Scene is start...
石堂の影が3D化し、UGN支部のホテルの跡地を新が去ってから1時間後ぐらい。
そのころ、またモルペーから連絡がくる。
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小春日 |
はいはーい。出るっすー、電話出るっすよー。 |
GM |
なおモルペーからは『一人で来い』って注文があったよ。
受け渡し場所は、レンタルルームの一室だ。 |
小春日 |
いくっすよー、レンタルルームいくっすよー!
到着するなりノックして、合言葉代わりに狭い範囲の≪ワーディング≫。 |
GM |
では人気のないレンタルルームの一室“105号室”
機械音声で「<<どうぞ……>>」と一声。 |
小春日 |
がちゃりとあけて、「失礼しまーす、はいるっすよー」 |
105号室内部。照明が落とされた薄暗い室内には、簡素なテーブルとソファのみ。
そのソファに、ひとりの仮面をつけたスーツ姿の人物が座っている。
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GM |
体型的に女っぽい。おっぱい。
仮面は、仮面舞踏会とかにありそうなヤツで顔全体が覆われている。 |
小春日 |
「どもども、はじめましてー、やー、美人さんっすねー」 |
モルペー |
「<<こんにちは、コハルビさん。モルペー……です>>」 |
小春日 |
「こんにちは、“マスターレイス‘15”の小春日っす」
“マスターレイス” を 強調するっすよ。 |
モルペー |
「<<ええ、聞き及んでおりますよ、“マスターレイス”……>>」 |
小春日 |
「今回はお父様にお願いされたお仕事を手伝ってくれるそうで、どーもありがとうっすよー」と、あえて超作り笑顔で言うっすよ。 |
GM |
モルペーは値踏みするように足先から頭まで、小春日たんをじろじろ見てる。 |
小春日 |
にこにこしてる。 |
モルペー |
「<<その件ですが……残念ながら状況が変わりました>>」 |
小春日 |
「…………それはあれっすね。
こう、影が直立したとか“魔王”が五人になったとかいうそういうあれっすね?」 |
モルペー |
「<<……お詳しいですね>>」 |
GM |
室内の雰囲気が変わる。モルペーが小春日たんを警戒しているのが伝わる。 |
小春日 |
「そりゃあ、お仕事っすからねえ。ある程度現状は把握してるっすよ?
んでんで、具体的に何がどー変わって何がもらえなくなって何がもらえる話なんすか?」 |
モルペー |
「<<そう、あの事象は、聖痕の獲得数により“魔王”の特質が変化するということ……。
つまり、聖痕を全て獲得した“魔王”でなければ……コードウェル様のご期待に添えない、ということがひとつ>>」 |
小春日 |
「ふむ、お父様的には全部ないと駄目っすかー……」 |
モルペー |
「<<そして、もうひとつ。これが決定的ですが――“スレイヤ”ーが動きました>>」 |
小春日 |
「へー」(←知らない) |
モルペー |
「<<…………>>」 |
間。
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モルペー |
「<<…………クスッ>>」 |
小春日 |
は、優越感を抱かれた! |
モルペー |
「<<“スレイヤー”とは、13年前に“魔王”を滅ぼした特殊能力者。それまで沈黙していた彼が、聖痕所持者に接近しています。能力は未知数ですが、“魔王”復活の障害となるでしょう>>」 |
小春日 |
「まあ、とりあえず聞きたいんすけど、どーいう形で6つの聖痕を確保してて、今はどーなってるんすか?」 |
モルペー |
「<<……当然、聖痕所持者を打倒して。このワタクシの実力でね>>」 |
GM |
と、モルペーの足元から延びる影がググッと起き上がり、ハーピーのような翼人の形をとる。 |
