Scene is start...
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H市市街、裏通り。
三坂仁義の研究所へと向かうその道中、ひとめがつかない暗い路地。
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| 紡 |
翔からメールを受け、指定の場所を確認する。
その場所にある影の中から、すーっと浮かび上がるように、音もなく現れる。 |
| 翔 |
「ちったぁ落ち着いたか?」 |
| 紡 |
「ああ。
“ぼくたち”は、落ち着いているよ」 |
| 翔 |
“ぼくたち”という言葉に対しては、怪訝そうな顔を浮かべる。
浮かべるものの軽く息をついて、「それは、良いとして――」とひとこと。
その後びっとジークを親指で指し示し、「コイツの相方、知ってっか?」と問い掛ける。 |
| 紡 |
ジークの相方……? |
| ジーク |
夕姫のことだな。 |
| 紡 |
「……ああ。夕姫、夕姫ね、夕姫夕姫……」 |
| 翔 |
紡が悩んで小さく呟いている間に、胸ポケットから標的の白衣の男の写真を取りだして見せる。
「コイツに連れて行かれた。
とりあえず、共闘の条件としてその女を助けなきゃいけない。手伝ってくれ」 |
| 紡 |
「……うん。
それが多分、朝海を救うことにもなるだろうからね」 |
| 翔 |
「アサミって誰だ?」 |
| 紡 |
あ、え―っと……。 |
| 翔 |
「俺と一緒に転校してきた転校生の名前と同じだってこたぁ判る。
だが、そいつは誰だ?」 |
| 紡 |
「……写真の少女だよ」 |
| 翔 |
「俺が持っている写真――って、誰だかわかっているよ、な」
俺が前に紡に見せたのは、ファタ・モルガーナのぼやけた写真1枚だけ。 |
| 紡 |
「わかっているよ、もちろん」 |
| 翔 |
「あの女は別に、あんな髪じゃ無かったぞ」 |
| 紡 |
「それでも、彼女は朝海だよ」 |
| 翔 |
「あ、あ、あー……そういうことかそういうことか、なるほどな」
得心がいったよう、しばらく誰とへもなくひとりごちている。
呟いてしばらく、携帯を取り出して表示を確認、そして紡へと投げ渡す。「割れてる情報」 |
| 紡 |
携帯を受け取りさっと目を通す。
「――なるほど。でも大体知っている情報だったかな」 |
| 翔 |
「そっちが割った情報を教えてくれ。
夕姫とか言ったな。あの女がどうなろうが正直俺はどうでもいい」 |
| ジーク |
どうでもいいでは困るのだが、それを翔に言えた義理ではないか。 |
| 翔 |
「だが、ファタ・モルガーナを口説いて連れて行くのには必要なんだ。
俺ひとりじゃ、そのままじゃ勝てるとは思わねえ。
正直、ファタ・モルガーナに勝って殺す気なんてさらさらねえ。だがジャームとマトモな話になるワケがないことも分かっちゃいるからな」
|
|
翔は通例、ジャームに会うと相手の様子と状況次第とはいえどFHへ来いと口説きだします。
もっとも翔が口説く相手は衝動の申し子・ジャームであり、説得する事なんてほぼ不可能。
そのまま殴り合いから殺し合いへと発展するのがお決まりのパターンです。
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| 紡 |
翔のその言葉には、んーっと少し考える。
「何とかする為には、夕姫が居ないとダメかな。
まず夕姫を助けることが、そのまま先に繋がるはずだよ」 |
| 翔 |
「まあ、正直あの女がマジで来るとは思えねぇけど、な」 |
| 紡 |
「ん?
それは、どうして?」 |
| 翔 |
「何分あの女さ、自分で研究者の野郎について行ったんだよな。
“助けに行く”つっちゃあいるが、それはその白いのの科白なだけで、無理やりさらわれたわけでも何でもないんだよな」 |
| ジーク |
「実際、そうではある」
凛とした声、淡々とした口調でその事実を肯定する。
「夕姫は自分の意志で行ったと思うけれど、あの実験はやらせてはいけないと思う。
だから――これは、私のわがままだ」 |
| 紡 |
「そうだね。
これ以上、計画の犠牲者を増やすわけにはいかない」 |
| 翔 |
「計画の概要は知ってンのか?」 |
| 紡 |
「あ、えーっと……」 |
| 翔 |
「道中でイイ」 |
| 紡 |
じゃあ移動しながら、先程のシーンで得た情報を話していくね。 |
| ジーク |
で。すまないGM。
私はクライマックスまで思い出さないなどと言っていたのだが、あれば嘘だいま過去を思い出す。 |
仄暗い裏路地を、歩いていく3人の少年少女。
その中でひときわ目立つ銀髪の少女・ジークリート。彼女がふと、足を止める。
「(あの実験?
