高級ホテルの一室
 夜景を見下ろす最高級スイートにバスローブ姿の男が指示を出している


「―――ふむ、そうか」
「ではそのまま回復を待って人工心肺から離脱したまえ。
 くれぐれも慎重に、この件においてつまらんミスは許さんぞ」
 スマホを片手に、タオルで髪を拭く鋭い目――“ミリオンサンズ”アッシュ・レドリック。


 電話を終えるとバスローブ姿の彼は一仕事終えたように一息つく。

 窓際のデスクには氷のはいったクーラーとボトル。
 彼はそのうちの一本と取り出すと二つのフルートグラスに、シャンパンを注ぐ。


 向かいのグラスには――人影はない。
 ただひとつの写真立てに飾られた古びた写真―セピアに変色したそこには陰鬱そうな表情で俯く少年と不敵な笑みを浮かべる少年の二人が映っている―だけが飾られている。


「ふん、貴様でもこれくらいは飲めるだろう――」
 グラス半分ほどのシャンパンに鮮やかな橙色の液体が注がれる――満たされたグラスに鮮やかなミモザの花が咲いた。


「終わったようだ。
 あの男リヴァイアサンの手柄というのは癪だがね、まぁ我々の勝利、だ」


「『カップを割ってしまったことを謝りたい』、か。
 貴様、そんな殊勝な男でも無かったろうに……」

「まぁ今回ばかりは華を持たせてやろうではないか。
 ――お前の不器用で卑屈な笑顔を咲かせた、あの花の女に」


 立ち上る泡を眺め、優雅に一つスワリングをすると、無言のグラスに乾杯する。
 ―――シーンED.