モルペー |
「<<時間がありません。“スレイヤー”がなにがしかをしでかす前に、ワタクシが全ての聖痕を獲得し、完全体の“魔王”となる>>」 |
小春日 |
「へー、じゃあ、貴女がちゃんとお仕事してくれれば、私は楽して任務完了っすねー。ってことはこの段階になると、もう“魔王”同士の戦いでしか聖痕の移動は発生しないわけですか」 |
モルペー |
「<<小春日さん……貴女にはワタクシに協力していただきたい……>>」 |
小春日 |
「協力? あはは、“魔王”になるのを手伝えって? それともそのスレイヤー某の足止めっすか?」 |
モルペー |
「<<聖痕の移動……まだ実例がないので、それはなんとも>>」 |
新 |
私、実例……。 |
GM |
第2段階の時の実例ねwww |
モルペー |
「<それとも……試そうというのですか?>>」 |
GM |
空気がビリビリと震えて、モルペーの怒気が伝わってくる。 |
小春日 |
「え? 試す? いやっすねー、もともと聖痕を提供してくれるつもりだったんじゃないんすか? 結果的にはなーんにも変わらないと思うっすけど」 |
モルペー |
「<<『聖痕の提供』ではありません。『“魔王”の提供』です。つまり、このワタクシの提供です。
貴女が接触している、二人の聖痕所持者……石堂駆と天神新を誘い出しなさい >>」 |
駆 |
「(実は“魔王”知覚限界ぎりぎりで聞き耳立ててるとか言えないなこりゃ)」 |
小春日 |
「あ、最初から献身的な自己犠牲覚悟っすかー、なるほど。
だったらー……後は話は私がつけるので、貴女は私に聖痕を譲ってください、色々お疲れ様でした、お父様には私からご報告します☆」露骨に挑発的に言うっすよ! |
駆 |
「(おおおおい! 喧嘩売ってんじゃねーって!)」 |
GM |
その瞬間、ぶわっと熱気を帯びた怒気が部屋中を満たし、窓枠やトビラ、部屋中の家具がビリビリと振動しはじめる。 |
小春日 |
((ゝω・)v) |
モルペー |
「<<……おやめなさい……貴女には“魔王”は務まらない……>>」 |
駆 |
「(……あ、でも結局やることになるならかわんねーのか)」いつでも飛び込めるように立ち位置を変えます。 |
モルペー |
「<<コードウェル様には……このワタクシこそが……ふさわしい……>>」 |
小春日 |
「貴女もあんまり“魔王”って感じのキャラじゃないっすけどねー、なんていうすか、美人秘書的な? 幹部Bみたいな格好してるじゃないっすか」笑いながら動じずに言って「……マスターレイスには一人足りとも、『自分がお父様にふさわしいからそばにいる』なんて思ってる子はいないっすよ、おねーさん?」戦闘態勢に入ります。 |
GM |
影絵のハーピーがバサっと翼を広げ、≪アクティブソナー≫を使用するよ!
隠密中の石堂くんと[知覚]で対決だ!! |
駆 |
知覚対決など必要ないわああああああああ!!!
窓を突き破って突入します。サイドアタック! 超音波が広がると同時に、ソナーで知覚できるかどうかのスレスレで突入。 |
GM |
あ、きちゃったw |
駆 |
隠れる気ないっすね!!! さすが駆くん!!!!!!!!1 |
モルペー |
「<<この、下衆どもがぁぁああああああ!!>>」 |
GM |
影絵のハーピーが翼をひろげ、その口から轟音が響き渡る!
光が歪み、空気の波が可視化する! |
駆 |
演出で影に向かって一撃叩き込む! |
小春日 |
「駆くーん、何でこの人逆切れしてるんだと思います?」いい笑顔で。 |
駆 |
「なんで……ってそりゃお前が宣戦布告したからだろうが……わかってるくせに」 |
GM |
石堂くんの一撃を受けて影絵の轟音波長が乱れ、破壊力が分散する! |
駆 |
「女の嫉妬って怖いっすよねー(しみじみ) おお、駆くんかっこいー!」 |
GM |
だが、そのひと部屋を破壊し、壁に大穴を開けるには十分。 |
小春日 |