なんで私は、そんな事を知っているのだ?)」
知りえるはずがない情報の欠片。
その事を疑問に思い、そのほころびへと思いを巡らせ辿った瞬間、頭の中で何かが弾けた。
――何もない世界のほころびに触れると、そこから波紋が広がるよう呼び起されていく記憶。
その白から形成される砕けた波のような真白から、あるひとつが掬われ形を為していく――
|
白い壁、白い天井、すすり泣く子供の声。
白い白い床の上で、少女がひとり泣いている。
泣きやむそぶりを見せない彼女は、涙にぬれた目を私に向けた。
|
| 少女 |
「ねぇ、なんで私たちはこんなひどいことされなきゃいけないの?
もうヤダ、もうヤダよっ……!」 |
| ジーク |
みんなで分けたあのお守り、それを胸に抱いて穏やかに語りかける。
「きっといつか、このお守りが、私たちを助けてくれる。
だから――もう少し、がんばろう?」 |
| GM |
彼女はジークのその言葉を遮り「かみさまなんていない!」と悲痛に叫びます。 |
| 少女 |
「ジーク、ほんとうはね、かみさまなんていないんだ。
だって、かみさまがいたら――私たち、生まれてくるはず無いじゃない。
なんで、私たちは生まれたの? なんで、私たちは生きているの?」 |
| ジーク |
え、と、うーん……。
そ、れは、言葉に詰まってしまうな。なんて返すべきか……。 |
| GM |
ジークが返せないでいると、彼女は格子窓の向こうへと視線を向けます。
春の陽の光が差し込んでくる窓の向こうを眺めながら、ぽつぽつと語り始めます。
「外の世界は、奇麗なのかな……?」 |
| ジーク |
「きっと、ね」 |
| 少女 |
「こんな、何もない真っ白な世界じゃない。
もっと奇麗で、誰もいじめにこない世界があるのかな?」 |
| ジーク |
「そうだよ」
ここで窓の向こう、満開の桜をみる。
「あの桜だって、季節が変わるたびに、見るたびに表情を変えている。
きっと外の世界は、白い色だけじゃなくって色々な色があるんだと思う」 |
| 少女 |
「行ってみたい。
いつか――外の世界に、いけるかな?」 |
| ジーク |
こくり、うなずく。
「いけるよきっと。きっと、みんなで」 |
| 少女 |
「ねえ、ジーク?
いつかきっと……いつかきっと、外に行こうね」 |
| ジーク |
こくり、再度うなずく。 |
| 少女 |
「こんな場所いつか逃げだして、誰もいない――私たちだけの場所に行こう。
約束だよ、ジーク 」 |
| ジーク |
「約束だよ、朝海」 |
| GM |
ぽろぽろと、大粒の涙を流しながらも少女――朝海は満面の笑みを浮かべる。 |
| 朝海 |
「――うん。私、この約束だけで生きていける。
この約束だけで、絶望しないで生きていける気がする――」 |
|
サア――……。
|
|
| ジーク |
「――ああ。
なんで、ずっと忘れていたのだろう」
現実に立ち戻ると、誰ともなしに口から洩れる。 |
| 翔 |
「なんの話だ?」 |
| ジーク |
今のはもちろんひとりごと。なので翔に声を掛けられるとふと顔を上げる。
「むかしの話」 |
| 翔 |
何を言ってるんだか。
そうとでもいうかのように、肩を軽くすくめる。 |
| ジーク |
「朝海と約束した――忘れちゃいけなかった筈の、わすれもの」 |
| 翔 |
「約束……?」
GM、俺もこの瞬間今の言葉をキーにして思い出させて欲しい。 |
| GM |
良いですよ。 |
“約束”
ジークが少し意味深に、ぽつりと言ったそのことば。
それが翔に響いていくと同時に、ある記憶が思い出されていく――
あいつは、いつもひとりだった。
子供たちの輪の中に、あいつはどうしても入れない。
あいつは怯えていた。
人は誰もが、心のどこかで自分より弱いものを求めている。
だからこそ、足を踏み出せないでいた。
本当はさみしいのに、折れそうになるほど心細いのに――
そんなあいつを、俺は見ていられなかった。
|
| GM |
(ぽそ)好きに演じてください。 |
| 翔 |
OK、じゃあ好き勝手にヤらせてもらいます。 |
|
「なあ、なんでそんなところでひとりでずっといるんだよ。一緒に行こうよ」
|
| 夕姫 |
……ってちょっと待って下さいGM。
このシーンを続けるその前に、いったい誰に彼は話しかけてるのですか? |
| GM |
あなたです。 |
| 夕姫 |
はあ、そうですか。
……って、え、うそ?! 『朝海フラグ立て過ぎ』って言おうと思ったのに、私なのですか?! |
| 紡 |
あはははは。
でもそれ、オープニング時点で発覚してたよね。 |
| 翔 |
ケケケ。
もともとこういう行動は現実でも取る気だったんだよ、ヤる暇なんて0だったがなっ! |
| 夕姫 |
え、て、あ、理由ですか……っ?!
