嫌いだっつーの!」
月見 「またまたぁ。
 そういう偏見持ってるからおいしくないような気がするんだよ」
「ンなこたねェ!!」
ジーク  逃げようとする翔をしっかり捕まえたまま、至極真顔で彼へ言う。
「済まんな。
 間違って5人分くらい買ってしまってな。2人で食べるには大きいのだ」
「紡とユキでも呼び出せよ俺はいらねえって!!」
 コンコン。
月見 「はーい」
夕姫  からッ。
「あ、これ。お見舞いの品。
 ぎょうざいちご――じゃなくって、ぎょうざ・ばななちょこぱふぇ」
 て、てめえら全員知った上で……お、鬼がいるっ……。
GM  翔の甘いもの関連のトラウマなんてキャラ達は誰も知らないのですからプレイヤーの親切でこそあれ意地悪はひとかけらもないですよ。
 遠慮なくどうぞ、好きなことをやりましょう。
月見 「ユキちゃん、前から言おうと思ってたんだけどね」
夕姫 「?」
月見 「あのね、女の子はね、お見舞いにね、ギョウザは持ってこないの」
夕姫 「え? このギョーザ、バナナチョコパフェだし、あなた好きそうだと思って」
月見 「ユキちゃん。あなたの感覚は何かちょっとズレてる気がするの」
夕姫 「でも、好きでしょう?」
月見 「好きだけど! 好きだけどなんかちょっとズレてると思わない?!」
夕姫 「だって甘いものだし――」
 この間もじたばたして逃げようたしてンだ、が――
ジーク  当然のように私ががっちり捕まえている。
夕姫 「食べてみて? 一線越えてみたら結構おいしいから」
月見  では恐る恐る口にして「何これ、新しいおいしさ?」
夕姫 「ね、負けた気分になるでしょう?」
 このお話自体はだいぶ内輪ネタ、放っておくと延々と続きます。
 なのでこの辺で切りましょうか。
夕姫 「甘いものが嫌いな人なんていないですよ。ね? かける君」
 当然のように顔がものすご〜く引きつってる。
月見 「翔君これおいしいよ食べてみてっ」
「いらねーって!!」
ジーク  そろそろ四十九院も入ってくるころ合いかな?
 あ、ぼく入る予定はないんだ。
 ちょっとやりたい演出があって、みんながやりたいことが終わるのを待ってる状態、かな?
GM  ではこの4人が病室で騒いでいるころ――
 ワイワイと騒ぐ病室。
 月見夕菜が死んだという事実なぞ“嘘”のよう、そんなことなどそこには微塵も感じられない。
 まさに平和ともいえる、そんな光景。
 そこからそっと離れれば、外に流れているのは閑静な日常。
 さらさらとそよぐ風、のどかな水面、街を歩く人々の靴音。
 水車が水を汲んでは流すかのように、それらはH市をゆっくりと流れている。
 いつもの日常。

 H市の外れの方にある高台で、“紡”はそれを、その街を一望している。

 はらり。
 そんな中、しおりが一枚空から降ってくる。
 桜の押し花を留めた、あのしおり。

 降りてきたそのしおりをそっと掴むと、一目、ちらりとみやる。
 「「ばいばい」」
 しおりを一瞥しそう言うと、彼はそれをそよぐ風にそっと流しては、背を向けH市を後にした。 

...Scene is end.

Fin.