一応、他の部屋に被害が行かないように振動波で演出防御。 |
GM |
すさまじい破壊音が周囲に轟き、砂塵があたりを舞う!! |
新 |
≪ワーディング≫&轟音って、割と遠くからでも判るよね、きっと……。 |
GM |
すげー音だから、オーヴァードならわかるはず。ハヌマーンならとくに。 |
新 |
ハヌマーンじゃないけどハヌマーン喰ってる……適度に登場フラグが立った、うん、たった……。 |
GM |
登場は自由だよっ。 |
モルペー |
「<<……なるほど……あくまでも石堂を……“愚者”をサンプルにと……そういうことですか>>」 |
小春日 |
「いやぁ、友だちと顔合わせさせるにはちょーっとおねーさんの事を知らないっていう話っすよー」 |
GM |
そして、石堂くんは、さきほどの轟音攻撃が、堺や牛男にトドメさそうとしたショッピングモールでのあの遠距離攻撃だとわかってよいよ。 |
駆 |
「なるほど、遠くからちまちま衝撃波うちこんでたチキンはあんたか」 |
小春日 |
「それに、どうせ二人と会話するなら顔見知りの私の方が都合がいいっすし。おやおや、お父様の部下は合理的判断ができないぐらいダメダメみたいっすねー、ふふふ」 |
モルペー |
「<<……(ぐぬぬぬ)>>」 |
駆 |
「っていうか“愚者”ってなんだ“愚者”って。馬鹿にしてんのか!」(←馬鹿です) |
小春日 |
「ちゃーんと、ご報告させていただくっすね♪『自分の手柄を優先して、協力をしぶっちゃったお馬鹿さんがいたんすよー』って、お・と・う・さ・ま・に♪」 |
モルペー |
「<<……よいでしょう。もはや交渉は決裂。ワタクシとしても、話し合いよりもコチラの方が得意なのでね……>>」 |
小春日 |
「…………く、何で仲間同士で争うことになっちまったんすか!?」 |
聖痕(駆) |
「悲しい話だな……」 |
モルペー |
「<<まとめて消し去ってあげましょう。石堂、あなたの数少ない聖痕はその後、回収します>>」 |
新 |
「そっか、じゃあその方が早いかな――おばさん」
ずるり、モルペーの影からいやな音をさせてその場に現れます。 |
GM |
なんてところから!? |
新 |
ウロボロスだから★ミ あとまあ、聖痕No.と形が“死神”だからっ。 |
小春日 |
「あ、おーい! あらたっちゃーん!」ぶんぶんと手を振り。 |
モルペー |
「<<……きましたか……天神!>>」 |
新 |
抑揚無く淡々と「まずは、初めまして。そして、先ほどは、仲間をどうも、ありがとう」 |
小春日 |
「おやおや、駆くん、私達よりいささかシリアスっすよ?」 |
駆 |
「あれ……あらた、なんか怒ってる?」 |
新 |
「うん、ちょっと頭キテルから――派手にぶっ壊すかもね」
広範囲≪ワーディング≫宣言、空気をどす黒く塗り替えましょう。 |
小春日 |
「…………あ、ほんとだ、すごい怒ってる」 |
駆 |
「うわ……これは相当きてるな……」 |
モルペー |
「<<……仲間? くくっ……“捨て駒”のまちがいでしょう?>>」 |
小春日 |
「あ、捨てられる気でいてくれたんすかー、それならそうと早く言ってくれればよかったのに」 |
新 |
あ、ちょっと確認で。GM、支部の壊滅で死者は出ました? |
GM |
死者は出なかったよー。 |
新 |
ありがとう。じゃあ何とか最期の一歩は止まれるか、な……? |
モルペー |
「<<くくっ……もとよりお二方は誘い出して始末する予定でした。これは、手間が省けました……>>」 |
GM |
影絵のハーピーが再び翼を広げ、周辺の大気を震わせ、波が視覚化する!
さきほどよりもずっと強力だ!! |
駆 |
「げ、思ったより強そうだ……春日! あらた! 協力してやるぞ! いいな!」 |
小春日 |
「らじゃー、ふふん、これで聖痕の移動が出来れば話は楽になるっすねー」 |
新 |
軽く目を細めて波を受ける。