そ、そんなものありませんよっ……あ、う……。 |
| 翔 |
あ、口調がガラッと変わってっから判ると思うが、場面自体はかな〜り昔。
それこそガキのころの感じでヤってっぞ。 |
| 夕姫 |
あ、はい。
で、でも、う、うーん……。 |
| GM |
ほらほら。
悩んでなくて良いですから記憶のシーン、続けてくださいね。 |
| 翔 |
「なあ、なんでそんなところでひとりでずっといるんだよ、一緒に行こうよ」 |
| 夕姫 |
いきなり話しかけられて、鳩が豆鉄砲食らったような顔をします。
「え? だ、だって……そっちにはたくさん、人がいるから……」
しどろもどろに、彼に返す。 |
| 翔 |
「ん? まあ、そうだけどさ。
でも別に、アンタがひとりで居る必要性ないじゃん、一緒に行こうよ」 |
| 夕姫 |
「私は、見てるだけで楽しいから……」 |
| 翔 |
「まあ……」
頬を掻き、軽く視線をさまよわせる。
「『俺が楽しくないから、一緒に行こう』じゃ、ダメか?」
そういうとおもむろに夕姫の手を掴み、仲間のところへと連れて行こうする。 |
| ジーク |
その前に少しだけ、演出を挟んでいいか? |
| 翔 |
モチ。 |
| 子供たち |
「おーい、こっちこいよー」
実験体の子供たちが、手を振っては遊んでいる場所から声を投げかける。 |
| 翔 |
ンじゃ手を掴んでひっぱっか。 |
| 夕姫 |
「え?!
で、でも先生が……」 |
| 翔 |
「バレなきゃへ〜きっ」
そして半ば強引に連れていく。 |
| 夕姫 |
「え、あ、う……」
そ、そんな気はしないのだけれど……。
「……じゃ、じゃあ、ちょっとだけ……」
彼にひっぱられながらも、おずおずと足を踏み出していきます。 |
|
たっ、たっ、たっ――
|
| 夕姫 |
「え、と……」
手を引かれて向かう最中、戸惑いながらも彼へと口を開きます。
「――確か、かける君……だよ、ね」 |
| 翔 |
「うん」 |
| 夕姫 |
「私のこと、誰かと勘違いしてない?」 |
| 翔 |
「勘違いしてない、ユキだろ?」 |
| 夕姫 |
「あさみと話した方が、楽しいよ?」 |
| 翔 |
「俺はユキと話したい」 |
| 夕姫 |
「え?! そ、そうかなぁ……。
私と話してもたのしくないし……」 |
| 翔 |
「それは、一緒にいてみればわかるさ。
だいじょうぶだよ、なんかいじめられそうになったら俺が護ってやっからさっ!」 |
| 夕姫 |
「え、あ……」
掛けられた言葉と彼の笑顔に、どうしていいか判らず困惑します。
「……な、なんで?
なんであなたは、こんなところで笑ってられるの?」 |
| 翔 |
「泣いてた方が楽しくないからかな、笑ってた方が楽しいじゃん。
そりゃここは、辛いこともキツいこともいっぱいいっぱいあるけどさ、『イヤだ』って思ってたら、気分が悪くなるだけなんだ。
だったら楽しんだ方がイイじゃないか」と、にこり、笑いかける。 |
| 夕姫 |
うぁっ、癒された……。
癒されたけど、けどっ、どうデレよう……。 |
| ジーク |
デレるなら今だよ、夕姫。 |
| 夕姫 |
「……じゃあ、さ?
かける君のこと、教えてよ」 |
| 翔 |
「ん? なに?
なに聞きたい?」 |
| 夕姫 |
「なにって……えっと、思いつかないから、なんでも……」 |
| 翔 |
「じゃあ――」 |
――記憶の律が途切れる。
記憶の欠片は鍵となり、そこから全てが思い起こされる。
|
| GM |
全てはより、鮮明になっていく――。 |
| 翔 |
「あ〜なんで忘れてたんだろ。
――まあイイや、行こう」 |
| GM |
では君がラボへ向かったところで、シーンは閉じます。 |
...Scene is end.
