「なんだ。お前は神を信じてないのか」

 それが、あいつが発した中でも印象的な言葉だよ。いきなりきたもんだからサッパリ意味が分からねぇ。
 何を言ってやがるんだ? 頭がイカれてるのか?
 ああ、大声で笑ったな。仲間と一緒に。イカれ野郎をノそうとした時には、一瞬で返り討ちにあったがね。
 まぁ、そんなことがあってから、アイツとは話すようになったんだ。大抵はここ、訓練施設でだけどな。
 で、ある時アイツが心底不思議そうに言ってきたわけよ。
 ……あ? その言葉の意味?
 別に、アイツだって宗教には言っているわけじゃない。それは本人見てりゃ分かる。
 いや、そういうのとは縁遠い奴だよ。だけど、アイツは神ってのを信じてる。

「神ってのはな。俺の中にいるんだよ。無論、お前の中にもな」

 ……意味が分からん。その時の俺はそう返してやった。

「いや、だからな? 基本的に人は『やれるべきことはできる』ようになってんだよ。それは分かるな?」

 分かるか。だったら何か? 俺が空でも飛べるってのか?

「人間が空を飛べるならな。まぁ近いことはできるんじゃねぇか?」

 じゃあアレか。今から俺がプロボクサーに勝負を挑んだとする。結果どうなると思う?

「一瞬で伸されるさ。話にならん。マジなのは、神の呼び方を知っているからな」

 ……そもそも、話の根幹を聞かなければならないようだ。お前が言う『神』ってなんだ?

「あ? 何でそこから? ほら、アレだよ『理想の自分』」

 ……

「子供の頃あったろ? 何でもできるヒーロー俺! みたいの。ちょうどそれだよ、俺が言う神ってのは」

 馬鹿馬鹿しい。で、それを呼ぶ方法ってのは?

「簡単なことさ。できないことなら、できるようになりゃあいい」

 簡単に言ってくれるな。

「言うだけならな。ただ……やるかやらないかだろ? そういうの。
 そうやってやった先。その人の中の『神』を呼び起こす儀式を人は『努力』って言うもんだ」

 くっせぇ台詞。

「っせーな。黙れ」

 ……でも、今になるとあいつの言うこと、実践しているってのは分かるんだよな。

 ほら、賢者の石だからっつってアイツは驕ることはない。皆と同じように前線に赴くし。
 知ってるか? アイツ、誰よりも支部で訓練してるんだぜ。

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