「――うん、宜しく。かたき討ち、するから」 |
GM |
「<<ちぎれて細切れろ!!>>」ハーピーが口を開けて、狂声を叫ぼうとした、そのとき――
ふいにモルペーが跳躍する。 |
――ズドンッ。
|
GM |
それまでモルペーが居た地面に、巨大な両手剣が突き刺さっている。 |
小春日 |
「…………おやおや?」 |
GM |
モルペーは、3人と剣が飛んできた方角から、距離を置いた地点に着地する。
「……いかんな。どうも投擲は苦手だ……」
そしてのっそりと、白髪の大男が剣が飛んできた方角から歩いてくる。 |
新 |
モルペーのほうに視線向けます。「――さっきぶりですかね、神谷さん」 |
神谷 |
「ああ……やぼ用でな……」 |
駆 |
「……お、おお? 新手か!?」 |
小春日 |
きょとんと新に顔を向けて「ああ、えーっと…………“スレイヤー”?」 |
モルペー |
「<<……“スレイヤー”……>>」 |
GM |
先ほどとはうってかわって、モルペーは冷静な色を帯びた目で神谷を観察している。 |
駆 |
「げ、“スレイヤー”ってあれか。“魔王”を滅ぼすとかいう……」 |
新 |
小春日には答えません、が「ちょうどいいので、あのおばさんの殲滅、手伝っていただけませんか……? “魔王”消去もかねて」 |
神谷 |
「……もとより……そのつもりだ」 |
モルペー |
「<<フン>>」 |
GM |
モルペーは≪瞬間退場≫を宣言。
影絵のハーピーが羽ばたいて、飛んでいった。 |
――パサッ。
|
小春日 |
「あー、いっちゃった……え、どうしましょ、この状況」 |
神谷 |
「…………腹……減ったな」 |
駆 |
ちらっ。 |
GM |
地面に突き刺さった両手剣をよっこらしょと引き抜いた神谷が、じっと3人を見つめるよ。 |
駆 |
「あー……えーと、おっさん。 俺も“魔王”候補なんだけど、そのへんどうなんだ?」 |
神谷 |
「あぁ……その話か。そうだな……」 |
駆 |
「…………」気は抜かず。しかしどこかのほほんと。 |
小春日 |
「ちなみに私は“魔王”候補でも何でもないけど“魔王”ほしがってる系女子っす」
駆くんの背中に隠れながらひょっこりいうっすよっ。 |
新 |
む、とした顔してからパンパンはたいて、≪ワーディング≫解除。
「どうしようもなにも。とりあえずアレ潰さないとじゃあるけれど、私ひとりじゃおっかけられないしなあ……ていうか、駆、いま“げ”とか言ったけど何、げ、って」 |
駆 |
「いや、だって俺ら“魔王”候補なわけじゃん。 立場的敵対関係……かもしれないだろ?」 |
新 |
「んー、消してくれる力を持ってるわけだし、“魔王”になりたいわけじゃないなら敵対にはならないと思うよ」 |
GM |
神谷はジッと石堂を見つめて言います。
「……神谷だ。“魔王”を打ち倒す“スレイヤー”だ……おまえは?」 |
駆 |
「石堂駆……あー……“魔王”候補?」 |
神谷 |
「そうか……石堂……駆……いい名前だ」 |
GM |
名前を聞くと、神谷は決断的な瞳で石堂君を見つめます。
「石堂」 |
駆 |
「……なんだい」 |
神谷 |
「おまえの聖痕をよこせ」 |
駆 |
「断る」 |
GM |
「……そうか」
そういうと神谷は、今度は新ちゃんのほうを見据えます。
「……天神……おまえはどうだ」 |
新 |
「……答え、判ってると思いますけど……」
ぼかしたけど聖痕は要らない、前にあった時に消去を依頼してるしね。 |
神谷 |
「……ならば、譲り受けよう。その意思を口にしろ」 |
駆 |
「ちょっと待った。アンタ、“魔王”になりたいのか?」 |
GM |
神谷はちょっと考える。 |
神谷 |
「……そうなるな」 |
駆 |
「そうか……。
じゃあ、このまま放っておくと俺とあんたは敵対関係、ってわけだ。それは困るな」 |
新 |
「え、でも、“魔王”になったら、ジャームになるのですよ、ね……?