Scene is start...
|
三坂仁義の出入りするという部屋。
そこは裏通りにあるさびれた工場跡の中に、ひっそりと扉を閉ざしている場所だった。
ギィ――
工場跡にある廃倉庫。
その扉を開けると飛び込んでくる全き白、次に感じ襲いくるのは既視感。
そこにあるのはかつての白い家、格子窓の内側の光景。
自分たちが受けさせられていたあの実験室が研究所が、再現されたような光景。
それが、眼前に広がっていた。
|
| GM |
そこでひとり、三坂仁義が君たちを待っています。
椅子に座る彼は君たちの姿を認めると「結局君たちも、ここに来たのか」と、悠然と口を開きます。 |
| 三坂 |
「君たちを招待した覚えはないんだがなぁ。一体この場所に、何の用だね?」 |
| 翔 |
かったるそうな声、耳をほじりながら出迎えてきた相手を見下ろす。
「ああご丁寧に手厚い歓迎をありがとうございます、三坂さん」 |
| 三坂 |
「“先生”と呼んでくれたまえ、昔からそう呼んでくれただろう?」 |
| 翔 |
「えーっと、どう呼ぼうが関係ないと思いませんか、“三坂さん”。
別に俺は、あなたを尊敬してないわけじゃないですよ」
顔に浮かぶのは軽い笑み、おちょくった口調と声で返答する。 |
| 三坂 |
「仕方ない、時の流れというものは全く残酷だ。
あれだけ『先生』『先生』と、慕ってくれたものをなぁ……」 |
| 翔 |
「そんなこたァ忘れましたよ。まあ――」
おちょくるような笑みが消え、ひと呼吸の間。
「――ユキを連れに来ました」 |
| 三坂 |
「夕姫君を? 君が、夕姫君を何故?
彼女は自分で望んでここに来たんだ、君が連れ帰るというのは何か違うような気がするね」 |
| 翔 |
「そいつァユキに言って来るだけッスよ、俺もイロイロ忘れてましたんでね」
そういうと歩を進める。三坂を無視して行こうとする。 |
| 三坂 |
すれ違い間際「――思い出したのかね、翔君」 |
| 翔 |
軽く口の端を上げて笑うだけ、変には返さない。 |
| GM |
で、残りの2人はどうするのですかね。 |
| ジーク |
「悪いが彼と同意見だ、私は夕姫を連れ戻しに来た。
――というわけで、夕姫はどこにいる?」 |
| 紡 |
「これ以上計画の犠牲者を増やすつもりはない、ぼくたちは夕姫を取り戻す。
そして、朝海も助けるんだ」 |
| 三坂 |
「君たちは何か勘違いをしているような気がするなあ?
夕姫君の取っている行動は至極まっとうな行動だ、君たちの力ではファタ・モルガーナを撃破することはできない。だがそれを、彼女は可能にするためにここに居る。
何故、君たちは彼女の邪魔するんだい?」 |
| 翔 |
「俺はそもそもファタ・モルガーナを撃破する為には来ていない」 |
| 三坂 |
「なるほど、それは面白い」 |
| 翔 |
「なんでわざわざ殺さなきゃいけないんスか、会ってアイツとも話しますよ。
そりゃ、俺がやられそうになるンだったら、殺すことも考えやしますけどね」 |
| 三坂 |
「なるほど、君の話は筋が通っているね。
――そこの2人はどうなんだい?」 |
| ジーク |
「私は元々ファタ・モルガーナを殺す気はないから、だから――そんな力は、要らない」 |
| 三坂 |
「なるほど」 |
| 紡 |
「“ファタ・モルガーナ”? あなたは何を言っている?
ぼくたちは、朝海を助けるために来たんだ。その為に夕姫の力が必要なんだ。
ぼくたちが、夕姫と一緒に朝海と話すのを邪魔しないでくれるかい?」 |
| 三坂 |
「邪魔はしないさ。
僕が君たちの邪魔をしたことを、1回でもあったかね?」 |
| 翔 |
「十分してるけどな」と少し嫌味混じりに小さくポツリ。
俺は前に、コントローラーで電流流されて蹲らされているからな。 |
| GM |
掴みかかろうとなんてされれば三坂仁義も自衛はしますよ。
それだけですよ、それは――ね。 |
| 三坂 |
「私は君たちの望みをかなえてあげてるつもりなんだがなあ?」 |
| 紡 |
「誰もそんな事は望んでないよ」 |
| 三坂 |
「そうかね? まあ良いさ、行きたいなら行くと良い。
彼女は納得しないと思うがねぇ」 |
| GM |
そういうと彼は座ったまま不敵に笑うのみ。君たちの行く手を止めることもありません。 |
| 3人 |
夕姫のところに向かいます。 |
| 翔 |
ああ、でも向かう最中にひとことだけ三坂に対してに言い放つ。
「納得しないかどうかなんて、やってみなきゃ分からねえだろ」 |
| GM |
OK。
ではシーンは続いたままで、場面は変えます。 |
| 夕姫 |
(頭を抱えている)……この3人を説得できる気がしない……。 |
| GM |
夕姫がいる場所に場面を移すのです、が……描写はどうしますか? 夕姫がやりますか? |
| 夕姫 |
……GM側に任せて宜しいでしょうか……。 |
| GM |
了解しました。 |
|
ラボの一角、とある扉を開けた先。
その部屋にあるのは大仰な幾つもの精密機械、響き渡るのは電子音。
仄暗い闇が支配する部屋の中、浮かび上がるはひときわ大きなシリンダー。
色とりどりのたくさんの長いコードが繋げられた、その中心に夕姫の姿。
ガラスの柩のその先で、まるで静かに眠るように佇む彼女。
しかしその中では、次第に、そして確実に一歩一歩、その身を化け物へと変えられていく……
|
| ジーク |
部屋に入って開口一番「夕姫、帰るよ」 |
| 夕姫 |
声を掛けられれば目を開き、部屋に入ってきた3人を認識します。
「リート、何しに来たのですか?」 |
| 翔 |
部屋に入った瞬間つかつかと、2人が会話しているその横で機材をいじって解除をする。
――って出来ますかね? |
| GM |
出来ます、というかこの場面好きにしていいですよ。
ドンッ――……。
空気を震わす大きな音が部屋に響いて電源が落ち、機材が動きを停止する。 |
| 夕姫 |
「……っ?!?!」 |
| ジーク |
「何をしてる」 |
| 夕姫 |
「貴方、どういうつもりですか?!」 |
| 翔 |
まったく答えず一切止まらず、今度はシリンダーを開けて夕姫を引っ張り出す。
「どういうつもりって? 見りゃ判んだろうが」 |
| 夕姫 |
「私とあなたは敵だった筈です」 |
| 翔 |
「俺は敵を認識してないなぁ」 |
| GM |
なんてわざとらしい言い方だろうか。 |
| 翔 |
むしろ軽く笑ってますよ。
そういいながらもブチブチと、夕姫に繋がっていたコードを引き抜いていく。 |
| 夕姫 |
「どうしてそう強引なんですか?!」 |
| 翔 |
「あぁ? 俺は俺だからじゃないかなあ?」 |
| 夕姫 |
……〜っ。
「あなたは、ファルスハーツ、なんですよ?」 |
| 翔 |
「ああ。俺はファルスハーツだからこういうことをしてンだよ」 |
| 夕姫 |
「私はUGNだからファタ・モルガーナを止めないといけないんですぅ」 |
| ジーク |
あ……夕姫がだだっ子に。 |
| 翔 |
「聞いてる聞いてる、そこの白いのにアンタらのこたぁ聞いてンだよ。
――ファタ・モルガーナを止めるんだろ、そこまでは俺も一緒だ」 |
| 夕姫 |
「どうしてそう邪魔ばっかりするんですか?!」 |
| 翔 |
その瞬間真顔になり、声のトーンがすっと落ちる。
「アンタの認識が間違ってるだけだろうが」 |
| 夕姫 |
「私の認識?
……ってなんですか」 |
| 翔 |
小さく息つく程度の沈黙の後、ジークに向かう。
「おい白いの、コイツにどれだけ話してるんだ?」 |
| ジーク |
「ん……?」 |
| 翔 |
「お前らUGNから見て、ファタ・モルガーナはどういう風に聞いてるンだ?」 |
| ジーク |
「ファタ・モルガーナか?
私と夕姫は支部長から、FHが放った危険なジャームであると聞いている」 |
| 翔 |
「こっちぁFHからは、アンタらUGNの施設から逃げてきたジャームって聞いてんだよ。
でもって紡が割った情報によりゃ、ファタ・モルガーナも俺らもUGNとFHの共同研究から生まれた実験体だとよ。
俺も、アンタも、紡もジークも時也も、朝海――ファタ・モルガーナもいわゆる仲間だ、全員な。
ってことで――」
そこまで言うと夕姫を人浚いのように抱えあげる。 |
| ジーク |
タイム、抱えあげようとした翔の腕をつかむ。
「悪いが私のパートナーだ」
暗にその行動が示すのは『私が夕姫の事を連れて行く』 |
| 翔 |
それなら頼んだ、軽く離れる。 |
| 夕姫 |
お、おかしい……何この私の人気っぷり。
そもそも最初の噛み合わなさっぷりツンっぷり、皆どこに行ったのですか?! |
| 翔 |
あ? 俺ぁ利害競合せず共闘できるんだったら共闘するぞ?