それだと、神谷さん、壊れて破壊の権化になるだけでは……? 別の誰かに聖痕が集まった状態ならともかく、自分で自分を斬ることが出来るかも分からないですし」 |
神谷 |
「“魔王”とジャームは同一ではない……危険は増すが……」 |
駆 |
そんな中、きわめてそっけなく言い放つ。
「なーあらた。その聖痕俺にくれねーか?」 |
小春日 |
「(おやおや?)」 |
新 |
「ダメ。消してもらうために集める必要はあるけど、駆を“魔王”にしたいわけじゃないし」
極めて真面目に返します。
「――大体、このままとりつかれっぱだとジャームになる……」 |
駆 |
「同じ消すならあらたが持ってても俺が持ってても一緒だろ。あのおばさんもいることだし、狙われるやつは少ないほうがいい」 |
新 |
「おばさんに関してはこっちも用があるから、そこで駆に負ってもらわなくても大丈夫。
……支部、ぶち壊されたんだ……」 |
GM |
神谷は二人の邪魔にならないようにじっとみてます。 |
新 |
「狙われるのが少ないほうが良いなら、それこそ駆の聖痕、譲ってもらえない?」 |
駆 |
「あー……言い換えようか。“魔王”同士はお互い近くにいるとバレバレなんだわ。
あのおばさんは強い。正攻法だけじゃどうにもならないかもしれない。それなのに、近づくとばれるやつが二人もいても困るだろ?」 |
新 |
ちょっと考える。 |
駆 |
「復讐したいなら思う存分すりゃあいいさ。けど、準備が整ってないときにあっちからこられると、ただ単に聖痕とられるだけじゃあ済まないかもしれない。
でも、その点俺なら大丈夫だ。俺の脚はあのおばさんごときに捕まりはしない」 |
新 |
「うん。ただ……」
やっぱそこで駆に囮になってもらうのはまずいよなあ、の思考が働いてる。
かてて加えて聖痕に取りつかれてるとジャームになるというのもある。 |
駆 |
「必要ならどこまでだって逃げてやるさ。囮にしたって構わない。
っつうか、もとより俺の能力は囮向きなのさ。あらたが聖痕もってると、俺が囮になれないだろ?」 |
新 |
それはどうかなあという顔をしてから「――神谷さん。2人分の聖痕揃ってたら、“魔王”こんどは、消せますか?」 |
神谷 |
「聖痕を消す……それ自体は、今でも可能だろう。だが、そのつもりはない」 |
新 |
あれ? |
小春日 |
「はーい、んじゃ“魔王”になったら何するんすかー!」 |
神谷 |
「オレが“魔王”になったとき、オレはオレを殺す。それでゲームは終了だ、永遠にな。
このゲームは、オレが生きている限り、続く。“魔王”が誰になろうと、繰り返し、繰り返し」 |
新 |
あー……。 |
神谷 |
「オレは死ねない、オレは“魔王”しか殺せない。ならばオレが死ぬには“魔王”になるしかない」 |
新 |
そっか……とちょっと暗い顔になります。
が、死神ちゃんと神谷さんの言葉考えると納得できる……から、なあ……。 |
駆 |
ちらりと横目であらたをみます。 |
新 |
うー、という表情で、駆と視線あわせます。 |
GM |
新ちゃんの影――死神ちゃんが【今がそのときだよ】とばかりにうなづいている。 |
小春日 |
「ふーむ。
あなたが“魔王”になってくれると、生け捕り上等な身としちゃ駆くんよりやりやすいんすけどー」 |
神谷 |
「悪いが生け捕りはナシだ。即座に自害する」 |
小春日 |
「でも、駆くんがなんか、“魔王”になりたがってるみたいなんで。
すいません、私は駆くんの味方ってことで」 |
新 |
おそるおそる駆のほうに問いかける。
「何で駆は、“魔王”になりたがってるの?」
神谷さんは理由が納得できるけど……。 |
駆 |
「んー……“魔王”になれば、願いが叶うのさ」 |
新 |
「ぇ……ジャームに、なりたいの……駆……」 |
駆 |
「それよりもさ、おっさん。ひとつ聞いていいかな」 |
神谷 |
「……ああ」 |
駆 |
「実は俺、“スレイヤー”とか“魔王”とかよくわかってないんだけどさ。なんでおっさんはそんなに“魔王”と心中したがってるんだ?」 |
GM |
神谷がちょっと面倒くさそうな顔になった。 |
駆 |
「“魔王”になって生きるって選択肢もあるはずだろ?
それじゃなくても普通さ、どうにかして生きられるように頑張るもんだろ? なんで死ぬ?
なんで即座に自害するなんて、投げやりなことが言える?」 |
神谷 |
「オレの存在意義は“魔王”を殺すことだ。その意義を満たすために、このゲームが発生した。
くだらん聖痕のやりとりを終わらせるにはオレが死ぬしかない。それしか生きる道をオレは知らない」 |
駆 |
「俺は昔、陸上の選手だったんだ。だけど、オーヴァードになって走る意味を失った。どんなに努力しても一瞬で無駄になる世界があるって知った。努力する意味なんてないって思った。だけど、俺はまだ生きている。生きる意味を失っても、それでも死ねずにみじめに生き恥さらしてんだ。
なんでだと思う? これ、最近気付いたんだけどさ」 |
GM |
神谷はドキッとした顔をします。初めて目の焦点が石堂くんに定まる。
「…………なぜだ?」 |
駆 |
「多分、俺が死ななかったのは、生きてる限りどんなにみじめでも続いていくからなんだろう。
そうして続いていけば、目の前にふとした拍子に生き甲斐が転がってきたり、なんかどうでもいいことで楽しくなったり、いろいろあるからなんだろう。今回の騒動に関わって、そう思ったんだ」 |
神谷 |
「……たのしい……だと? この騒動がか?」 |
駆 |
「あんた、もう終わりだって目をしてるよ。“魔王”になって自分を殺したら、それで終わりなんだって。本当にそれでいいのか? あんたは目の前の簡単な選択肢に釣られて、なにか大事なものを見落としちゃいないか?