UGN自体は嫌いだがそれとこれとは話が違ぇ。 |
| ジーク |
私と翔とは敵になりえない、日常を壊す実行者は敵だがFH自体が敵な訳ではないのだから。
そもそも3つ前のシーンで私たち、“共闘します”といったじゃないか。 |
| GM |
2人に至っては、奇妙な連帯感まで芽生えちゃったしねえ。 |
| ジーク |
あのね夕姫。
よ〜く私と彼の設定を見ると判るのだけど、2人とも似た者同士なんだ。 |
| 翔 |
表面的にゃ正反対もイイトコだがな、根っこは一緒っても違わねえ。 |
| 夕姫 |
……そ、そうなのですか……ぅぁ……。 |
| GM |
ところで紡君もこの場にはいるのですから、遠慮せず会話に入っていても大丈夫ですよ? |
| 紡 |
あ……いやそうなのですが、ちょっと3人の様子を見ています。 |
| 夕姫 |
ちょっと勝手にフラッシュバックの映像を造ります、3人ともフラッシュバックが起きてください。 |
|
――フラッシュバック。
研究施設内、青空教室。
抜けるような青空の中、子供たちは笑い、また真面目に机に向かう。
壇上には夕姫が立ち、算数の公式等を描き、皆へと丁寧に指導をしている。
|
| 夕姫 |
教壇に登り算数を教える、その時と全く同じ口調で話します。
「良いですか? 朝海はもう、帰ってこないのですよ?
あの子の意識は残っていないのです、ジャームになっちゃったのです。判りますか?」 |
| 翔 |
他人に諭されてはいそうですかって聞くようなら、俺ぁ不良だなんて言われてねえんだよ。
「ハッ、じゃなんでファルスハーツにゃジャームがいっぱい居ると思ってんだ?
ジャームにゃ意識がねえなんてUGNのタワゴトを、アンタはマジで信じてンのかよ」 |
| 夕姫 |
「ですが昔の朝海ではありません。
朝海はリートと一緒にいる為ならば、どんなことでもするでしょう」 |
| 翔 |
「じゃあジークと一緒にいればイイじゃねえかよ、それだけの話だ」 |
| 夕姫 |
「月見夕菜さんの事は覚えてますか?」 |
| 翔 |
「覚えてる」 |
| 夕姫 |
「何故、彼女が襲われたと思っていますか?」 |
| 翔 |
「……?」
目を細めて訝しげ、“判らない”という表情を浮かべる。
四つ辻で襲われたあの時点じゃ月見は俺と紡といただけで、ジークとは繋がりはしないんだよな。 |
| 夕姫 |
「リートの友達だからですよ」 |
| 翔 |
「あーあーあー……そういうことか」 |
| 夕姫 |
いや……これはメタ発言なのですけど、ね。 |
|
メタ的な話をしてしまいますと、オープニング5で夕菜はジークとぶつかりましたよね。
ジークと夕菜の周囲は第三者から見ても一種異様な空気となり、朝海はその場面をじっと見ていた。
これが原因。
いわゆるヤキモチ、嫉妬です。
|
| 夕姫 |
「朝海が生きている限り同じ事は何度も起こりえます。私は姉として彼女を止める義務があります。
姉としてと、いうか……私はあの子に贖う義務があるんです……っ」 |
| ジーク |
「止めるのだったらそんな大仰な力はいらないだろ? それは殺す為のものだ」 |
| 夕姫 |
「他に止める方法があるのですか?
今までだってこうやって、力を以てジャームを殺して止めて来たではないですか」 |
| 紡 |
「語りかけよう」 |
| 夕姫 |
「えっ?」 |
| 紡 |
「朝海と話をしようよ。あれから話をしていないのでしょ?」 |
| 夕姫 |
「話をしたって通じなければ、辛く苦しむだけになりますよ」 |
| 翔 |
「そんなんやってみなきゃ分からねえだろ?
アンタは1人で壁を造ってその中でぼけっとしてるけどさ、単にそこから動こうとしなかっただけじゃねえか」 |
| 夕姫 |
「かける君はいつも考えがないんです!!」 |
| 翔 |
「あ、何かいったか?」 |
| 夕姫 |
こっ……!
「やってみたってダメだったならばしょうがないじゃないですか!!」 |
| 翔 |
「じゃあやってみりゃあイイだろうが。俺は考えナシだって? 結・構・だ。
そんなトコロで動けなくなる位ならなぁ、俺ぁ考えナシで結構だよ」 |
| 夕姫 |
「〜っ!