この騒動はぽっと出でも、俺に可能性を見せてくれたのさ。“魔王”になれば、レネゲイドを消せる……それってつまり、俺がこの先絶対にありえないと諦めてたことだ。そんなことが、ある日突然なんの予兆もなくいきなり目の前に現れた。
ははっ、馬鹿げてるとしか言いようがない。こちとらどれだけ悩んで苦しんだと思ってるんだ。でも……でもさ、わかった。生きてるだけでも、意味はあったんだってな」
|
神谷 |
「……実際に消せる保証は……どこにもないぞ」 |
駆 |
「そんなのどうでもいいんだよ、可能性があるって気付けただけで十分さ。
……で、あんた、今まで何してた?」 |
GM |
神谷の顔がこわばります。 |
駆 |
「その口ぶりだとあんたは随分とこの騒動を嫌ってる。けど、何人も死んで“魔王”が大きくなるまであんたはだんまりを決め込んでた。
“魔王”について知っていたなら。これが繰り返されたことなら、あんたには被害を最小限に抑える方法がわかってたはずだ。少なくとも、“魔王”候補が10人近く殺されることはなかったはずだ」
|
神谷 |
「…………オレは……」 |
駆 |
「なぁ、くだらないって思うなら、足掻いてみてもいいんじゃないか? なにもかも諦めるのはさ、最後の1秒まで足掻いたあとでもいいんじゃないかな。……って、ああ、そうか」 |
神谷 |
「な……なんだ?」 |
駆 |
「あ、わり、なんでもないわ」 |
小春日 |
「ど、どうしたんすか。
今、いいはなしだなーとおもってすっごい真面目に聞いてたんすけど! 無言で!」 |
新 |
「うん、聞きたいことが出たのに挟まず聞いてたのに、無言で」 |
駆 |
「ああいや、気にすんなって。こっちの話」 |
新 |
ぢーっと駆を見る。 |
小春日 |
じー。 |
GM |
神谷もじっと石堂くんを見つめています。 |
駆 |
「なんだよ、そんなに見るなよ。照れるなぁ」 |
神谷 |
「……このゲーム……あるいは、おまえが……」 |
駆 |
「ま、おっさんも色々あったんだろうしそう簡単に一念蜂起とはいかないだろうけどさ。あんま投げやりにならずに考えてみなって」
|
新 |
「照れて茶化すなら、聖痕あげない」ぷいちょ。 |
小春日 |
「照れて茶化さなかったら聖痕くれるらしいっすよ駆くん!」 |
駆 |
「うわ、聖痕くれないのは困るな。レネゲイド消せないじゃん」
あらたの言葉に気をとられておっさんの言葉は聞き流した! |
神谷 |
「……」 |
新 |
「そもそも魔王でレネゲイド消せるの?
神谷さんの様子を見るに可能性はある、ぽいけど、さ」 |
神谷 |
「……ハハッ。
……なるほど……愚者の聖痕か」 |
GM |
悲壮な深刻さが言葉と共に雲散霧消し、神谷が両手剣を担ぎます。 |
小春日 |
「おやおや?」 |
新 |
「あと聖痕譲渡も――」というところで神谷さんが剣担いだ様子に気を取られて見。 |
GM |
先ほどまでの深刻さがなくなった神谷さんですが、彼が見据えた道の先から2人の人影が歩いてきます。 |
小春日 |
「えー、魔王候補者は残り五人でー……駆くん、新ちゃん、そこのおじさん、モルペー……」 |
新 |
「神谷さんは魔王じゃない――筈?」 |
小春日 |
「じゃああと2人っすか! わぁ、なんかやなタイミング」 |
新 |
「(だよね?)」と死神ちゃんを見てみたり。 |
GM |
歩いてくる2人は、両者ともその足から延びる影が立体的に伸びて―― |
聖痕(新) |
「……きたぁー……」 |
...Scene is end.