むかしっから思ってたんですけど、私、この人、苦手です!!!」 |
| 翔 |
ケケケケケ。
叫ぶ夕姫の様子をケラケラ笑っておこうか。 |
| 夕姫 |
苦手と言いつつかける君をSロイス。
さらに感情をネガティブの“嫌悪”からポシティブの“好奇心”へと切り替えます。 |
| 紡 |
あ、ずっと翔への感情がネガティブだったのがついにポシティブに……。 |
| 夕姫 |
……なんで私、かける君へのロイスをポシティブ感情を“好奇心”で取ったんだろう。
なんで“純愛”じゃないんだろう……。 |
| ジーク |
今までずっとネガティブの“嫌悪”だったんだ、ポシティブの感情は彼にはなかった。
だからポシティブは決めてなかったことにすれば良いのじゃないか?
きっとあのGMなら相応のロールをするならば、感情変化を認めてくれるよ。 |
| 夕姫 |
いえ今の時点では“好奇心”で良いです。
そもそも好奇心を持てる対象なんてかける君しかいません、他は好意といった類ですよ。
ああもううっとうしいうっとうしい……うっとうしいのだけれど、何だろうこのうっとうしさ。
なんて温かいうっとうしさ。 |
| 一同 |
……。 |
| 夕姫 |
……。
言わせないでくださいよこんな恥ずかしいこと。 |
| ジーク |
言っているの夕姫自身だから、特に私たち言わせてないから。 |
| 夕姫 |
くぅ〜……ッ。 |
| 紡 |
はははっ。
今夕姫のロイス感情が切り替わった様子を見て、ぼくも翔に対するロイスをネガティブの“疎外感”からポシティブの“幸福感”へと切り替えるね。
良かった、みんな仲良くしてる。昔みたいな仲の良さが戻った……っ。 |
| 夕姫 |
どっと疲れたような、お手上げの様子。
「わ、わかりました……もう皆さんの好きにしてください……」
うなだれてしまいます。 |
| 翔 |
「じゃあ好きなようにさせてもらう。
おい、連れてけるよな」 |
| ジーク |
「ああ、連れて行くよ。
『好きなように』、夕姫、それはいつものことだろう?」 |
| 夕姫 |
「……〜っ」 |
| 紡 |
「じゃあ、朝海のところに行こうか」
そういうと周りを見渡します |
| GM |
周りを見渡した瞬間、入り口に三坂仁義が立っているのが見えますね。 |
| 三坂 |
「彼女に語りかけても、何も帰ってきはしないよ」 |
| 夕姫 |
「先生」
弱弱しい声ながら顔を上げ、三坂さんの方に向かい目を合わせます。
「短い間でしたけれど、ありがとうございました。
――あの装置に繋がれて、判ったことがあります」 |
| 三坂 |
「何かね?」 |
| 夕姫 |
「きっと、先生の驚くものが見せられると思います」 |
| 三坂 |
見下ろし悠然とした様子のまま、にやりと笑みに口元が歪む。
「それは面白い話だね。
では、楽しみにさせてもらうよ」 |
| 夕姫 |
「失敗作の私たちのやりかた、見ていて下さい。
いままで、ありがとうございました」
そういうとぺこり、頭を下げます。 |
| GM |
三坂仁義は不敵に笑うだけ、4人の様子を見ていますよ。 |
| 夕姫 |
そして3人には「ごめんなさい」と、力なく微笑みます。
私の所為で迷惑をかけてしまいましたので、謝罪の言葉を。
“これから死ぬ”というフラグではないですから、安心してください。 |
| ジーク |
「いつも言っているけれど、自分で自分を追い詰めるのは良くないと思うよ」 |
| 翔 |
全くだな……ってあ、そうだ忘れてたな。
携帯にSDカードを挿入して画面に廃棄資料‐.246の情報を表示。
その状態で夕姫に携帯を投げ渡す。 |
| 夕姫 |
「え? あ、ありがとう」
投げ渡された携帯を受け取ると、いそいそとしまいだします。 |
| 翔 |
「おいおいおいおい?! ちょっと待てしまうな、見ろ、画面を見ろ!
割れてる情報画面に出して渡したってのに、それも見ずにしまうなよ?! 」 |
| 夕姫 |
「あ……そういうことですか」
ちょっと残念そうに呟いてから、改めて画面を見ます。 |
| 紡 |
何だか微笑ましいなあ……。 |
廃棄資料‐No.246は、幾度か出てきた この資料。
ミドルフェイズ・シーン2で、青年(時也)が落していったデータカード。
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| 紡 |
さて、夕姫が端末の情報を見終わって落ち着いたころに改めて。
「別に、謝られるようなことしてないでしょ?」とにこっと彼女に笑い掛けます。 |
| 夕姫 |
「それでも……そういう気持ちだったから」 |
| 翔 |
その瞬間ユキの頭をバン、と平手で叩く。
「だったら“ごめんなさい”じゃなくて“ありがとう”でイイんじゃねえの?」 |
| 紡 |
ウンウン。 |
| 夕姫 |
「……」
頭抱えて蹲ります……。 |
| ジーク |
夕姫、身体は私が支えているよ。だから蹲らないで。 |
| 夕姫 |
「……」
ではリートに身体を支えられた状態で、両手で頭を抱えています。
そしてシーンの切り際に「……ありがとう」と。 |
...Scene is end.
Scene is start...
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研究施設内、朝海の元へと向かうその道中。
繋がれていたせいもあり少し休みを取る夕姫と、それに付き合っている翔。
辺りにいるのは2人だけ。
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| 夕姫 |
息をつき、廊下で休んでいるところ、傍の彼にためらいがちに声を掛けます。
「久しぶりです」 |
| 翔 |
しばらくの間、沈黙を保つ。
その後にひとこと「――ひさしぶり」 |
| 夕姫 |
相手を窺うように、言葉を選ぶように、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「お互い、忘れていましたけれど、随分――変わりましたね」 |
| 翔 |
「まあ……月日が経ってンだから当然だろうな?
――終わりぁアンタらとはまた敵対同士だ」 |
| 夕姫 |
「正直……顔を見ただけでは、全然思い出せませんでした」 |
| 翔 |
「同じくだ」 |
| 夕姫 |
「あのまま戦っていたら、どうなっていたのでしょうね」 |
| 翔 |
「さあ、な? 正直俺も強いわけじゃねえ。一発でヒネられるとは思ってねえ」 |
| 夕姫 |
「いえ、何発も掛けてヒネられても困るのですけれど……っ」 |
| 翔 |
「……」
言葉に詰まる。ほんの少し困った顔が浮かぶ。
たんにこれ、 “力量差が判らねえ”つってるだけなんだよな。 |
| 紡 |
翔も大概に誤解されやすいよね。 |
| 翔 |
まあ、な。 |
| 夕姫 |
彼が返答に詰まったのを感じると、私もしばらく沈黙します。
黙したまま考えて、そして流れと話題を変える形で、再度口を開きます。
「あの装置に繋がれて、朝海ちゃんと対等に向き合う方法、判った気がします」 |
| 翔 |
「へぇ〜……ソイツは?
まさか【ロストエデン】の“賢者の石”でも使う気か?」 |
| 夕姫 |
「いざとなったらそれもありえますけれど――」 |
| 翔 |
「ざけんな」 |
| 夕姫 |
「――でも、他の方法です。
少し、無茶をするかもしれません。何かあったら、かける君に任せても良いですか?」 |
| 翔 |
「んー……。
まあ、何があるかわからねえけど、よ。やれるものなら、な」 |
| 夕姫 |
「じゃあ、少しの間信頼してみていて下さい」
【ジェネシフト】を使用します。して良いですよね、GM? |
| GM |
いいですよ。 |
| 夕姫 |
宣言は最大の4D10で。
(ころころ)25、侵蝕率が116まで行きました。 |
| ジーク |
恐らくシナリオ的空気的には問題はないと思うのだが夕姫、衝動判定があるの忘れていないか? |
| 翔 |
帰ってこれんのか、マジで……。 |
| 夕姫 |
帰ってきます、その予定はあります。
「ちょっと無理します。
何があっても――守ってくれますね?」 |
| 翔 |
「わかった」 |
| 夕姫 |
その言葉を聞くと、嬉しそうに笑います。
「最初に会ったとき、話しかけてくれてありがとうございました」 |
| 翔 |
はぁ、と小さくため息をつく。
「そんな形式ばったことなんざ言わなくていいんだよ、大体俺とおまえ幾つ離れてると思ってンだよ。
元来俺がアンタに対して敬語を使わなきゃいけないんだぜ?」 |
| 夕姫 |
「それでも、嬉しかったんです」 |
| 翔 |
「ちげェ」
そういうと、夕姫に対してデコピン1発。
「そんな壁張ったように敬語なんか使わなくていいんだよ。少しは砕けろ」 |
| 夕姫 |
「あ、と……では、“かける”」
敬称をつけずに彼を呼び、軽く逡巡してから再度続ける。
「リートは最初から壁の内側にいたけれど、外側から私に声を掛けてくれたのは――あなたが初めてでした」 |
| 翔 |
「クッ、アハハハハハ」
一瞬止まった後、盛大にバカ笑い。
しばらく笑いつづけた後に「――まあ、イイんじゃねえの?」とにやり、ひとこと。 |
| 夕姫 |
「じゃあ、これからあさみちゃんの壁をノックしに行きます。
バックアップ、お願いしますね」 |
| 翔 |
「ま、了解」 |
...Scene is end.